第56話 勇者と魔王のゆるゆるショッピング
~戦わず、でもちょっとドタバタ~
王都の午後。七海はいつもの喫茶店でハーブティーを楽しんでいた。窓の外には、活気ある商店街が広がっている。
ふと店の前を見ると、勇者と魔王が並んで歩いていた。
勇者は重い鎧を脱ぎ、帽子を深くかぶっている。魔王は黒マントを軽く肩にかけ、紙袋片手にお菓子屋さんを眺めている。
「……勇者様、今日は戦いの予定は?」
「いや、今日は休暇です。……戦う気ゼロ」
七海は微笑みながら、心の中でつぶやく。
「戦わない二人が並んで買い物……世界はまだ平和みたいね」
商店街では、二人の奇妙なペアぶりが注目の的。
勇者は真剣な顔で革製品のサンプルを吟味し、魔王は大きなクッキーを片手にうっとり。
「……これ、美味しそうだな」
「ええ、私も試食してみます」
勇者が試食した瞬間、魔王も真似して口に運ぶ。二人して「うん、美味しい」と無言で頷き合う様子は、どこかほほえましい。
途中、迷子の子供や荷物を落とした商人が現れるが、七海がさりげなく万能道具箱で誘導や整理をする。
「……平和を守る勇者も、戦わない魔王も、ちょっと手がかかるわね」
最後に二人は、買い物袋を抱えつつ、ゆるやかに街を後にする。
勇者は少し息をつき、魔王は満足げにスイーツを頬張る。
七海はティーカップを片手に微笑む。
「戦わなくても、世界を少しだけ平和にする……それで十分、私のゆるゆるライフね」
王都の午後は、戦わない勇者と魔王、そして七海の小さなチートで、ほのぼのユーモラスに流れていった。




