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0.2匹の黒猫はイケメンでした

運命の王子様は、どこにいるのかなー


甘野芣婭(あまのふあ)(17歳)


久しぶりに、お母さんに叩かれて家を飛び出した時の夢を見ていた。


怒られないように勉強したのに、算数のテストの結果は50点。


目を血走らせて怒るお母さんは、魂を貪る悪魔のよう。


何を言って怒っているのか、聞こえてこなかった。


ただ、怒るお母さんの顔から目が離せなかった。


どうして、そこまで怒れるのか。


息継ぎせずに怒鳴ってるけど、どこまで息が続くんだろう。


そんな事を考えていたら、お母さんは手を振り上げ、右頬を強く叩いてきた。


パシーンッ!!!


突然の出来事に頭が追い付かない。


「アンタなんか、産むんじゃなかった!!!私の事を苦しめてばかりでっ。あぁ、冬馬さんだけで良かったのに!!!」


「どうして…?どうして、そんな事言うの?」


「うるさい!!!舌足らずみたいな話し方をしないでちょうだい!!!イライラして仕方がない。私の前から消えてちょうだい。アンタを見てるだけで吐き気がするわ」


芣婭の顔を見ながら、お母さんは口元を押さえる。


「お母さんが悪魔になっちゃうのは、芣婭の所為?」


「はぁ!?アンタ、私の事をそんな風に思って思っていたの!?このガキッ!!」


「や、やだっ。やだっ!!!」


お母さんがまた、芣婭の事を叩こうと手を振り上げたと同時に、リビングを飛び出した。


どこでも良い、お母さんから逃げれる場所ならどこ

だって。


家から離れたい、帰りたくないっ。


「はぁ、はぁっ…。ここ、どこだろ…」


見慣れない大きなアヒルの滑り台がある公園に辿り着き、雨宿りする為に公園内に入った。


アヒルのお腹部分の所に入り、体育座りをしながら雨を眺めていた時だった。 

      

大粒の雨が降り頻る中で、キラキラ光る銀色の瞳の男の子と目が合う。


サラサラな黒髪に雪のように白い肌、真っ黒な王子様の服を着ている。


芣婭よりも少し大きい、カッコイイお兄ちゃん。 

 

雨が降っているのに傘を持っていなかった男の子は、ただ黙って見つめ返して来る。


ザッ、ザッ。


公園の中に入って来た男の子は芣婭の顔を覗き込みながら、銀色の瞳の中に芣婭の事を捉えた。


「お前、誰かに殴られたのか」


ぶっきらぼうな言い方で、赤くなっている頬を指さす。


何故か優しく聞こえて、芣婭は何故か泣けて来ちゃったんだ。


「お母さんにっ、叩かれた」


「最低な母親だな。こんな真っ赤になる程、叩く必要があったのか?」


そう言ってお兄ちゃんは芣婭の隣に座って、赤くなった頬を優しく撫でられた。


「芣婭が馬鹿?だから、お母さんが怒って叩くの。悪い子なんだって、芣婭。吐き気がするんだって、芣婭の顔を見ると」  

      

「俺もこの目の所為で人から怖がられてる。銀色ので産まれて来る子供はいないらしいからな」


「そうなの?キラキラして綺麗なのに、ガラスみたいに綺麗」


芣婭の言葉を聞いたお兄さんは小さく笑って、芣婭の頭を優しく撫でる。


「皆んな、お前みたいに優しい奴だったら良かったのに…。そしたら…」


*** 

 

ピピピピピッ!!!   

 

勢いよく鳴るアラームの音に驚きながら、ベットから飛び起きる。


「ビックリしたっ…、もう朝かぁ…。王子様の続きの言葉が聞きたかったのに」


鳴り止まないアラームを止め、渋々メイクポーチを手に取った。  

 

毎朝メイクやヘアセットに、たっぷりと時間を使うと決めている。


登校時間の2時間早く起きて、メイク道具をテーブルの上に並べて行く。


「今日は、ピンクベージュの気分」


自分を可愛くしているこの時間が大好き。


可愛いお姫様みたいな部屋の中だけが、この家で与えられた芣婭の居場所。

 

