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3話 事件!それは紛れもなくバニーさ

 とある場所に、男がいた。

 その男の身なりは金髪に浅黒い肌。まさにチャラいと言った雰囲気の男は、ぶつくさと怨嗟の言葉を放ちながら歩いていた。


「くそっ。全部あいつのせいだ…」


 思い受かべるのは一人の男。

 ただの好青年といった雰囲気の男。そう、統次だ。


 実はこの男、昨日イーナをナンパしていた人物で、あの後ロシュツノイターからその格好を咎められ、服を切り刻まれた挙句に包帯でぐるぐる巻きにされるという末路を辿っていた。


「やり返してぇ…」


 その自業自得とも言える不幸の末、彼の頭にあったのは統次への復讐だった。

 

「お!あれは…」


 彼の視線の先には、赤い髪の女性と親しげに話す統次の姿が。


「いいネタに使えるな…」


 男が復讐の算段を思いついた瞬間。予定調和のように小箱がやってくる。


「うっ!?なんだこれ…?」


 まるでびっくり箱みたいに彼の胸へ沈み込み、融合した。

 

「わかんねえけど…力が湧いてくるぜ…!」


 彼の体は変化した。

 刺々しい腕が刺々しい背骨が。彼を異形に変えていく。


「ふふ…はははは!!」


 怪人「フトモモノイター」はたからかに笑うと、その場から駆け出した。




 その日。統次は部屋で寝ていた。

 体の痛みがあるわけではない。単純に今日が日曜日だから寝ていたのだ。


 しかし、心地の良い眠りの時間もすぐに終わる。


「ごふっ!?」


 そう、ふってきたのだ。上から。

 何かが。


 思わず飛び出す太い自分の声に驚きながら目を覚ます。


 人一人ほどの重さのそも襲撃に似た何かを、恐る恐る触り確かめる。


 なんだ…?これ…?


 大きさ的には人一人、と言っても成人男性ほど大きくなく、統次と同年代、もしくは少し下くらいの体躯だ。

 また、少々よくない表現にも思えるが、その、なんだか柔らかい。


「んっ…!」


 女性の声。

 驚くほどに綺麗なその声はどうやら、落ちてきたものから発生されているらしい。

 

