表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/92

第49話 中二病の村

~闇の力に呆れる七海(右手がうずく)~

七海は道中、雨宿りのためにとある村へ立ち寄った。

だが門番らしき人が、腕を組んで言い放つ。


「ここは“漆黒の契約者”しか通せぬ!」

「……えっと、旅人なんですが」

「ならば闇の名を名乗れ!」


七海は首をかしげつつ、村の中へ入ることに。



広場では農作業中の人々がいたが、全員おかしい。

「我が畑に眠るは禁断の穀物……」

「太陽よ、我を試すな……!」

「闇に溶けよ、小麦!」


ただの畑仕事に妙なポーズと呪文が添えられている。


七海は額に手を当ててため息。

「これ、全員が中二病……?」



村長の家に行くと、立派な髭の老人がいた。

「よくぞ来た、異界を渡る者よ」

「え、異界? あ、はい。通りすがりです」


話を聞けば、どうやら数年前に旅の吟遊詩人が訪れ、格好いい“闇の詩”を披露したのがきっかけ。

以来、村全体がその雰囲気に染まってしまったらしい。



「……つまり、みんなで遊んでるだけなんですね」

「遊びではない! これは魂の契約……!」

「はいはい、わかりました」


七海は腰を下ろし、お茶をすすりながら言った。

「でも、作物の名前とか分かりにくいと困りますよ。 “禁断の穀物”じゃなくて“麦”って言ってくださいね。旅人混乱しますから」


村人たちはしばし沈黙し――

「……確かに!」

「分かりやすさも闇の力の一部!」


こうして、少し現実的な言葉を混ぜていくことになった。



村を出る時、門番が胸に手を当てて言った。

「さらばだ、『白き流浪の者』よ!」

七海は苦笑しながら手を振る。

「……ただの旅人ですから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