十九話 暗雲
西脇とゆめゆめランドに行った日の後日、学校はもちろんのことで休みとなっていたが、周辺の学校も事件を警戒してか休みとなっていた
そしてそのニュースが流れる度に自分の無力さが身にしみる
「どうしたの秀、さっきから黙っちゃって」
「何でもないから気にしないで、ごちそうさまでした」
朝食を食べ終わると秀は、すぐさま出かける準備をした。
「あれ?どこかに出かけるの?」
「まあちょっとね」
「昨日は遊園地で今日はどこかしら♪」
「別に西脇はそういう人じゃないから」
「ははは、照れない照れない」
「照れてない!!行ってきます!!」
その場にいるのさえ恥ずかしくなった秀はそさくさと家を出た
「あれだけ外は危険だって言われてるのにバカなのかしら秀のやつ」
「妬かない妬かない♪」
「わ、私は別に妬いてなんかいないわよ、何で私がアイツに対して妬かないといけないのよ」
こちらはなかなかの場になりそうだ
秀Side
秀が来たのは近くにあるとある森の山頂、そこにはすでに連と真也が来ていた。
「悪い悪い、思いのほか時間くっちまってな」
「気にすんなよ、そんなことよりさっさと始めようぜ特訓とやらを」
「悪いな二人とも、んじゃ行くぜ!!」
―浅村家―
秀が帰ってきたのは特訓から6時間ほどのことだった
「アンタどこで何をしたらそんなにボロボロになるのよ」
「ん?まあちょいと秘密のトレーニングにはまっててね」
「世界中探してもそんなにボロボロになるトレーニングないわよ」
「まあ見てなよ、じきに姉さんが惚れ惚れするような肉体になってるからさ」
「ちょ、いきなり何言ってんのよ///」
「あははは、冗談だよ、じゃあ疲れたからもう寝るね」
「あ、こらまだ話しは終わってないわよって……こらー!!」
階段の下で叫んでいる姉には悪いが、今の疲労困憊の秀にはかなり体にひびくため、さっさと部屋に入っていつものようにベッドにダイブした
「…………………」
何も言葉がでない、それほど体が疲れている
今日はもう何もしたくないそのような感じだ
手も足も何も動かすこともできない
そしてそのまま疲労困憊の秀は深い深い眠りにつく…………はずだった
枕元の携帯が唸って止まらない
メルマガであることを祈るが、その祈りはすぐに消えた
メールならば三回ほどで消えるバイブレータが消えずに唸っている
「…………くっそぉ!!」
携帯をふんだくるように取り、その着信元を見てから携帯の通話ボタンを押した
「もしもし」
「もしもし浅村君」
「浅村?はて誰でしょうか?間違い電話だと思います、では……………」
「ああ!!ちょ、ちょっと待ってよ、ちゃんと電話帳ひらいたんだから嘘吐かないで」
「こっちは眠くて死にそうなんだよ石月……………んで用件は?」
「えーと今から私の家に来られないかな?」
「お休みなさい………」
「切らないでぇー!!」
石月の特徴の小動物が泣きつく声に切るに切られなくなってしまい
「ぜ、善処するよ」
「じゃあ待ってるからね」
それで電話を切った後、体に鞭を打ちつつ、石月の家へと進んで行った
―石月家―
インターホンを鳴らすと、どうぞということだったなで石月の家に入った
「お邪魔しまーす」
家に入ったあとは、石月に言われた通りに二階に進み石月の部屋であろう部屋をノックする
「浅村君入って」
「お邪魔しまーす」
初めて入る石月の部屋、部屋はとても整理整頓がなされており、全体的に可愛らしい感じだった
「浅村君、顔色が悪そうですけど、どうかされたんですか?」
「それを本気で言ってんだったらガチで怒るぞ」
「お、落ち着いてください」
「分かってるよ、んで用件は?」
「ああ、そうですそうです、これを見てください」
机に置いてあるノートパソコンを開いて、とある掲示板のページを見せた
「ネット上の掲示板か」
「そうです、それで見てほしいのはここです」
石月が見せたスレは北合に関するもので、石月が指差したところにはこう書かれていた
【北合でエスパーが使える人】
「なんじゃこりゃ?」
「初めは私も気にもしてなかったんだけど、続きを見てみて」
石月がいう続きにはこう書かれていた
【ちなみに僕はいくつもの球体を瞬時に出せることができたり、普通の人より早く移動できたりします】
「………間違いない、これを書き込んだのは秋山だ、そして奴は馬鹿だな」
「さらになんですけど、この書き込みにのった人が二人いたんです」
ページを下へとスクロールさせて、その二人の書き込みを見る
【僕はあなたみたいに特殊な力を持っています】
【お二人方こんばんわ、僕もお二人みたいに特殊な力を使えます、よければ三人で会いませんか?】
「マジかよ、これが本当なら、能力者がこの町にはいるってことかよ」
