第36話 パリピ女神とパイプオルガン
~ノリとリズムで祝福を~
森の奥にある小さな教会跡。
七海が立ち寄ると、中から「ズンドコ♪ ズンドコ♪」と重低音が響いてきた。
恐る恐る入ると、古びたパイプオルガンの前で――金髪にサングラス、花の冠を頭に乗せた女神が、ノリノリで演奏していた。
「イェーーイ! 今日も集まってくれてサンキュー! 光と愛をアゲてこー!」
……聴衆はいない。女神がひとりで盛り上がっている。
七海「え、えっと……ここ、神聖な場所じゃ……?」
女神「神聖こそバイブスだよ☆」
オルガンの音は荘厳というより完全にクラブミュージック。
七海は耳を押さえつつ、心の中でつぶやいた。
「いや、これ絶対、夜にやったら近所迷惑レベル……」
後から来た村人が七海にこっそり言う。
「困ってるんだよ、この女神様、毎晩このノリで……眠れなくて……」
七海は深くため息をつく。
「……まぁ、止めないとですよね」
七海は静かに近づき、女神の隣に座った。
そして、オルガンの鍵盤をひとつ、やさしく押す。
――ぽろん。
澄んだ一音が響き、女神は演奏を止めて振り向いた。
「……今の、なんかいい音だね」
七海はにっこりして言った。
「たまには“静かなノリ”も、気持ちいいですよ」
女神はしばらく考え、やがて笑顔でうなずいた。
「……バイブス、理解したわ。今日はチルでいこう!」
その晩は、月明かりの下で女神が穏やかにオルガンを奏で、村人たちはぐっすり眠った。
七海は教会跡の外で空を見上げて、苦笑する。
「……やっぱりこの世界、変なのばっかり」




