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別の世界で新たな生を望みますか?と、問われた俺の物語  作者:


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33 冬休み・冒険者編 登録!

 いよいよ、俺の休暇の日が来た!


 まずは朝からレックスを排除だ。

 サーラの王都で買った爺様への土産を持たせて、ウォード砦に向かわせる事にする。


「──と、言うわけで。土産と手紙を爺様に渡したら、お前も休暇取って好きにしていいから」

「いえ、そういう訳には。ご隠居様にお届けの後に王城へ戻って参ります」

「え?──あ、いや。俺も後から転移で砦に行くんだ。侍従長にはもう伝えてあるし」

「……そうでしたか。畏まりました」


 色々ごねられる前にと、レックスを馬車に乗せてウォード砦まで送り出した。

 もちろん侍従長に伝えたのは本当だ。

 休暇中はウォード砦で過ごす予定だって。

 俺は転移で行くから護衛もいらないってな。


 ただ。砦に行く前に冒険者になって、チューン公国でちょっとダンジョンに潜って来るだけだ。


 レックスを送り出した後、俺はようやく手に入れた魔導具リュックに荷物を詰め込んで着替えた。

 もちろん、冒険者用の衣装だ。

 フード付きのマントとブーツ(符呪効果付き)は、なかなかいいんじゃないか。常に魔力を消費するらしいけど、さほど感じない。もしかしたら魔力回復量が多い俺の場合は、全然負担にも感じないのかもしれない。

 準備が終わってから、俺はフードをしっかり被って王都に転移した。

 ちなみに行った事のある場所にしか転移できないので、王都のポータルステーション前に飛んだ。

 いよいよ冒険者ギルドで登録だ!



◇◇◇



 王都の大通りに面した場所に、冒険者ギルドがあった。赤い屋根の三階建てのけっこうデカい建物だ。

 とりあえずフードを被ったまま、俺はギルドの入り口の扉から中に入った。

 入って正面に受付らしいカウンターが見える。右手には酒場っぽい感じで丸テーブルが並んでいる。

 朝からでも丸テーブルには人がいるって事は、食事もできる場所なのかもしれないな。

 そんな事を考えて見ていたら、その丸テーブルに居る人は深緑の髪で無精ヒゲの人物だと気が付いた。

 冒険者のカイさんじゃないか。チューン公国から帰って来てたんだな。


「カイさん、久しぶり。帰ってたんだ」

「ん?」


 声を掛けたら、飯を食う手を止めたカイさんが訝しげに俺を見た。

 ああ、マントの認識阻害が仕事してるんだな。

 俺がフードを下ろせば、カイさんが目を見開いた。


「ええぇ、坊かよ!何でこんなとこに?!」

「冒険者の登録に来たんだよ」


 俺の目的を告げたら、その途端カイさんは周りを見回してから声を潜めた。


「登録って……坊、その格好まさかとは思うが、身分を誤魔化して登録する気か?」

「人聞き悪いな、平民で登録したいだけだし」

「他国ならともかく、地元では難しいぞ。そもそも冒険者登録には選別板による身元確認があるんだ」


 選別板の身元確認!

 そんなのやったら素性バレバレじゃないか!

 そうか、だから冒険者は国の移動に制限がないのか!なんてこった!


「マジかー……」


 いきなり初手で詰まってしまった。

 どうやってチューン公国に行こう?

 そんな俺を眺めながら、カイさんが苦笑いを浮かべる。


「──まあ、特別措置って手はあるんだけどな」

「ん?何それ、詳しく!」

「ギルド長預かりで身分保証の元、冒険者カードの記載を簡略するんだ。余り大きな声では言えないんだが、身分のある人間は良くやるんだ」


 お忍びで冒険者やる貴族とかか?


「つまり、平民表記とかにもできるって感じ?」

「まあ、そういう事だな。ただ、金が必要だが」


 マジかー

 俺の金はレックスが管理しているから、今は手持ちは無い!


