二十一話 vs夢集め
歪みに吸い込まれた秀が行き着いた先は、荒れ果てた荒野だった
「何だここは?」
見渡す限り荒れ果てた土地で平坦な所などどこにもなく、雲行きもどうもあやしい
今の状況を理解することができない秀はただ呆然と立っているだけだった
そんな状況の中、背後から聞いたことのある声がした
「ようこそ俺の領域へ」
「んな!?お前は……」
振り向いたら先には見覚えのある全身黒にに統一された服装にフードを深々に被った男がいた
それから連想するのはもちろん自分が力を手にいれることや、異世界に行く理由を作った夢集め
「…………お前、俺が会っていた奴とは違うな」
「ほー、よく分かったな、まあアイツならお前達の担当を外されたよ………」
(担当?)
「お前達のなんかにためにカードを渡したせいでな!!」
男が手をかざすと、男の前から槍が複数出現し、それの全てが秀に襲いかかる
「風よ!!」
さっきと同じように風でまた吹き飛ばすが、吹き飛ばした槍は空中でとどまり、矛先がまた秀の方向に向いて再び襲いかかる
「い、韋駄天!!」
「悪いがさっき飛ばした槍とは性質が違うんだ」
「性質だと?」
「さっきの槍は飛ばしたら終わりなんだが、今の槍は一度どこかに刺さらない限り俺の思うがままに動かせるんのだよ」
その言葉を聞いた後、槍が飛んだ場所を見ると、そこには無数の槍が刺さっていて、ピクリとも動く気配がなく、その男の言ったこと通りだった
「そんなことを言ってよかったのか?」
「どうせ死にゆく奴に何を言っても無駄なんだよ!!」
左手に身長の二倍ほどの槍をまた歪みから出現させ、左腕に装着させた
「俺の名はレイン ブロッサムだ」
「浅村 秀だ」
それが合図となり、お互いが一気に距離を詰め、激しいぶつかり合う
「そんなちっぽけな刀一本じゃ勝てないぞ」
鋭い突きの猛攻にかわすか天つ風で軌道をそらすのが限界だった
「そんなことでいつまでもやり過ごせると思っているのか!!」
「ぐっ!!」
レインの突きを天つ風の腹で防ぐが、レインの放つ突きの衝撃によりかなり後ろに後退せざるおえなくなる
「いつまでもお前のペースだと思うなよ」
大きなバックステップで距離をとり、風を天つ風に集めて一気に振り抜く
「旋風刃!!」
「遅い!!」
旋風刃を放ったと同時に動いたレインはすでに秀の後ろにいた
「槍ノ雨!!」
「ちっ、韋駄天」
降り注ぐ槍の雨をかわすが、槍は地面に刺さらず秀を追い続ける
「今度は外さないぜ」
(くそ、切り返しても切り返してもついてきやがる)
「槍ばかりに気をとられをなよ」
槍ノ雨に気をとられ過ぎてレインが前方に来ているのに気づかなかった
「くっ、絶空剣・嵐!!」
「壱の攻式・菊花」
目にもとまらない斬撃に目にもとまらない突きで対抗するが、背後からは槍がすぐそこまで来ている
「自分の槍をでも喰らってろ!!」
菊花を上手くかわし、レインの頭上をギリギリで越え背後に回り、槍をレインに当てるつもりだったのが、槍はレインの体をかわすようにして、秀に襲いかかる
「くっ、韋駄天!!」
「残念だが俺には槍は当たらないんだ」
「だったら………これでどうだぁ!!」
目の前の風向きを下向きに変え、その風力をとてつもない威力にする
「刺されぇぇぇ!!」
風向き下に変えたことで槍は全て地面に刺さっていた
「はぁ、はぁ、はぁ」
「ほぉー、あれほどの風を吹かすとは、なかなかやるじゃないか、魔力の消費はハンパないがな」
「気にすんなよ、まだまだやれるし、こっからだぜ」
「そうか、なら行くぞ」
体を屈めて槍を構えて走る
「弐の攻式・椿!!」
槍を構えた突進攻撃に秀は天つ風を地面に突き刺した
「うおらぁぁぁ!!」
「ウインドエッジ!!」
正面から突進してくるレインに対してウインドエッジを放ったが、ウインドエッジは弾かれ、そのまま秀に槍がかすめ、レインはすぐに切り返してまた突進してくる
「無限ループってか」
天つ風を地面から引き抜き、中段に構えて椿に備えるが、直撃したとたん秀は吹っ飛んだ
「だから刀一本じゃ勝てないと言っただろ」
そう言って吹っ飛んだ秀に向かってまた椿で突進する
椿で突進してくるレインに対し、秀はまた中段に構える
「お前もしつこいな、そんなちっぽけな刀じゃ勝てないんだよ!!」
槍が届く範囲になったレインは渾身の突きを繰り出した
「これで終わりだぁ!!」
そう叫んだレインに対し秀の口元はニヤリと笑っていた
「刀一本じゃダメなんだろ、アドバイスサンキュ♪」
レインの椿は止められていた………一本ではなく、二本の天つ風によって
「な、何!?」
さっきまで、止めることすら出来なかった椿を今度は見事に止めていた
「天つ風・重」