第74話 牧場の牛と、のんびりな午後
~草の香りと、ちょっとしたモーモー交流~
丘の上に広がるモーモー牧場。
七海は、移動式の宿屋をポンと建てて、草の香りに包まれながら深呼吸。
「……空気がミルクっぽい。気のせいかな……いや、たぶん気のせい」
牧場では、のんびり草を食む牛たちが並んでいる。
その中に、ひときわ目立つ“模様が地図っぽい牛”がいた。
「……あれ、なんか旅先で見た山に似てる……」
牧場主のおばあさんが、笑いながら言う。
「あの子は“ナビ牛”って呼ばれててね。背中の模様が、なぜか地形に似てるのよ」
「えっ、そんな牛いる!? 異世界、自由すぎる……」
その日、牧場では“牛の昼寝大会”が開催されていた。
七海は、道具箱から“ふわふわ日よけ布”をポン。
牛たちの頭上に、ちょうどいい木陰ができる。
「……世界は救えないけど、牛の日焼けくらいなら防げるかも」
ナビ牛は、七海のそばにとことこ寄ってきて、もそっと座る。
七海は、マグを手に、牛の背中の模様を眺めながらぽつり。
「……この模様、次の旅先に似てるかも。案外、牛って旅のヒントになるのかも」
夕方。牛たちはのんびりと小屋に戻り、牧場は静かな時間に包まれる。
七海は、牧場主から“特製ミルクティー”をもらい、宿屋の縁側で一口。
「……うん、今日も何もしてないけど、ちょっとだけ役に立った気がする」
風が吹き、ナビ牛の背中の模様が、夕陽に照らされて浮かび上がる。
「次は、あの山のふもとに行ってみようかな……」