「う、金は後で用意でもいいかな?」

「まあ、坊の身分なら問題ないがな」


 カイさんがまた苦笑いをする。

 あ、俺が王族入りした事知っているのか。

 まあ公式発表されてるから、知っててもおかしくないけど。


「そもそも、何で坊は冒険者になりたいんだ?」

「あー、チューン公国のダンジョンに行ってみたいんだよ。杖の材料が欲しいんだよね」


 嘘じゃないけど、チューン公国に入りたいのが本命とも言い難い。


「ほう、杖の材料か。確かにチューン公国にトレントの出るダンジョンが出現してたけど……それって、採取依頼を出すんじゃダメなのか?」

「え?自分で取りに行けないダンジョンなの?」

「──そうだな、坊一人じゃ入れないダンジョンだな。けど、Aランクの付き添いがいれば問題は無い」


 ニヤリと笑って自身を指さすカイさん。

 ほお、出会った頃はCランクとかだったのに、ランク上がってたんだな。

 というか、ダンジョンに付き合ってくれるって事か?


「そんじゃ、ギルド長に話を通すか。この時間ならまだ執務室に居るしな。行こうぜ、坊」


 カイさんは急いで飯を口に詰め込むと立ち上がった。それから着いてこいと促されて、俺はフードを被り直してから後に続く事に。

 受付カウンター横の階段を登って、二階の奥にある部屋がギルド長の執務室らしい。

 カイさんがその扉を叩いて、返事も聞かずに扉を開いた。ノックの意味無いだろ、それ。


「ギルド長、ちょっと話があるんだけど」

「またお前か、カイ!ノックの後に返事を聞けと何度言えば……ん?何だ、そのチビは?」


 案の定というか執務机に居たギルド長らしき人物から叱責が上がる。

 が、ギルド長?

 執務机に居たのは30前後くらいの、紅い長い髪を三つ編みにしたお姉さんだった。

 しかも、ビキニアーマーという衝撃的な出で立ちに見える!ちょっと立ってその下を、フトモモがどうなっているのか見せてくれ!

 チビ発言もそのフトモモで許せる俺がいる!


「あー。この坊のことで、特別措置を頼みたくてさ。ほら、坊。突っ立ってないで、フードを下ろせ」


 無理やりカイさんにフードを下ろされて、俺は我に返った。つ、ついフトモモが気になってしまった。

 露わになった俺の顔を見て、ギルド長は目を見開くと席から立ち上がった。

 おおー!予想通りフトモモ剥き出し!

 この世界で初めての露出っぷりじゃないか?!

 ちょっと筋肉質だが、なかなかエロいむちむちなフトモモだ!腹筋の割れ具合が気になるけど。


「ほう、新年の宴でご尊顔は拝見したな。なるほどそれで、特別措置という訳か。無作法で失礼するよ殿下、私はヴァレリウス王都支部ギルド長のヒルダ・ゼイアだ」

「あーどうも、テリュース・ウィルクス・ヴァレリウスです」


 どうやら新年の宴会に来てたのか、一目で分かったらしい。という事は貴族なのか。ドレスにそんなむちむちフトモモが隠れていたのか!

 ゼイアって確か伯爵家にそんな名前があったかも。


「──特別措置だが。一応規則なので選別板による確認の後、ご所望の表記にする事は可能だ。だが、冒険者の登録には13才からとなっている。年齢は誤魔化せないんだが……殿下は幾つだ?」

「13才になったとこだよ!」


 またこの身長のせいでチビっ子扱いか!

 しかし、俺の対面に移動したギルド長のそのフトモモが眼前に来る。

 うむ、この際チビっ子も悪くないな!

 ギルド長は、カイさんと顔を見合わせて苦笑している。


「まあ、選別板で分かる事だが。では、そちらに掛けてお待ちを」


 室内の応接セットに促されて、ソファーに座った。

 カイさんは座らずにソファーの、俺の後ろに立った。ギルド長は隣の部屋に行ったようだ。


「まあ、ああいう人だけど。ギルド長は悪い奴じゃないからな」

「フトモモは許せるから問題ない。けど、あの格好は寒くないのかな」


 まだ年明けで寒い時期なんだが、ビキニアーマーは風邪ひかないのかな。いや、フトモモは美味しいんだが。

 カイさんが微妙な顔で苦笑した。


「ああ。ギルド長のあのビキニアーマーには、冷気遮断効果の符呪が付いてるらしい。魔物素材符呪で特注のお高い装備なんだと」

「マジかー!」


 付加要素ってやつか!

 というか、ビキニアーマーに拘りでもあるのか!