お兄ちゃんが誕生日プレゼントに買ってくれた女優鏡の前で、可愛いを仕上げて行く。


元々、色は白いから日焼け止めとファンデだけでおk。 


全体的に明るくするキラキラのラメ入りのアイシャドウを瞼に纏わせ、睫毛をビューラーで上げる。


「ベージュカラーのマスカラを塗って、次はリップを塗る…っと」


お気に入りのさくらんぼみたいに赤色のリップを塗り、透明のグロスで唇の端の色をぼかす。  

 

その間にコテの電源を入れ、充分に温めて置く。


芣婭的にはかなり熱くさせた方が髪が巻きやすいと思う


メイクキープを顔全体に振り掛け、手で仰いで乾かす。


最近、あの時の夢を見ている気がするな…。


あの後いつの間にか眠ちゃって、起きた時にはお兄ちゃんに背負われていたんだっけ。


次の日に公園に行っても、銀色の瞳のお兄ちゃんはいなかった。


別の世界の人みたいに綺麗なお兄ちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。  

   

温まったコテを使って丁寧に髪を巻いている時、部屋の扉が乱暴に開けられた。


バンッ!!!


「アンタ、また化粧なんかしてるの?はぁ、学校に行くだけなのに大人の真似しちゃって」


部屋に入って来たお母さんが、キッと芣婭の事を睨み付ける。


これも芣婭の毎朝の日課で、お母さんの怒鳴り声から本格的に日常が始まるのだ。


「まだ、学校まで時間あるよ?7時30分だよ?今…」


「馬鹿みたいな話し方はやめてって言ってるでしょ。髪も勝手に染めてたりして、頭の悪さを見せつけたいの?」


そう言って、ピンクベージュに染められた髪を見下ろす。


髪だって、バイトをしたお金で、美容院に行って染めた。


毛先は少し濃いめのピンクのグラデーションカラーで、とっても可愛いのに…。


お母さんは、こんな芣婭の事が嫌いみたい。


芣婭よりも頭が良いお兄ちゃんの方が大好きみたい。


芣婭の事が嫌いだから、いつも怒ってくる。


「母さん、父さんが呼んでる」


廊下から声を掛けて来たのは、お兄ちゃんだった。


茶髪に染められたサラサラヘア、色白の肌に優しげ

な色素の薄い茶色の瞳が、眼鏡の奥から覗かせている。


爽やかな白シャツをおしゃれに着こなしていた。


あ、芣婭が誕生日プレゼントしたシャツだ!!!


お兄ちゃんと目が合い、優しく微笑まれる。


「任せて」とお母さんにバレないようにで、アイコンタクトをしてきてくれた。


「あら、そうなの?ごめんなさい、気付かったわ」

「コーヒーのお代わりじゃないかな。それと、父さんの洗濯が混ざってたよ」


そう言って、お兄ちゃんがお母さんにお父さんの服らしき物は渡していた。


「本当だ、ごめんなさいね?冬馬(とうま)さん。芣婭、髪なんか巻いてる暇があったら、予習でもしなさいよ」


お母さんは芣婭の事を睨みつけてから部屋を出て行くと、お兄ちゃんが入って来た。


甘野冬馬(あまのとうま)20歳、芣婭よりも3歳上のお兄ちゃん。

 

「おはよう、芣婭。今日も可愛いな、新しいリップに変えた?」 


「おはよう、お兄ちゃんっ。さすが、よく分かったね!!」


「芣婭の事なら、なんだって分かるよ。髪も良い感じに巻けてるな」


「ふっふー、今日の芣婭のビジュ良い感じなんだ」


芣婭が髪を巻いてる姿を見るのが好きなお兄ちゃん。


この家で優しくしてくれるのは、お兄ちゃんだけ。


「芣婭。支度が出来たなら、朝ご飯を食べに行かないか?」


「良いけど、お母さん怒らない?」


「大丈夫、こっそり家を出よう。少し先にあるコンビニで待ち合わせだ」


「おk」


お兄ちゃんは芣婭の肩を優しく叩いてから、部屋を出て階段を降りて行った。


急いで家を出る準備を始め、お兄ちゃんがあ出て行った後に静かに家を出る。


音を立てないように玄関のドアを閉めて、足早にコンビニに向かう。 


芣婭の朝ご飯は元々、用意すらされていない。


そもそも、中学生の頃から夜ご飯も用意されてなかったな。 

       