「一番最悪なのはその三人が共闘することだよ」
「一番嬉しいのは、その三人で潰し合いをしてくれると嬉しいんだけどな」
「一番なのはこの書き込みがでまであることなんですけどね」
「まあなんにしろ、これが嘘か本当かは分からないってことだな」
「今は待つしかないですね」
秋山が仲間を集めるためなのかは分からない、しかし、新たにでてきた二人が暗雲を呼び込もうとしているのは間違いなかった
「まあ、用がこれで終わりってんなら俺は帰宅させてもらうよ」
部屋を出ようとした秀が歩き出した時だった
急に視界がぐらぐらし始め、それにつれて足元がふらつき、石月のベッドへと倒れてしまった
「だ、大丈夫ですか!?」
「………すぅ……すぅ」
「ね、寝てる……」
寝息をたて始めた秀を見た石月は、疲労困憊だったという秀を思い出した
「本当に疲れてたんだね浅村君」
罪悪感に苛まれた石月は体勢が中途半端な秀をなんとかベッドに押し込もうとするが、女の子のでは少しばかりパワーが足りない
必死に押し込む石月が精一杯力を込めた時、たまたま秀が寝返りをうってしまった
結果…………
「きゃあ!!」
上半身を押していた石月は見事に秀の体にダイブしてしまった
「……浅村君///」
顔までの距離50㎝ほどまで近づいていた石月ショート寸前だった
退けばいいものの、頭がこんがらがっていて何をしていいかがまったく分からない
落ち着くために一旦目を閉じる
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせる
やっと落ち着いたところでゆっくりと目を開ける
そこにはさっきと変わらず気持ち良さそうに寝息をたてる秀がいる
(少し甘えてもバチはあたらないよね///)
自分にそう言い聞かせた石月は、ゆっくりと体を動かしていく彼が起きないようにと願いなら
そして秀に添い寝するような形になった
「どうか私より早く目が覚めませんように///」
そう小さく呟いてから、石月も眠りについた
―三時間後―
目を覚めた時に視界に入ったのは、白色にピンク色の模様が入った天井
「そうか、俺石月のベッドで寝ちまったのか……………ん?」
右腕にある妙な違和感、何だろうかと思い首を右に傾けると…
自分の腕に腕を絡めて寝ていた石月がいた
「………のわぁぁぁ!!」
衝撃的な光景に驚いた秀は体を反射的に動かしてしまった
「う、う〜ん……あれ?」
「………お、おはよう」
「…………////」
今の状況を把握したのか、みるみる内に顔が真紅に染まっていく
そして染まった後に石月が大きく息を吸い込んだため、秀は石月の口をふさぐ
「ま、待て石月、勝手にベッドの上で寝たのは謝るが、別に石月には何もしてないから」
「ん、んんん!?」
「いいか、今から手を離すけど、悲鳴だけは勘弁してくれ」
そう言ってゆっくりと口から手を離した
「はぁ、はぁ、はぁ、苦しいじゃないですか!!」
「俺としたら、あそこで叫ばれたら苦しいどころの騒ぎじゃすまないと思うけど」
「まあそうですね……………退きましょう」
よっこらっせと言わんばかりにベッドから立ち上がった
「さてと俺はそろそろおいとまするとしますか」
同じくベッドから移動しようとした秀だが、ポケットで唸る携帯を取り電話にでた
「もしもし、ヒロどうかしたのか?」
「浅村君か、今どこにいる?」
「ん?石月の家だけどどうかしたのか?」
「今すぐ駅前の公園に来てくれ………ぐあ!!」
ヒロのその声がしてから電話が切れた
「どうかしたんですか浅村君?」
「ヒロがあぶねぇ……じゃあな石月」
「あ、ちょっと浅村君!!」
家から駆け出した秀は、駅前まで全力で向かった
―公園―
「くっ、こんなにも力の差があるとはな」
「なーに言ってんだよ、能力者に無能力者がかなうわけないっての、そら!!」
男が繰り出したミドルキックが見事にヒロの脇腹に直撃し、ヒロは砂場まで吹っ飛ぶ
「……………」
「あらら、もう終わりかよ、だらしないねー、んじゃあトドメさせさせてもらうよ」
貫手の形をとった男が、ヒロを掴み上げ、喉元めがけて突きだす
「死ね!!」
「アイスドラゴン!!」
「っ!!!!」
ギリギリでアイスドラゴンをかわした男は瞬時にヒロと距離をとる
「誰だ!!出てきやがれ!!」
「もう出てきてるっての」
そう言って出てきた連は男の真後ろにいた
「アイスニードル…」
「くっ……」
地を強く蹴って高く跳んでかわす
跳んだ男を見てから連は両手の五本指をくっ付けボールの形を作った
「氷槍・包!!」
男を氷の槍で360°囲む
そして、囲んだのを確認してから連は両手をパンと叩くように潰し、囲んでた氷の槍が男を一斉に襲う
「くっ!!」