 恐る恐る統次は顔を上げる。未確認との対面だ。


 何か悍ましいものではないのか。そんな統次の思いは杞憂に終わる。なぜならそこにあった、いや、いたのは綺麗な女性だったからだ。


 まず目に入る赤い髪の毛。そして髪と同じ色の綺麗な赤い瞳。四つん這いの状態だからか強調される平均的な大きさの胸が今はどうしても艶かしい。

 さらに露出度の高い服装が、その色気を増幅させている。

 また、太いももという言葉を全力で体現するかのように存在する2つん太ももがこれでもかと言うほどに美しい。


 やはりその太もも、バニーが似合うな。統次はそんなことを思ったりもした。


 そんな女性と、目が合った。


「あなたが、私を…?」


 唇が触れ合うような超至近距離で言葉が発せられる。

 綺麗な唇が震えた。


「…誰?」


 統次の冷静な一言が、場に静寂をもたらす。


「とりあえず、どいて欲しい、かな?」


  彼女は、自分の今の状態に気付いたのか、顔を真っ赤にした。







「なるほど、なにかが落ちてきたような気がしたて彼女がいた、と。にわかには信じられませぬな」

「まあ、そりゃそうだよな…」


 引き続き統次の部屋にて。

 部屋を訪ねてきた大正を招き入れ、さっき起きたことをありのままに話しているわけだ。


「よくわからないのだが…、あなたが私を召喚したわけではないのだな?」

「うん。そもそも召喚ってなんだ?君は人間じゃないのか?」

「まあ、人間では、ないな」


 薄々勘付いてはいたからか、衝撃的な驚きはないが、やっぱりかという妙な納得はあるもので。


「しかし随分奇抜な格好でござるなぁ…」

「お前が言うか」


 大正の格好はいつでも和服スタイル。明治大正といった文化人的姿を奇抜と言わずなんというのか。


「そうだろうか?私としてはこれが普通でな」


 彼女の格好は露出度が高い。ほぼビキニと言ってもいい最低限デリケートゾーンを隠すだけの衣装に、薄い布を羽織ると言うよりも貼り付けただけだ。

 その美しい太ももも、否応なく露出している。


 少なくとも外に出られる格好ではない。


『むむぅ…?おお…!これは…!』

「どうした?ラーグ?」


 お馴染みデバイスから赤いドラゴンラーヴァラーグの声が響く。

 

『久しぶりだな!フィリュテ!』

「むむ…!その声は…!」

「え?え?」


 ブンブンと二人の間で頭を振る統次。扇風機のように旋風が巻き起こりそうだ。


「おじさん… !」

「おじさん?」

「多分違うでござる」


 統次の頭に浮かんだ魚の姿を大正が否定する。


『彼女はフィリュテ。戦いの神だ』

「神ィ!?」

「そういえば名を名乗っていなかったか。すまない。先ほど紹介があった通り、我が名はフィリュテ。戦いの神だ」


 神だと堂々と言い張る赤髪の少女ことフィリュテ。

 しかし彼女の顔から、とても嘘だとは思えない。


『一応我の姪に当たる』


連なる衝撃の連続に、彼らに電流が走り続ける。


「すると....戦いの神で、ドラゴンの親戚ってわけね.....。なんだそりゃ」

「そんなすごそうな人がぽんぽんと出てきていいのでござるか?」

「普通は良くないのだがな。なんの因果か召喚されてしまったようだ」


 召喚.....?

 一同の頭に?が浮かぶ。


『ひさびさに姪の姿もみれたことだ。我は散歩に戻るとしよう』

「お前寝てたんじゃないのか?」

『我はずっと散歩していたぞ。なにより久々の人間の世界だ。やはり、少々あの世界は息苦しい。息抜きというものだな』


 そう言って、彼はデバイスを出ていった。


「彼がラーヴァラーグでござるかあ.....。すごそうでござるね」

「たぶんすげえと思う」

「ござるなぁ....」


「な、なぁ....」


 フィリュテがおずおずと手を挙げる。


「私はここに居てもいいのか....?」

「もちろん。それしかないし。あとで母さんたちには俺から伝えとくよ」

「恩に着る....!」


 こうして兎福家には、居候が一人増えたのだった。

 

 ちなみに、彼の両親の返事はノータイムでの了承だった。



「でも、生活するとなるとその副はダメだよなあ」

「なにかおかしいところが?」


 フィリュテは心の底から不思議そうに、自らの福について尋ねる。

 

「露出が高すぎるよ。それじゃ風邪を引いてしまう」

「なんか違うような気がするでござるなぁ.....」

「むう....。やはりこれじゃだめなのか....?」


 膨れた顔で彼女はそう言う。


「ここはやはり某のように和服スタイルで......」

「ダサい。却下」

「なにをぅ.....!」


「こんな美しい太ももにはバニーだ」

「統次殿は阿呆でござるか?」

「なんだとぉ.....」


 バチバチと二人の視線が絡み合う。


「主は和服が何たるかを.....」

「服......仕立て屋に頼むのだろうか」

「バニーのなにが.....」


 だめだ、空間が混乱を始めた。


「とりあえず、服を見に行こうか」


 彼らは、近くのショッピングモールに行く決心をしたのだった。


「あ、某今日も予定があるのでござった。お二人でいってくるでござる」

「毎日大変だな」

「楽しいでござるよ」


 というわけで、統次とフィリュテはショッピングモールへと歩き出したのだった。







「たのもー!!我が名はフィリュテ!戦いの.....むぐぅむぐく...!」

「やめろやめろ。ここはそういう場所じゃないから」


 彼女の叫ぶ口を押さえながら統次が彼女をなだめる。

 