自分で作ってご飯を食べて、自分で着ていた服を洗濯して…。


流石に学費は払ってくれていて、学校生活は不自由なく送れていた。


芣婭は馬鹿だから、お父さんの病院を継ぐのはお兄ちゃんに決まってるし。


お父さんは芣婭を完全に空気扱いで、話し掛けられた記憶がない。


お兄ちゃんに全部任せちゃってる状態に、心の中では安心していた。


嫌味を我慢すれば良いだけの話だから、高校を卒業するまでの我慢だ。


卒業したら家を出て1人暮らしをすると決めている。


その為にバイトをして、貯金をしてるんだから…。


ガシッと腕を掴まれ、顔を上げると心配そうな顔をしたお兄ちゃんが立っていた。

 

「芣婭、どうした?ボーッとして」     


「あ、ごめん…。早起きしたから、ボーッとしちゃってた」


「何かあったら、お兄ちゃんに言うんだぞ?良いな?」


「分かった」


芣婭の返事を聞いたお兄ちゃんは、優しい笑みを浮かべて、手を握ってくる。


「もう、お兄ちゃん。芣婭はもう17歳なんだよ?子供扱いして…」


「芣婭は大事な妹なんだ。それとは別に芣婭は方向音痴なんだから、手を繋いでおかないとダメだ」


「うぅ…、方向音痴の事を言われると、何も言い返せない…」


お兄ちゃんは毎回そう言って、芣婭の手を離そうとしない。


高校生になった今も、子供同士みたいに手を繋いでいる。

  

「だろ?大人しく手を繋がれてなさい。ほら、近所のパン屋さんに行こう。キャラメルのクロワッサン食べるだろ?」


「食べる!!」  

  

芣婭達は足早にパン屋に向かい、朝食用のパンを買って、歩きながら食べる。


通っている高校は家から15分の距離にあり、お兄ちゃんの大学は電車に乗らないと行けない。

    

「お兄ちゃん、電車に乗らなくて大丈夫?大学に間に合う?」


「今日は2コマからだから、ゆっくりでも大丈夫なんだ。芣婭が心配する事はないから、気にするな」


「そうなんだ」


「あれ、芣婭ー!!!おはよー」


お兄ちゃんと話していると、友達の菜穂(なほ)が声を掛けて来た。


金髪のセミロングの髪を器用に巻き、綺麗めな顔立ちに合ったギャルメイク、短いスカートにベージュのニットを腰に巻いている。


芣婭はパステルピンクのニットで、菜穂と色違いだ。


「あ、菜穂!!おはよー、今日は寝坊しなかたんだね」


「一限目、数学でしょ?寝坊したら減点するって言われてさ。仕方なく、早起きしたって感じよって、お兄さん!!おはよーございます♡」 

    