同時で襲った氷の槍は完璧に男に入ったと思わせた
がしかし、後少しというところで氷の槍が全て砕け散ってしまった
「何!?」
「おいおい、こんな奴相手に何不覚とってるんだよ」
声のした方向にはジャングルジムのてっぺんにすわる帽子を深々と被ったダークブラウンの少年がいた
「別に不覚をとった訳じゃないさ、ただどれくらいかを試したかっただけさ」
「くっ、アイスウルフ!!」
敵が二人に増えたことで危機感を感じたのか、連は氷の狼を複数作り出して両方に向かわせる
「こんなもの…」
「ゆりぃんだよ!!」
いとも簡単にアイスウルフを破壊した後すぐに二人は間合いを詰めて攻撃を繰り出す
「ちっ、二対一はちょっとばかしキツいか…………真也!!」
「おう任せろ、影縫い!!」
木々に隠れていた真也が出てきて、帽子の男の方の影めがけて鎌を投げた
「その技については報告を受けているわ!!」
影めがけ、とんでくる鎌を手を振るだけで、鎌に触れずとも鎌を弾き飛ばした
「何!?」
「君のゆういつで最大の能力の影縫い、鎌にさえ気を付ければとるにたらない能力だな」
「くっ、なめるなぁ!!」
「なめてるのはそっちだぜ」
横から飛んできたもう一人の男に脇腹に膝をかまされ、その場にうずくまる真也
「ったく、弱いったらありゃしねーな」
「くそっ、夜坂はどうしているんだ……」
「アイツならあそこで倒れている」
男が指差す方向にはぐったりと倒れている連がいた
「そんじゃ今度こそばーいばーい♪」
(ここまでか……)
「ぐあ!!」
ここまでだと思った真也は目を閉じたが、痛覚より先に男の悲鳴が聞こえた
目を開けるとそこには太ももから血を流している男がいた
「次は一体誰なんだよ!!」
「………遅刻が多いな」
「死ぬよりましだろ、感謝してくれてもいいんじゃねぇの、てか連そろそろ起きろ!!」
「いててて、結構ダメージでかいんだけどな……」
「ちっ、三対二では分が悪いな、ここは一旦退くぞ」
「なんでだよ!!このまま押せば勝てそうじゃんか」
「太ももをおさえておきながらよく言えたものだな」
「………分かったよ、浅村 秀!!この太ももの傷は忘れねぇからな」
「太もも傷ってなんかカッコ悪くね」
「うるせぇ!!とりあえず今日はここで退いてやるが、次に会った時がお前らの命日にしてやるよ、とくに浅村 秀!!お前にはこの傷を数十倍にして返してやるから首を洗って待ってるんだな」
「はいはい、分かったからさっさと行けよ」
秀の言葉に血管が浮き出ている男を必死に帽子の男が制止てから5分でやっとその場に静かな時間がおとずれた
駅前の公園には大の字で倒れている四人の男達、誰も言葉を発しないほどダメージが蓄積されていた
そんな四人のもとに駆け寄る二人の少女の影
「石月!!」
「沙耶香!!」
四人全員がどおしてここにという顔をしていた
そんな四人に石月は秀のもとへ、沙耶香は兄の治療に走った
「しかしよく倒れてますね浅村君は」
「人を貧血持ちみたいに言うなよ、倒れてる理由の四分の一は石月にあるんだからな」
「………すいません、でもよかったですね敵が逃げてくれて」
「まあな、あそこでウインドエッジがはいってなきゃ、勝負は分からなかったしな」
「それほどの敵だったんですね」
「秋山ほどじゃねぇがな」
一通りのことを話したところで、泉の治療も終わりそれぞれの家へと帰ることにした
―浅村家―
「ではまた明日?うーんいつでしょうね次は」
「そうだな………そうだ石月明日の朝走り込みしないか?」
「え!?いいんですか?大事な特訓があるんですよね」
「いいもなにも、俺がしたいんだから石月の都合がよければいいんだったらでいいよ、しかも特訓は昼過ぎからだし問題はないよ」
「はい///ぜひともよろしくお願いします」
なぜ石月が顔を赤らめるかは分からないが、今はノータッチでいこう
「それじゃ、また明日の朝ね、時間はまたメールするよ」
「それじゃまた明日」
そう言って別れた後に秀が玄関のドアを開けると、怒りマークが浮かぶ姉がいた
「あれ?人間に怒りマークは浮かぶはずがないんだけどな」
そう自分に言いきかせながら目をこする秀
「ねぇ秀〜こんな時間まで一体何をしてたのかな?」
「いや、ちょっと散歩かな」
「こんな時間まで散歩とはね」
姉が指している現在の時刻は日付が変わっていた
「晩御飯を食べないならちゃんとメールなりなんなりしないよね、母さんも心配してたんだから」
「そうか、母さんには明日ちゃんと謝っておくよ、じゃあおやすみ姉さん」
「あ、こら秀!!」
そう言ってその場を後にした秀はそのまま自分の部屋に戻る
そしてその秀の背中を見ながら姉は小さく呟いた
「少しは私のことを気にしてくれてもいいじゃない………」