「....そうなのか?」

「うん」

「ならばそうなのだろう」


 彼女と歩きながら統次は思った。

 このフィリュテという少女は素直である、と。

 話からしても元来、生真面目な性格だったんだろう。歩きながらの彼女との談話と太ももでわかった。


 例えば。


「好きな食べ物は?」

「食べれるものなら何でも。いやしかし好きな食べ物を聞かれているのであれば特段ないというのが道理か.....」


「じゃあ趣味とか」

「すまない。私に趣味というのも特段なくてな。貴殿の期待に答えられず申し訳ない」


 といったふうにだ。

 すべての質問や投げかけに対し、真摯に答えるようだ。



「とりあえず中に入ろうぜ」

「う、うむ。しかし私もファッションなどには疎くてな」

「俺もだよ。バニーしか知らない」

「ならばそのバニーとやらを着てみるか.....?」

「お!それじゃあ.....」


 どうしようもない二人の会話。

 そうして二人はショッピングモールへと入っていった。



「ほう.....ここがしょっぴんぐもーる.....」

「基本的なものは揃ってるぜ。食べ物も、いろいろとな」

「なるほど。しかし私は今特に金のあるものなど持っておらぬぞ?どうやって交換すればいいのだ?」


 神にしては随分と世間知らずだな.....。統次は思わずそう思ってしまった。

 するとフィリュテはそれを感じ取ったようにこういった。


「すまない.....。私がこの世に自由に干渉することはできなくてな.....。こっちに来ることはなかなかないんだ」

「なるほどな」

「しかし大丈夫だ。手持ちがないからと言って、交換ができないわけではない。私とて女だ。そしてこの身体にも少しの自信はある。ならばこの身体を......」


 よくない。それはよくない。


「よくない。それはよくない」


 おっと、心の声が出てしまったようだ。

 

「そうか?いい案だと思うんだが.....」

「フィリュテも言ってたけど.....、女の子でしょ?女の子なら身体は大事にしないと」

「そ、そうか....?気遣いをありがとう」


 とても自然な統次の気遣い。それになんだかフィリュテは感じたことのない感覚がした。


「それに、ここでは物々交換じゃないんだぜ。これを使うんだ」

「なんだ...その、薄っぺらい....紙....?」


 フィリュテは首を傾げながらそういった。

 その仕草は大層可愛らしいものだった。


「お金だよ。これが物々交換の代わりになるんだ」

「.....すごいな....たしかに交換よりも圧倒的に便利かもしれない」

「わかったところで、早く行こうぜ。日が暮れそうだ」


 そう、彼らが外を出た時間はすでに14時を回っていた。そして、今の時刻は15時。

 もたもたしていたら外は暗くなってしまう。

 

