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1.異世界とケルベロス、マ?

ルナ帝国(Luna Empie)


カーディアック家に敷地内にある庭園から、夜空の下で神々しい光が出現した。


「あの光は…、何だ?光魔法の類か…?」


左側の額から頬にかけて深い切り傷がある男は、城内から外の様子を伺っていた。


「コンラット団長、どうかしたんですかー?眉間に皺寄せちゃって。せっかくの男前が台無しですよー」


右頬に火傷の痕が目立つ赤髪の男が、ニヤニヤしながら近付く。


「まさか、悪魔でも乗り込んで来ましたー?」


「馬鹿、外を見てみろ」


「外?あー、光ってますね。それも遠慮なしに、思いっきり」


「偵察に行くぞ、城内に残ってる団員達を集めてくれ」  

   

不審に思ったカーディアック家の騎士団の団長、コンラット・フォンクライスと副団長のヒューズ・ダンベルゼンの数名の騎士団員が偵察に訪れた。


「団長、これって魔法陣ですよね?しかも召喚系の…」


出現した巨大な魔法陣を見た団員の1人が驚きの声を上げる。

 

「あぁ、旦那様にすぐ知らせろ。シュバルト殿とご一緒の筈だ」


「分かりました!!!」


コンラットの指示を受け、屋敷の方に数名の騎士団が走り出した瞬間だった。


魔法陣の中から、甘野芣婭と2人の男が現れる。


猫毛の男は気を失っている甘野芣婭を優しく抱き上げ、コンラット達に視線を向けた。


「あれ、ここってどこですか?貴方、分かります?」


「馬鹿か、お前。帰って来たんだろ?魔界じゃねーけどな」


「俺達って、確か魔界に帰るつもりじゃ?」


「知らねーよ、芣婭は大丈夫か?」


ツンツン髪の男はそう言って、甘野芣婭の顔を覗き込み呼吸の確認をする。


「寝てるだけですよ」


「んな事は分かってんだよ、安否確認だ」 


「ちょ、ちょっと待て!!!アンタ等、魔界って言ったか!?魔界って、あの悪魔が


2人の会話に、ヒューズが割って入るように声を掛けた。


「おい、人間。芣婭が起きたらどうすんだ。声がデカ過ぎんだよ」


「いやいや、女の子の心配をしてる場合!?隊長もどうしたんですか!!ボーッとしちゃって」


ツンツン髪の男がヒューズに詰め寄る中、コンラットは甘野芣婭の事を凝視していた。


疑心暗鬼の眼差しではなく、確かめるような眼差しを向けている。


「視線がウザいんですけど、芣婭の事を見ないでもらえます?影剣(シャドウソード)


ジャキンッ!!!


猫毛の男の足元から伸びた影が剣の形に代わり、コンラットの喉元の近くまで伸びた。


✴︎影魔法… 自分自身が触れているものから、影から影へ移動出来ると言う能力が基本特性。

故に、古代から上級影魔術は悪魔しか使えないと魔法書には記されている✴︎ 


✴︎影剣(シャドウソード)…自身の影を剣の形に変形させ、相手に触れていなくても攻撃出来る影魔法。

攻撃に特化した魔法、術師の能力によって形や出現させれる数も変わってくる✴︎


  

