第71話 海辺の町で、貝殻と記憶
~過去との向き合いと、静かな癒し~
潮風が頬をなでる午後。七海は、海辺の町にたどり着いた。
白い砂浜と、波の音だけが響く静かな場所。
「……この町、音の種類が少ない。なんか、心がほどける感じ」
宿屋をポンと建てて、浜辺をのんびり歩いていると、ひとつの貝殻が足元に転がってきた。
それは、ほんのり光を帯びていて、どこか懐かしい気配をまとっていた。
「……これ、ただの貝じゃない気がする」
七海は道具箱から“記憶再生ランプ”をポン。
貝殻に光を当てると、ふわりと映像が浮かび上がる。
映し出されたのは、数年前の旅人の姿。
この町で出会った人との、短い交流。
そして、別れのときに浜辺に貝殻を残していった記憶。
「……この人、誰かに伝えたかったんだ。言えなかった気持ちを」
七海は、町の古い喫茶店でその旅人の話を聞く。
店主は、懐かしそうに微笑む。
「ええ、あの人は優しい人でした。でも、言葉にするのが苦手でね……」
七海は、貝殻を店主に手渡す。
「これ、きっとその人の“ありがとう”です。遅くなったけど、届いてよかった」
店主は、そっと貝殻を棚に飾った。
「……静かな町だからこそ、こういう気持ちがちゃんと響くんですね」
夕暮れ。七海は宿屋の縁側で、波の音を聞きながらマグを手にしていた。
「……世界は救えないけど、誰かの“言えなかった気持ち”くらいなら、届けられるかも」
空は淡いオレンジ。
貝殻は、静かに棚の中で光っていた。