「ならば、早く行こう」


 くいくいと統次の腕をフィリュテが引っ張る。

 しかし、彼女が向いた方向は、明後日の方向だった。


「.....フィリュテ、そっちじゃない」

「ならばこっちか?」


 また別の方を向くフィリュテ。


「そっちでもない」

「うむ.....、ならばこっちか」

「こっちだよ」


 統次が正しい方向を彼女を引っ張ってゆく。そうして、やっとのことで彼らは服を買いに行くことが出来たのです。



「これが.....。現代というのはすごいな。こんなにもきらびやかな服で溢れているんだな!」


 フィリュテが興奮してそう言った。その時の彼女の顔は年相応に可愛らしいもので、統次もこれにはドキッとした。


 すごいかわいいな.....。やっぱりバニーを着せたら本当によく似合いそうだ。


 しかしそこは腐っても統次(バニー馬鹿)なのだった。


「気に入ったものとかあった?なんでも....とは言えないけど好きなのを俺が買うよ」

「いいのか!?」

「まあ、フィリュテはお金も持ってないだろうし」


 なんだか、少し失礼なものいいだったが、彼女は気にせず楽しそうに服を見ていた。


「なあ、これ。私に似合うだろうか?」


 早速という風に、彼女は服を自分に合わせ統次に尋ねる。

 華やかなワンピースと言った風のその服は、赤い髪の彼女によく似合っていた。

 野原に咲き誇る白い百合のように美しい、やはり彼女の素材がいいからだろうか、やはり彼女は美しく可愛らしい。

 なにより、その太ももがとんでもなく輝いている。


「よく似合ってるよ。めちゃくちゃ可愛い」

「本当か!嬉しいぞ.....!」


 嬉しそうな顔をする彼女。太ももが震えている。

 やっぱり、この太ももには絶対にバニーが似合うだろう。


 そんな時間はどんどんと過ぎていった。

 



「結構買ったなぁ.....」

「すまない....。私のわがままで....」

「いやいや気にしなくていいよ」

「そうだぞ。こいつの金は自分の財布のように使えばいいんだ」

「うわ直瀬、いたのか」


 後ろから声をかけてくる見知った声。

 統次の親友である直瀬だ。


「なんだよ。いちゃ悪いのか?」

「いやいるなら連絡くらい.....」

「生憎だが俺もお前がここにいたのを知ったのはついさっきでな。それをやるのは物理的に不可能だ」

「いや...こう....超能力的なあれでさ.....」

「ねえよそんなもん」

 