「すまない、知り合いに似ていたんだ。不快にさせたなら謝る」 


コンラットが一歩下がると、影の刃は猫毛の男の影の中に戻って行く。 


「影魔法!?悪魔しか使えないって言う、あの影魔法!?」


「ヒューズ、男の言う通りに大人しくしろ。この2人の逆鱗は、あの女の子の眠りを妨げる事だ」


「やけに、変わった服を着た女の子の事を気にしてますもんね…。あの子も悪魔とかですかね?それと、あの子めちゃくちゃ可愛くないですか?」


コンラットの耳元で、ヒューズが小声で尋ねる。


「馬鹿、悪魔ではないと思うが…、契約者なのかもしれない。男達が、女の子の事を大切に扱ってるように見える」


「こんな夜更けになんの騒ぎだ、コンラット」


「オルタニア大公殿下、失礼いました」


現れた男の前でコンラットとヒューズは膝をつき、頭を下げた。


高級な服とアクセサリーを着けた男は、甘野芣婭と2人の男に視線を向ける。


オルタニア・カーディアックの隣にいる眼鏡を掛けた優しげな男の名は、シュバルト・ロールベルグ。


カーディアックお抱えの魔法省の省長を勤めてお

り、数々の古代魔術の研究に成功している男だ。


「オルタニア様、この赤目の男達は悪魔です、それも上位悪魔ケルベロス…。何故、ケルベロスがここに…?」


シュバルトは眼鏡を掛け直しながら、ケルベロスとオルタニアの顔を交互に見つめる。


✴︎悪魔ケルベロス ケルベロスまたはサーベラス。冥界の入り口を守る番犬であり、3つの頭と蛇の尾を持つとされている。冥界の神ハデスの下僕でもあり、冥王星の第4衛星✴︎


「悪魔が俺の庭園で何をしている」


「特に何もしてねーよ。俺等はたった今、異世界から帰って来たばっかなんだからよ」


「い、異世界だって!?君達、まさか異世界に行っていたのか!?それもどうやって?今の転移魔法では、異世界転移など不可能に近いんだぞ!?」


オルタニアとツンツン髪の男の会話を聞いていたシュバルトが、大きな声を出した。


「あ、シュバルト様!!!今、大声を出したら…」

ヒューズが止めようとしたが、時既に遅し。 


「ふわぁ…」


ヒューズとシュバルトの大声で、甘野芣婭がゆっくりと閉ざされていた瞼を開ける。


***

 

甘野芣婭(17歳)        

       

耐え切れなくなった欠伸をしながら、周りを見渡した。


何だ、ここは?


最近読んだ、異世界漫画に出て来るような、お庭とお城があるなぁ…。


それに男の人達が何人もいるんだが?  

 

ちょっと整理しようか、芣婭。


さっきまで東京の…、しかも?バイトに行く途中で、イケメン達を助けまして。


それから魔法陣が出て、魔法陣に吸い込まれて…?


「ここどこ?」


「あ、芣婭。起きちゃった?」


「うん…って、お姫様抱っこされてる!?」


猫毛のお兄さんが、軽々と芣婭の事を抱き上げてる状態に、今気が付いた。


「だって、芣婭が寝てましたから。それに全然、重くないですから」


「100点満点の答えだ!!!」  


「おい、芣婭が起きちまったじゃねーかよ」


「え、えぇぇ…、俺の所為じゃなくね?」


ツンツン髪のお兄さんがキッと、赤髪のお兄さんを睨み付ける。 

 