そう言って、菜穂が目をハートにさせてお兄ちゃんに挨拶する。


菜穂はお兄ちゃんの事が好きで、芣婭も出来る限り協力してるんだけど…。


お兄ちゃんは昔から女の子からモテて、常に誰かに告白されてたな。


本人が菜穂の気持ちに気付いていないんだよね…、どうしたら良いんだろう。


「あぁ、菜穂ちゃんおはよう」


「お兄さん、今日は大学遅めなんですか?」


「そうなんだよ、これから行く所なんだ。芣婭、僕はそろそろ行くよ。今日はバイトの日だろ?終わったら連絡して?迎えに行くから」


菜穂から視線を芣婭から移し、ポンポンッと頭を撫でてから高校とは逆方向に歩いて行った。


「冬馬さん、ヤバみ!!本当にカッコイイよねぇ。カッコイイだけじゃなくて優しいし!!!冬馬さんしか勝たん!!」


「菜穂、お兄ちゃん推しだよね。勉強とか教えて貰ったら良いんじゃないかな?お兄ちゃん頭良いし」


「え!?2人っきりはハードルが高過ぎるって言うかさ…、恥ずかし過ぎるっ!!!」


顔を真っ赤にさせながら言う菜穂は、恋する乙女そのものだ。


「積極的に行かないと、お兄ちゃん取られちゃうよ?」


「それはダメ!!!わ、分かったっ、勇気出して聞いてみる」


「頑張って!!応援してるから」


「ありがとう芣婭ー!!!大好きっ!!」


そう言って、菜穂が勢いよく抱き付いてくる。


恋する乙女の心の中は複雑だよねぇ。


芣婭だったらガンガン行って、アタックしちゃうんだけど…。


それがダメみたいなんだよね。


「芣婭、この間出来たって言ってた彼ピとは?順調?」


「あー、別れちゃった」


「え!?もう?!な、何でって、まさかとは思うんだけど…」


「同じ理由だよ、芣婭の愛が重過ぎてダルいって。芣婭って、そんなに重いのかなぁ」


菜穂に尋ねてみると、苦笑いしながら口を開く。


「思いって言うかさ、芣婭って歴代の彼ピ達の好きを信じてなかったよね。試すような言葉とか、何度も本当に好きなのかって聞いてたよね。私が見てた限り、本当に芣婭の事好きぽかったよ?」


「そうかなぁ…。芣婭に対しては冷たい人が多かったよ?好きって全然言ってくれないし、可愛いなんて付き合ってからは言わなくなったもん」


「あー…、芣婭がいない所で惚気てる奴が多かったな…。本人の前で言えなかったんでしょ?芣婭もさ、ちょっとは相手の気持ちを信じた方が良いよ?」


だって、言葉にしてくれないと分からないじゃん。


本当に芣婭の事が好きなのか、毎日ちゃんと好きでいてくれてるのかって。


不安なんだもん、好きでいてくれてるのか分からないもん。


菜穂には芣婭の気持ちが分からないみたい。


毎日毎日、芣婭の事を可愛いって言って、好きだよって言ってくれないと信じられないだもん。


あの日、雨の中で出会った王子様みたいな…。


「良いもん、こんな芣婭の事を好きになってくれる人と付き合うから!!」


「はいはい、見つかると良いねぇ。芣婭、可愛いのになぁー」


「ちょっと、それ以外に問題あるみたいな言い方しないでよー」


菜穂の肩を叩きながら校門を潜っている所を、お兄ちゃんが見ている事に気付いていなかったのだった。


***


甘野冬馬は甘野芣婭の隣にいる友人の菜穂の背中を睨み付けていた。


「チッ、あの糞女が。僕と芣婭の時間を邪魔しやがって…。懲りずに連絡までして来るなんて、虫みたいな女だ」


菜穂から送られて来たメッセージの中身を見ずに削除し、待ち受け画面の芣婭を見つめる。


「僕と芣婭、2人だけの世界があれば良いのにな…。誰も僕達の邪魔をしない世界…」


そう言いながら、空に浮かぶ月を見て甘野冬馬の口元が緩んだ。


「タイムリミットが近付いて来てるなぁ…。それまでに、芣婭の事をどうにかしないとな」


スマホをポケットにしまいながら歩く甘野冬馬の足元を、2匹の黒猫が通り過ぎる。 


僅かな風が吹き、青い空に小さな渦のような物が出現したのを2匹の黒猫も見つめていた。


「やっとあっちの世界に帰れるぜ」


「はぁ、夜にならないと帰れませんよ。それに俺達、魔力ないでしょ?自力で帰れませんよ」


「だぁー!!!夜になったら戻れるかも知んねーだろうが!!」


「うるさいんですよ貴方。馬鹿みたいに騒がないでもらえます?」


黒い猫の言い合いは、昼過ぎまで続くのだった…。


***


午後17時過ぎ、下校時間を告げるチャイムが鳴り響く。


キーンコーンカーンコーン。 

 

「芣婭、今日もお姉のネイルサロンでバイトだっけ?」


帰る準備をしていると、前の席に座っている菜穂が振り向きながら声を掛けてきた。 


芣婭のバイト先は菜穂のおねえちゃんが経営しているネイルサロンで、ハンドマッサージをする事。


順番待ちの人とか、ネイルが終わった人のマッサージとおしゃべりをするんだ。 


「そだよー、今日も芣婭の事を指名してくれるマダムが来るの」


「え、マダム?ウケる」


「でそ?あ、そろそろ行かないと!!じゃね、菜穂!!」


慌てて教室を飛び出し、下駄箱に向かって猛ダッシュを決める。


タタタタタタタタタッ!!!