 彼らは楽しそうに話す。 


「で、そこのお嬢さんは一体?」

「え?ああ。彼女はフィリュテ。今日から家の居候だ」

「よろしく頼む」


 ぴょこりと頭を下げるフィリュテ。

 彼女の乳房が揺れた。


「へぇー。お前も大変だな」

「ああ。大変だよ。うんめっちゃ大変」

「暴れ出したザリガニより?」

「もちろん」

「そりゃ....大変だな....ってわかんねえよ」

「感じ取れ....、世界の理を」

「ザリガニから理を読み取れればこの世は全員賢者だろうよ」


「そんなことより、今度流し素麺やろうぜ」

「この時期に?」


 突然そんなことを言い出す直瀬。

 しかし流し素麺というのは夏にやることだ。少なくとも、統次はそう思った。


「ああ。春にやるのもいいもんだとおもうぜ?」

「あ、あんたほどの男がそういうなら....」

「そうだ!そこのヒッポリュテ?さんもどうだ?」

「フィリュテだ。そんなことより、いいのか?」

「もちろん。人は多いほうがいいしな」

「ならば....同行させてもらおう」

「じゃ、そういうことで」


 彼は手を上げ、去ろうとする。


「おいちょっと待て。日時も告げずにどこ行くつもりだ?」

「おっとすまん忘れてた。場所は俺ん家、日時はこのあとだ」

「ほんとうに急だな」

「悪いな。じゃ、そういうことで」


 彼は今度こそ去っていった。


「よし。じゃあ食材でも買うか」

「そうしよう」

「どうせならイーナと大正も呼ぶか。あいつ友達少ないだろうし」

「そうなのか.....?いい人そうなのに....」


 本気で心配そうな顔をするフィリュテ。


「.....別に本当ってわけじゃないから」

「....そうなのか」


 ぱっと彼女の顔は明るくなる。

 紛れもなく彼女もいい人だった。


「ちょっと俺トイレ行ってくるから、ここで待っててくれ!」


 そう言って、統次は駆け出していった。


「トイレ....?排泄ということだろうか...?.....そういえば昔は用を足すのも一苦労だったなっんん!?」


 突然、後ろからハンカチが彼女の口に押さえつけられる。

 突発的にそんなことをさせられたフィリュテは大きく生きを吸ってしまう。


 瞬間、彼女は大きく気を失ってしまった。


「よし....!あとは....あそこに.....」


 まがまがしいほどの姿をした怪人「フトモモノイター」は、彼女を軽々しく持ち運び、去っていった。



「おーい!フィリュテ!ってあれ?」


 トイレから帰ってきた統次が、フィリュテに呼びかける。しかしそこに、彼女の姿はなかった。


「おっかしいな....。どこにいったんだ?」


 キョロキョロと辺りを見渡しても、すばらしいほどの太ももを持った彼女の姿は見つからない。


「ん?これは.....」


 彼女の代わりに見つけ出したのは、一枚の紙。どこか果し状にもにたそれには、こう書いてあった。


「彼女は預かった、死なせたくなければここに一人で来い......ってええ!?」


 まさかの書き置きに、驚く統次。

 しかし、次の瞬間には更にそれを超える声が響いた。


『なんだとぉ!!!!?いますぐ出てこい我の姪をこんな目に合わせるとは許せぬ....!!!殺してやるぞ誰かしらんがな!!!!』

「落ち着けラーグ。今すぐ行けばいい話だろう?」

『そうか!そうだろう!!よし!今すぐ行くぞ!!!!』


 ラーグの言葉が耳に入るたび、統次の怒りが上がっていく。


「わかった!!すぐ行こう!!」


 怒り心頭の二人は駆け出していった。






 辺りはすでに闇に包まれており、月明かりすらない場所に。彼女、フィリュテは縄で縛られ、目を隠され、吊るされるという形で換金されていた。


 暗い.....。こんなもの、私でもと思っていたが、なぜだ....力が出ない......。

 しかし何だこの心のざわめきは.....、ひどく...ひどく不安だ。

 感じたことがないぞ.....。


「どうだぁ....?気分は.....」


 男の声が聞こえるたび凌辱デモされたかのように心が震える。

 怖い....とても怖い.....誰か助けてくれ....


 彼女の叫びは、届かない。






「ここか.....?」

『そうだ!』


 統次の問に、ラーグが答える。

 それを待ち構えていたように、もう一つの声が響く。


「来たかぁ!!」

「お前は!!!」

「あの時ぶりだなぁ!!」


 声でわかる。これは、あのときイーナをナンパしていた男の声。

 まさか....俺を狙って.....?


「ラーグ。すまん、今回の件、俺のせいかも....」

『なんだとぉ!?』

「何を話しているからは知らんが、ここでお前は俺に負けるんだよ!!」


「くそっ!すまんが説明している暇はないようだ!いくぞラーグ!!!」

『仕方ない....行くぞ相棒!!!!!!』


 いつもより3割増のラーグの声。


「変身!!!!」

『キコナシアップ!!』

『跳ねるぜバニー!魅せるぜラヴィット!!ラッヴァード!!!』


「はぁ!!」


 気迫のこもったラッヴァードのパンチ。

 しかし、いとも容易く受け止められる。


「無駄無駄ァ!!」

「なにっ!?」


 フトモモノイターの体から胞子が湧き出る。

 それがラッヴァードに襲いかかり、ラッヴァードの身体が崩れ落ちていく。


「がぁぁ!?」


「手も足も出ないか.....。冥土の土産だ。これを見ろ」

「.....?」


 彼はなにかを掲げる。

 そこには、バニーガールの姿で無惨に拘束されているフィリュテの姿があった。


「貴様.....!!!!ぐぁぁぁ!!!」


 その瞬間。統次の怒りが頂点に達した。

 しかし、それに耐えきれなくなるように、ラッヴァードの変身が解かれる。


「じゃあな。もうすぐこいつは海に落とされる。海は冷たいぜぇ?浮かんでこれないかもな?」


 フトモモノイターは下劣な笑いを浮かべながら何処かへ去っていった。


「許さねえ.....!!許さねえぞ!!!!」

『お、おい。落ち着け統次!』

「あいつは...!あいつはバニーを汚してフィリュテをひどい目に合わせた!!許せるわけねえだろうが!!!!」


 叫びがこだまする。

 そうして、統次は立ち上がり、ゆらゆらと、しかし確かに歩みを進めていったのだ。








「ははは!!いい気味だ!」


 なんだ....?なにがおこっている....!?