「お嬢さんは、こちらの世界の人間じゃないんだな?」


猫毛のお兄さんと話していると、黒いファーの付いたジャケットを着た男の人が声をかけてきた。


艶やかな黒髪を後ろに流し、白い肌に切れ長の紫の瞳がアメジストのように輝いている。


見た目は40代のイケおじが…、芣婭に話しかけてる。


「えっと…、芣婭は東京に住んでて…。気が付いたら魔法陣?に吸い込まれて…?」


語彙力ゼロの解答をしてしまった。


てか、猫毛のお兄さんが芣婭の事を降ろそうとしないんだが。


降りようとしても、降ろしてくれない。


ま、いっか⭐︎


このままでも⭐︎   


頭の中が整理出来ないまま、イケおじが話を進めて行ってしまう。 


「やはり、アイツの占いが当たっていたか。シュバルト、この子をお前の家に連れて行け」


「え!?わ、分かりました」


イケおじに声をかけられた茶色のサラサラ髪の犬顔お兄さんが、すごく動揺している。


「ヒューズ、馬車を用意しろ。コンラット、お前はこの子とシュバルトを家まで護衛しろ」


「分かりました」


イケおじの前で膝をついていた男の人達が、立ち上がり、芣婭の方に振り返った。


少しだけ前髪が長いアッシュカラーの短髪の髪に、左瞼から頬にかけて大きな切り傷がある男の人。


綺麗なレッドピンクな瞳、真っ黒な騎士服を着てる男の人…。


何でだろう、このお兄さんの事を見て懐かしく感じる。


「少しの間、貴方の護衛をさせて頂きます。コンラット・フォンクライスです」


そう言って、お兄さんは芣婭に微笑みながら頭を下げた。


「あ、俺はヒューズ。ヒューズ・ダンベルゼン、よろしくね?可愛い子ちゃん」


少し焼けた肌に緑色の丸目、右頬に痛々しい火傷の痕があるヒューズが、芣婭に向かってウィンクを飛ばす。 


「え、チャラ」


「チャ、チャラ?どう言う意味?」


「チャラいって事だよ」


「???」


ヒューズは不思議そうな顔をしながら、どこかに向かって走って行った。


「ごめんな、アイツお調子物だから…」


「ううん、チャラ男だから仕方ないよ」 

    

「ん?チャラ男って、どう言う意味?」


「えー、芣婭にウィンクしたでそ?そう言うことをする男の人をチャラいって言うの。意味を分かる?」

 

芣婭の言葉を聞いたコンラットは、納得した顔をしていた。


「君の瞳の色って、生まれつき?」


「あ、これ?うん、そうだよ。よく、お母さんにキモイって言われてた」


お母さんは芣婭の見た目よりも、この目を気にしてたな。


生まれつきに赤い目、お兄ちゃんもお父さんもお母さんも赤くないのに芣婭だけ。


だから、よけどキモかったんだろうな。


コンラットは悲しそうな顔をして、芣婭の事を見つめた。


なんで、コンラットが悲しむんだろ?


「お嬢さん、色々と聞きたい事があると思うんだ。この世界の事、この男達の事。元の世界に帰れるか…、とかね?」


「確かに、イケおじの言う通りだ」


「イ、イケおじ?ま、まぁ…、良い。シュバルトに色々聞くと良い、明日また話そう」


「オルタニア様、馬車のご用意が出来ましたー」


ちょっと困り気味のイケおじの元に、チャラ男が走って来た。


芣婭にまたウィンクして来たが、ツンツン髪のお兄さんが芣婭の前に立ち、チャラ男を睨み付ける。


「テメェ、うちの芣婭に色目使ってんじゃねーぞ、ガキ」


「ガ、ガキ!?」


「次、芣婭に色目使ったら潰すぞ」


「何を!?」


ツンツン髪のお兄さんとヒューズが言い合いをしてる中、猫毛のお兄さんが馬車の方に歩き始める。


「ケルベロス」


「何ですか?」


猫毛のお兄さんを呼び止めたイケおじは、芣婭の方に視線を向けながら話出す。


ケルベロス?


「もう1人はどうした。お前達は3人でケルベロスなのだろ?」


「知りませんよ、奴の事なんて。どこかの人間と契約したみたいですけど」


「心当たりはないようだな」


「ないですね、全く」


猫毛のお兄さんとイケおじの会話が全く分からない。


分からないが、お兄さん達は3人組らしいね。


「もう良いですか?芣婭の体が冷えるでしょ」


「えぇ…、紳士過ぎる!!どうしちゃったの!?お兄さん!!」


「お兄さんじゃなくて、ケルベロスって名前があるんですけどね。ほら、さきに座って下さい」


「座らせてくれるとは!!」


猫毛のお兄さんが優しく芣婭を降ろし、隣に腰掛けた。


ドカッと馬車が少し揺れたと思えば、ツンツン髪のお兄さんも芣婭の反対側に腰を下ろしていた。


「芣婭、寒くねーか」


「え?今の所は大丈夫だけど?ど、どしたの?」


「何が?」


「だって、急に優しくなったから…。どうしたのかなって、思うじゃん?」


芣婭の言葉を聞いたツンツン髪のお兄さんが、頭を優しく撫でてきたのだ。


どえぇぇぇぇぇ!?