「ヤバイ、ヤバイ!!!」


上履きから靴に履き替え、校門を潜り抜け、息継ぎする暇なく走り続ける。


目の前の青信号が点滅し出した時、2匹の黒猫ちゃんが反対車線から飛び出して来た。


「え!?」


プッププー!!!


勢いよくクラクションの音が鳴り響き、車は猛スピードで向かって来ている。


2匹の黒猫ちゃんは、道路の真ん中で固まって動けないでいた。


ど、どうしよう…、猫ちゃん達が轢かれちゃうっ…。


芣婭が迷っている間にも、車はスピードを落とす気配が全くない。


「助けないとっ!!!」


急いで2匹の黒猫ちゃんの元に向かって走り出し、道路に飛び出る。


「きゃぁぁぁぁあ!!!女の子が飛び出して行ったわよ!?」


「おい、危ないぞ!!!」 


周りから声が聞こえて来たけど、芣婭の耳には入らなかった。


だって、苺みたいに真っ赤な目さー?


目が合っちゃたんだもん。


プッププー!!!


バッと両手を広げたまま足を止めずに、2匹の黒猫を抱き上げながら反対側の歩道に滑り込む。


ブォォォォォォォ!!!


ドサッ!!!


「痛ったぁあ!!!今、絶対エグい事になってるよ…。大丈夫そ?猫ちゃん達」


無事に轢かれずに済んだ腕の中にいる黒猫ちゃん達に、視線を向ける。


ん?背中に悪魔みたいな羽がある。


「馬鹿か?お前」


どこからか、芣婭の事を馬鹿にした声が聞こえてきた。


当たりを見渡してみるが、芣婭の周りには誰もいない。


「お前に言ってんだよ、女」


「…、はにゃ?」


「貴方、俺達の声が聞こえてるんでしょ?」


乱暴な話し方の男の子と淡白な話し方の男の子の声が、下から聞こえて来るのだが?


恐る恐る下を向くと、声の主はあ2匹の黒猫ちゃんからだった。


「お前、なんで俺達を助けた?人間なんて、あの鉄の塊に当たったら死ぬだろ」


「へ?て、てか喋れるの?」


「あ?喋れるに決まってんだろ。俺達は悪魔なんだからな」


「はにゃ?」


ど、どゆこと?


黒猫ちゃん達が悪魔?


悪魔って、あの悪魔??


ペロッと膝あたりを舐められる感覚がし、視線を向けると、淡白な話し方の黒猫ちゃんが傷口を舐めていた。


「わぁー!!!ばっちいから舐めちゃだ…」


ボンッ!!!


目の前でいきなり白い煙が現れ、白い肌の男の人の手が伸びてきた。


「あぁ、やっぱり。貴方の血は魔力を回復させる血でしたね」


綺麗な猫毛の黒い髪に苺のように赤い瞳に、目の下には濃い隈が出来てる。


黒いシャツから肌けた肌には、おしゃれなタトゥー達が覗いていた。


え、えぇ…、イケメーン。 

  

このイケメンの話し方…、淡白な話し方の猫ちゃんの話し方そのもの…。


「きゃああああ!!!イケメン!!!」


「どこから出てきたの!?」


女の子達の歓声が鳴り止まないのを見たイケメンが、溜め息を吐きながら指を鳴らした。


パチンッ!!!


