第10話(最終話) 世界を救って神様扱いされているけど、今日も可愛いお姫様と騎士団長に全肯定されながら、最強で最高の無自覚スローライフを満喫します!
魔王軍を「バーベキューの火起こしのついで」で消滅させてから数ヶ月。
世界からは一切の脅威が消え去り、かつてないほどの平和と繁栄の時代が訪れていた。
「アレン様! 本日は王都から最高級の果実が届きましたの! 私が口移しで……いえ、綺麗に剥いてお持ちいたしますね!」
「抜け駆けはずるいぞシルフィア! アレン様、私がお背中のマッサージをいたしましょう! 手加減は完璧にマスターいたしました!」
辺境都市ファルマス――いや、今や大陸の中心部よりも発展し、『神の直轄地』として世界中から崇められている俺の広大な領地。
その中心にある、お城よりも豪華な巨大邸宅のバルコニーで、俺は今日も絶世の美少女たちに囲まれ、極上のスローライフを満喫していた。
エルフの王女であるシルフィアと、王国最強の女騎士クレア。
世界中から「神の伴侶」として羨望の眼差しを向けられている二人は、相変わらず俺のお世話をすることに全力を注いでいる。毎日が甘すぎるパラダイスだ。
「ははは、二人ともありがとう。でも、あんまり無理しないで適当に休んでいいからな」
「アレン様のお側にいることが最高の休息なのです!」
「御意。アレン様の温もりこそが、私の魔力源となっております!」
俺が苦笑いしながら二人の頭を撫でてやると、彼女たちは顔を真っ赤にしてトロけそうな表情を浮かべた。
「お、おおおお……! 何と神々しく、慈愛に満ちた光景……!!」
バルコニーの下の庭園では、すっかり俺の専属執事のようなポジションに収まった元領主のアルベルトが、感動の涙を滝のように流しながら平伏している。
「アレン様! 本日も各国の王族から、山のような金銀財宝と貢ぎ物が届いております! さらに、世界中の民がアレン様を称えるために巨大な黄金の神像を建設中とのことで――」
「いや、神像は恥ずかしいからやめさせて! 本当に、ただの元雑用係なんだから!」
俺が慌ててストップをかけると、アルベルトは「その謙虚さこそが真の神の証!」とさらに激しく地面に額を擦り付けた。もう何を言っても駄目なようだ。
かつて、俺は【白銀の剣】という勇者パーティーで、「無能」と蔑まれ、酷使され、理不尽に追放された底辺の存在だった。
だが、あのパーティーを抜け、封印されていた隠しスキル【万物創造】が覚醒したことで、俺の人生は180度変わった。
ちなみに、俺を追放したザックたちは今頃どうしているかというと……。
『おい! 手を休めるな罪人ども! 貴様らは一生、この魔石鉱山でツルハシを振るうんだよ!』
『ヒィィッ! す、すみません! アレン……アレン、助けてくれぇぇぇっ!』
『いやぁぁぁっ! 泥水なんて飲みたくないわぁぁっ!』
『誰か、誰か嘘だと言ってくださぁぁぁいっ!』
永遠に太陽の光が届かない地下深くの強制労働施設で、彼らは泥と汗にまみれながら、絶望の中で俺の名前を泣き叫び続けているらしい。
俺を「無能」と見下し、都合よく利用しようとした彼らには、ふさわしい末路だろう。俺の心には、もはや彼らへの同情も怒りも1ミリたりとも存在していない。
俺の視界には今、青く澄み渡る大空と、俺のために全てを尽くしてくれる最高に可愛いヒロインたちだけが映っているのだから。
「アレン様、どうかされましたか?」
「うん? いや、なんでもないよ。ただ……」
俺はシルフィアの柔らかな肩を引き寄せ、クレアの手を優しく握りしめた。
「俺は本当に、運が良かったなって思ってさ」
「運、ですか?」
「ああ。追放されて、自由になって……君たちに出会えたから」
俺が微笑むと、二人の美女は目に涙を浮かべ、たまらなくなったように俺の胸に飛び込んできた。
「ああっ……アレン様! 私こそ、アレン様に拾われた世界一幸せなエルフですわ!」
「私もだ! この命、この魂、全てアレン様と共にあります!」
柔らかい感触と、甘い香りに包まれる。
どうやら、俺の無自覚な規格外チートは、この平和な世界ではもう使う機会がなさそうだ。
これからは、ただこの優しいヒロインたちと一緒に、誰も見たことがないくらい幸せで、甘くて、完璧にストレスフリーな『最強のスローライフ』を続けていくだけである。
「よし、それじゃあ今日のお昼は、最高の食材を【創造】して、三人でご馳走を作ろうか」
「はいっ! アレン様!!」
こうして、理不尽に追放された底辺付与術師は、無自覚に世界を救い、そして世界で一番の幸せを手に入れたのだった。
――めでたし、めでたし。