どうしちゃったんですか、ONISAN!!! 


「まさか、ケルベロスと一緒に、馬車に乗る日がくるなんて…」


「文句あんのかよ、おっさん」


「おじさんの歳じゃないよ…。えっと、君の名前を聞いても良いかな?」


シュバルトお兄さんが、芣婭に話を振ってくる。


ガタンッ、ガタンッ。


同時に馬車が動き出し、外を見るとヒューズとイケおじが見送りをしてくれていた。  


「名前?芣婭」


「芣婭さん、両手首を見せてくれるかい?」


「え、手首?」


言われるがままに袖を捲り、シュバルトお兄さんに両手首を見せたが…。


「ん?何これ?右手首に月、左手首に太陽のマークがある?あれぇ?おっかしいなぁ」


「俺達が芣婭と契約した証ですよ、それ。ほら、手の甲に口付けしたでしょ、あれです」


猫毛のお兄さんの言う通り、ちゅーされたけど…。


「ま、さかあれで契約成立イエーイ⭐︎って、なると思ってなかったー!!もっとこう、THE悪魔と規約しまっすて感じの雰囲気でやると思ってたのに…」 

 

「「アハハハハハ!!!」」


芣婭の発言を聞いたお兄さん達は大笑い、コンラットもシュバルトお兄さんもそっぽ向いて笑ってるし。 

シュバルトお兄さんんが笑いを堪えながら、芣婭に話しかける。


「君は2人の…、悪魔ケルベロスの主人って事になるね。悪魔が、ここまで過保護なのは珍しいよ」


「ケルベロス?あ、お兄さん達の名前なんだっけ?2人共、同じな名前?」


「あぁ、ケルベロス、別名サーベラスとも呼ばれているんだよ」

   

サーベラス?聞いた事がない名前だなぁ…。


ケルベロスって呼ぶのも、なんか違うし…。 


「なる、じゃあ…。猫毛のお兄さんがケロちゃんで、ツンツン髪のお兄さんはベロちゃんって呼ぶね?可愛い感じしたんだけど、どう?」 


2人の顔を交互に見ながら言った瞬間、ケロちゃんとベロちゃんの首にチョーカーが現れた。


カチャンッ。


芣婭と同じ、レッドピンクの宝石が着いてる可愛いチョーカーだ。


「名付けまで出来たのか!?芣婭さん!!」


「な、名付けぇ?」


「魔物や悪魔、異種族に名前を付ける事だよ!?成功した魔物や悪魔の首に、自分の瞳の色の石が付いたチョーカが装着される。自分の魔力と引き換えに、魔物・悪魔は名付けされた者の命令には絶対服従なんだ」


「ぜったいふくじゅう?」


なーにを言ってるんだ?


シュバルトお兄さんはなーにを言ってるんだ?


どゆことー?


「シュバルト殿、芣婭さんが話について行けてないですよ。この世界の事も説明しないといけませんし、ゆっくり分かり易く説明されては如何ですか?」


「あ、あぁ…、そうだった。今まで見た事がなかったら興奮してしまった…。芣婭さん、ケルベロスは芣婭さんの言う事を絶対に聞かないといけなくなったって事なんだ」


コンラットに絆されたシュバルトお兄さんが、芣婭に分かり易くしてくれた。


「え、そんなつもりで言ったんじゃないんだけど….ごめんね?ケルちゃん、ベロちゃん…」


ケロちゃんとベロちゃんに謝ると、2人は全く気にしてない様子だった。 


「別に迷惑に思ってませんよ、ケロちゃんって名前気にってますし」


「芣婭、俺達はお前だから契約したんだ。怪我してでも、俺達を助けてくれただろ。芣婭の血を飲んで俺達は元の姿に戻れた訳だし」


「ケロちゃん…、ベロちゃん…、ありがとう!!!」


芣婭がケロちゃんとベロちゃんの腕に抱き付いていると、シュバルトお兄さんが叫んだ。

  

