第72話 さび付いたゴーレムと、午後の修理屋
~動かなくても、心は止まらない~
森を抜けた先に、ぽつんと佇む小さな村。
七海は、道端で見つけた古びた看板に目を留める。
「“ゴーレム修理屋”……? そんな専門店あるんだ……」
店の前には、大きなゴーレムが座っていた。
全身がさび付き、片腕は外れかけている。
目は閉じているけれど、どこか寂しげな雰囲気。
「……動かないのかな。いや、動きたくないのかも」
店主は、年配の女性。
七海に、ぽつりと語る。
「この子は、昔村を守ってくれてね。でも、今は平和すぎて出番がなくて……それで、動かなくなっちゃったの」
「……さびって、心にもつくんですね」
七海は、道具箱をポン。
取り出したのは、さび落としクロスと心の潤滑油(※ほんのりラベンダーの香り)。
「ちょっとだけ、役に立つかも。動かなくても、気持ちだけでも軽くなれば」
ゴーレムの腕を拭きながら、七海は話しかける。
「私も、前は“役に立たなきゃ”って思ってたけど……今は、のんびりしてる。それでも、誰かの役に立てることもあるし」
ゴーレムの目が、ふわりと開く。
ぎこちなく、首を動かして、七海の方を見た。
「……ありがとう。少し、軽くなった気がする」
夕方。ゴーレムは、村の広場に立っていた。
動きは遅いけれど、子どもたちに囲まれて、笑顔の中心にいる。
七海は、宿屋の縁側でマグを手に、ぽつり。
「世界は救えないけど、さびくらいなら落とせるかも」
風が吹き、ゴーレムの肩に止まった鳥が、ちゅんと鳴いた。