 フィリュテの心の声が叫びを上げる。

 それに答えるようにフトモモノイターは話を始める。


「お前は今から冷たい海の底だぜぇ?その前に、そのいい体を堪能してからでも.....」

『STEP UP!!!STEP UP!!!』


 暗闇から、音が聞こえる。

 明るく激しい音は、どんどん近づいていくのだ。


 暗闇の中から光るなにかが近づいてくる。 

 ゆっくりと、一歩一歩踏みしめるように。獲物を、掴み取るように。


「.....再変身!!!!」


 瞬間、炎が吹き荒れ、汽車が突っ込み、彼の身体が変わっていく。

 赤いボディに白い外装。そして兎をかたどったようアンテナとV字の意匠はラッヴァードの証。


「てめえだけは許さねえ!」

「何度やっても同じだぁ!!!」


 胞子が吹き荒れる。


「見えた!最強のバニー!!

 

 その胞子を切り裂くように、列車が現れる。


『スアッシュ!』

『キコナシアップ!!』

『RIDE THE WAVE!RIDE THE WIND!スアッシュ!!』


 ラッヴァードの姿が変わる。 

 脚の白かった部分が赤く、まるで足を露出させるが如く、ヒロイックに変わっていく。


「セイヤッ!」


 素早い足さばきで竜巻を起こし、胞子を吹き飛ばす。


「何!?」

「まずは....!」


 そして、素早く切るかのごとく彼女の縄をぶった切った。

 

「フィリュテ!大丈夫か!?」

「あ、ああ。大丈夫だ」


「くそぉ!!」


 フィリュテがラッヴァードを見る。


「私もともに戦おう。力が出にくいとはいえ、戦いの神の力、足手まといにはならぬぞ!」

「おう!」


 二人が腕を交差させ、駆け出す。


「ハァ!」


 炎が舞う。フィリュテだ。


「タァッ!」


 続いて連続のパンチ。ラッヴァードの連続する一撃が、フトモモノイターを追い詰める!


「決めるぞ!」

「ああ!!」


 一瞬にして、ラッヴァードが通常のバニーフォームに戻る。


『フレイムラッヴァーニッシュ!!!!』


「「ハァァァァァ!!!!」」


 二人の飛び蹴りが炸裂し、フトモモノイターを貫いた!!!。


 そうして、フトモモノイターは変身者だけを残し、爆散するのだった。



「で、なんでお前ら付け合せばっかで肝心のそうめんないの?」

「いや、誰か持ってくるかなあって」


 20時を過ぎた頃。

 統次たちは直瀬の家に流し素麺をしに集まっていた。


「さて....どうするか.....」

「あれ?竹はないでござるか?」

「あ」


 だが、圧倒的な材料不足で流し素麺はできそうにない。


「......竹なら、そこに生えてる」

「よしあれしかない」


 竹を摘み取り竹を割る。

 スパーンと勢いよく割れた竹は、すぐに流し素麺の土台にされた。


「じゃあ麺は....」

「カップ麺ならあるぞ」

「それだ」


 それじゃないが。


 全員の突っ込みを無視して、カップ麺が麺として用意されていく。


「つゆは.....」

「醤油なら某の懐に」

「それだ」


 それだじゃないが。


「どうやって茹でる?」

「火はあるぞ」

「鍋くらい直瀬の家に....」

「全部出払ってるよ」

「......じゃあこれを使って」


 イーナが取り出したのは大きな中華鍋。


「よしそれだ」


 もはや麺を炒める気だろうか。

 そんなことはなかった。

 普通に茹で始められた。


「よしなんとかなったな」


 こんな感じで、流し素麺が始まった。


「誰だ!レモンながしたやつ!」

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