「血を飲んで!?まさか、"魔性の女"なのか芣婭さん!!!君は何者なんだ!!!」


「だから魔性の女って何!!!ちゃんと説明…、あれ?」


視界がぐにゃぐにゃしてきた…、なんか気持ち悪い…?


「芣婭!!!どうしたんだ!?」


コンラットの大きな声が聞こえて…、ベロちゃんに抱き締められてる。


皆んなが慌ててるのに、瞼が重くて…。


馬車の中で、芣婭は意識を失ってしまった。


***


深夜0時丁度、カーディアックの屋敷の前で、黒い馬の馬車が止まっていた。


馬車から降りて来た黒い髪の男の後に、白い肌の獣

人達も降り各々が固まった体を伸ばす。


男の名前はギルベルト・カーディアック、カーディアック家の長男である。


ルナ帝国では、獣人は奴隷として扱われており、酷い迫害を受けている種族として国民に認識されている。


カーディアック家は元は、公爵家の位に位置する家系だったのだが、ルナ帝国の初代皇帝と非常に仲が良く、特例で大公の位を与えた。


暗殺の仕事を生業(なりわい)としているカーディアック家は、ルナ帝国の達鋼の剣と呼ばれる程の実力を持つ。


ルカニアは獣人達の奴隷解放に力を入れており、彼等はルカニアに解放され、付き従ってる者達だ。 


「問題ない、俺は父上に魔物討伐の報告をしてくる。お前達は先に休め」


「いえいえ、俺達も行きますよ!!!」


「体力ならあり余ってますから!!!」


獣人達は尻尾を振りながら、男の周りに集まり出す。    

   