その瞬間、車のと人、空を飛んでいたカラスの動きが止まった。


静かになった空間に居心地の悪さを感じて仕方がないんだが。


「おい、お前だけ元に姿に戻りやがって…。この女の血を飲んだからか!?」


「はい、この通り魔法も使えましたし。貴方も舐めたら良いじゃないですか」


「ま、魔法?お兄さんがやったの?マ?」


2人の会話に割り込む形で、芣婭は疑問を投げ掛けた。


目の前で起きている事は、ガチもんだ。


このお兄さんヤバい、ヤバもんだ。


「俺は悪魔ですからね、このくらい動作もありません」


「ヤバい、ヤバすぎる…。イケメンお兄さん、只者じゃないね」


芣婭の言葉を聞いたお兄さんは口元を緩ませ、上機嫌になって行く。


その様子が凄く…、きゃわたん。


「まぁ、他にも凄い魔法が使えますけど?」


「え、これよりも凄いもの?ガチ?」


「おい、女!!!俺にも血を飲ませろ!!!」


芣婭とお兄さんの会話に、乱暴な話し方の猫ちゃんが入ってきた。


「俺も本来の姿にも戻りてーんだよ。あの野郎の所為で、こんなみっともねー姿にさせられてよぉ…」


「こんなにきゃわたんなのに、みっともなくないよ?あ、でも元のカッコイイ姿も見たいなぁ」


そう言って、芣婭は猫ちゃんの顔を覗き込みながら微笑む。 


芣婭の血にそんなパワーがあるとは…、芣婭にも不思議な力があったのかな?


「ま、まぁ?そんなに言うなら?見せてやっても良いけど?」


「貴方、絆されてますけど?あと、俺の方が先にイケメンって言われてますから」


「あ!?俺の姿見たら驚くぜ」

       

乱暴な話し方の猫ちゃんが、ペロペロと傷口えを舐め始める。


変な感覚…、傷口を舐められてるのに痛くない。 

     

美味しいミルクを舐めているみたいに、優しく舐められている。


ボンッ!!!


白い煙が再び立ち込め、血管の浮き出た太い腕に肩を抱かれた。


ツンツンした黒髪、血色に良い肌に鍛え上げられた体が黒のワイシャツの上からでも分かる。


苺みたいなのに、赤い血液のように赤い瞳から目が離せない。


2人共、体の至る所にオシャレなタトゥーが入っている。


「お前の血は何なんだ?何故、俺達の魔力が回復したんだ?」



「魔性の女だからじゃ?」


「はぁああ!?嘘だろ?!もう何百年も現れた事がなかったんだぜ?」

「魔性の女が現れたら、俺達は…」


何の話をしてるのか分からないけど、芣婭の話をしてるんだよね?


そんな事を考えていると、足元から眩い光が放ち出した。


「へ?!な、なにこれ?!漫画で見た事ある!!」


ファンタジー漫画でよく見る魔法陣が、芣婭の足元に出現したのだ。


「アイツの足元にゲートが!?俺等も行くぞ!!」


「はぁ」


「めんどくさがってんじゃねーって!!」


イケメンお兄さん達も何故か、芣婭の足元の魔法陣のの中に入ってくる。


「こうなったら、お前も俺等の世界に連れてく。安心しろ、責任は取る」


「え、え!?俺の世界って、どゆこと?」


「黙って着いて来い。あっちに着いたら説明してやる」


「あ、そゆこと?」


乱暴な話し方の猫ちゃんだったお兄さんが、芣婭の手を掴んだ。


淡白な話し方の猫ちゃんだったお兄さんも、芣婭の反対の手を掴む。


そして、同時に芣婭の手の甲に口付けをした。


チュッ。


「はにゃ!?」


い、いきなりチュー!?


しかも、2人同時に!?


待って、待て待て!?


「貴方の事、気に入ったので守ってあげますよ。もっと、俺の事を可愛がって下さい」


「か、かわ!?」


淡白な話し方のお兄さんは色っぽく、芣婭に笑い掛ける。


「俺様達を飼い慣らす女になれよ?魔性の女」


乱暴な話し方のお兄さんは、意地悪な笑みを浮かべる。


その瞬間、眩い光に吸い込まれるような感覚がした。


体が魔法陣の中に引っ張られる!?


もしかして、これって…。


皆さん、ご存知の流行の異世界転移と言うヤツでは!?

芣婭、異世界に転移しちゃうの!?


その瞬間、芣婭達は魔法陣の中に引き込まれたのだった。

 

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