「あ、ギルベルト様。お帰りなさーい」


「ヒューズ、お前が出迎えとは珍しい。何か悪さでもしたのか」


「違いますって!!!旦那様がお呼びなんですよ。ギルベルト様に報告しないといけない出来事があったんですから」


「その為の出迎えか。やはり、報告は俺だけで十分だな。お前等は休むように」


そう言って、ギルベルトはヒューズと共に屋敷の方に歩き出した。


出迎えたメイド達に血で汚れたコートを渡し、オルタニアの執務室に向かう。


執務室に到着すると、執事長の老紳士マーヴィンとメイド長のサバサがギルベルト達を出迎えた。


「え、執事長とメイド長まで来たんスか??」


「ヒューズ、ギルベルト様の前でその話し方はやめなさい。ギルベルト様、お帰りなさいませ。無事のご帰還、心よりお喜び申しあげます」


マーヴィンが頭を下げながら言うと、隣にいたサバサも頭を下げる。


「ギルベルト、そこに座れ。サバサ、お茶の用意を」


「かしこまりました、旦那様」


オルタニアから命令を受けたサバサは、2つのティーカップに紅茶を注ぐ。


対面ソファーの腰を降ろしたルカニアに、オルタニアは視線を合わせながら口を開く。


「お前の事だ、今回の魔物討伐も問題なくこなしたんだろ」


「えぇ、ですから本題に入っても宜しいですよ」


運命の女(ファムファタル)が現れた。それも、異世界人だ」


「まさか、イーヴェル公爵の占いが当たったとでも?」


ギルベルトはそう言って、紅茶を啜る。


「お前にかけられた"呪い"が解けるかもしれないんだぞ」


「好きでもない女を花嫁にしろと?」


「そうだ」


「今日の所は失礼します」


飲み切ったティーカップをテーブルに、ルカニアは

腰を上げた。


「ギルベルト、明日は屋敷にいろ。良いな?」


「…、分かりましたよ」


そう言って、ギルベルトは執務室を出て行った。


「旦那様…、ギルベルト様にかけられた長年の呪いが解けるのでしょうか…」


「マーヴィン、彼女はルカニアの運命の女だ。ヒューズ、ギルベルトの部屋の前で待機しておけ、良いな」


「え!?え…ぇ、はい、分かりましたっよ旦那様…」


渋々返事をしたヒューズは、ギルベルトの後を追うように執務室を後にした。


***


甘野芣婭(17歳)


ふかふかのベットで寝てるみたいに気持ちいい…。


「芣婭様、芣婭様…」


んん?なんか、呼ばれてるような気がするんだけど…。


まだ眠たいんだよなぁ…。


「ま、まさか…、死んじゃってないわよね?た、大変!!起きて、起きてちょうだい!!芣婭さん」


ガシッと肩を掴まれ、思いっきり揺さぶられた。


「お、奥様!!落ちついて下さい!!」


「う、うぇぇぇ…?」


目を開けた瞬間、視界がグニャングニャンして吐きそう…。


「あ、奥様!!!芣婭様が起きました!!!」


「え、本当!?芣婭さん、起きて良かったわ!!」


パッと肩から手を離され、頭がハッキリしてきた。


見慣れない豪華な部屋に、大きなふかふかのベットの上にいる。


そして、目の前に真っ赤な口紅のマダムとメイドさんがいるね…、うん。


上品に巻かれた金髪の髪、ブラウン系のメイクでドレスはロングタイトで、キャバ嬢が着てそう。

       

隣にいるオレンジ色のショートヘアのメイドさんは、芣婭と歳があまり変わらなそうだ。


「えっと?ここはどこ?」


「ここは夫シュバルトの屋敷よ。貴方、馬車の中で気を失ってしまって、フォンクライス卿が運んでくれたのよ」


「コンラットが?」


「そうよー、彼の焦った顔は初めて見たわぁ。あ、私の名前はロザリアよ、ロザリア・ロールベルク」


このマダム、初対面なのにコミュ力高!!!


「シュバルトお兄さんの奥さんなの!?マダム!!」


「アハハハ!!初対面でマダムって初めて呼ばれたわ。芣婭さん、面白いわね」


「奥様、芣婭様の事を待ってる殿方達の所に行かないと…」


マダムとの会話にメイドさんが、恐る恐る会話に入ってきた。


そうだ、ケロちゃんとベロちゃんがいない!!!


「ケロちゃんとベロちゃんは!?」


「あ、ケロベロスは客室で待ってるわ。レディの部屋に紳士が入るなんて、無礼だもの」


「ぶ、無礼…、マダム武士みたいな事言うな…」


「それと、お着替えをしてからじゃないとね?ネグリジェのままだと、ちょっとね?」


「あ、スルーなんだ」


マダムは芣婭の話を聞かずに、メイドさんと話を進めて行く。


「さぁ、ドレスルームに行くわよ!!!」


「え、えぇぇ」


マダムに手を引かれ、芣婭は状況が整理出来ないままドレスルームに連れて行かれたのだった。


30分後、芣婭はようやくマダムから解放され、客室とやらに案内された。


「お待たせー、芣婭さんを連れて来たわよー!!」


マダムが勢いよく客室の扉を開けると、ベロちゃんとケロちゃんの声が聞こえてきた。


「おい!芣婭が起きたんなら、真っ先に知らせろって言ったよな!?部屋にも入れさせねーで、こんな所に追いやりやがって!!」


「貴方、30分も芣婭に何してたんです?」


「そう、怒らないの!!お姫様を可愛くしただけ♡」


ベロちゃんとケロちゃんを怖がらない…、さすがマダム。


マダムに手を引かれながら客室に入ると、2人とコンラットが驚いた顔をした。

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