 いや、フトモモが美味しい……以下略。


 それからギルド長が選別板を持って現れて、俺は選別板に魔力を流した。

 透明な板に表示されるのは相変わらずで、最後の赤文字が銀の有資格者はやっぱり日本語だ。

 

「──ほう、流石は王族という所か?年齢の割に魔力量が凄まじいな。カイより多いぞ。それに赤文字はカイと同じだな」

「え?!ちょっ、マジか?俺も見ていいか?」


 個人情報なので見ないようにしてたらしいカイさんが、思わず俺を見た。

 ていうか、赤文字がカイさんと同じって?

 え?もしかして……


「いいけど、赤文字が同じって?」


 俺の後ろから覗き込んでいたギルド長が、カイさんと入れ替わりながら苦笑した。


「カイの選別板でも、それと同じような読めない文字があったのでな」

「へー……」


 つまり、カイさんは有資格者って事か?

 髪の色からすると、マキューリアか!

 つまり、クリスティーナのお兄さん?

 なんか世界が狭く感じる瞬間だ。


「……銀の有資格者」


 俺の後ろから覗き込むカイさんが、ポツリと呟く。

 たぶん、ギルド長には聞き取れないくらいの小さな呟きだけど。俺には聞こえた。


 なるほど、日本語が読めると。

 つまりカイさんは、転生者なのか!

 あれ?もしかして転生者の赤文字は日本語だったりするのか?

 というか、何で転生者は日本人ばっかりなんだ?


「まあ、確認はこれでいいとして。後はカードの登録をするから、表記の名前を考えとくれ。本名は伏せるんだろ?」


 ギルド長にそう聞かれてちょっと考える。

 ああ、名前か。どうするかな。

 略称っぽいのでいいか。


「じゃあ。名前はテリーで、平民でよろしく」

「テリーね、分かったよ。それからこの新規カードに魔力を登録してくれるかい?」


 ギルド長が白いカードを俺に手渡す。


「魔力を流せばいい?」

「ああ、カードの色が変わるくらいでいい」


 カードの色が変わる?

 そういえば、随分前に見たカイさんのカードは黄色だったな。

 そんな事を思い出しながら、カードに魔力を流せば黄色く表面の色が変わった。


「──なるほど、やっぱり黄色になるか」

「ん?やっぱりって?」

「いや、想定内さ。それじゃ、情報登録が終わるまで待ってておくれ」


 黄色くなったカードをギルド長に戻すと、そのままギルド長は部屋から出て行った。

 部屋に残ったカイさんは、応接セットのソファーに腰を下ろした。


「んで、坊はこの後は直ぐにチューン公国に行くのか?」

「うん、そのつもりだよ」

「そっか。しかし一人で外出とか、よく城の人間は許したな。ヴァレリウスは放任なのか?護衛くらい着けるもんだと思うが」

「ああ、護衛はいらないって言ってあるし」


 城の人間には俺はウォード砦に居る事になっているし。許可は砦への転移移動だけだけど。


「それでカイさんは、クリスティーナのお兄さんでいいのかな?」


 色々突っ込まれる前に、先に封殺だ。

 カイさんはクリスティーナの名前に目を見開いた。


「へ?クリスティーナ?!……って何でその名前が!」

「俺、サーラの神学園でクリスティーナと会ってるんだよね。確か後継者問題で一番上のお兄さんが、いなくなったとか言ってたの思い出したよ」


 カイさんは、あーって感じで遠くを見た後に溜め息を吐いた。


「──俺がマキューリアを出たのはもう10年くらい前だからなぁ。あの小さかった末っ子もデカくなってるよなぁ」


 確かにクリスティーナはデカくなってると思うよ、主に胸がね。


「じゃあ、俺と会った頃ってマキューリアから出て直ぐくらい?」

「いや、2年以上は経ってたと思うが。ダンジョンがやっと出現し始めた頃だよな。それまでが大変だったんだよなぁ。食うのにも困るほど冒険者がキツいとは思わなかったし」


 確かにそんな事言ってたなぁ。

 カイさんは腹空かせて倒れそうだったし。


「まあ、俺の出自に関しては内緒で頼む。俺も冒険者登録は特別措置だからな」

「ああ、なるほどー。カイさんの登録もゼイアさんなの?」

「いや、俺の登録で世話になったのは先代のギルド長だ。ゼイアは後任でな。その引き継ぎで、前任の特別措置者は一通り確認する必要があったらしくて。その時に俺も選別板で確認されてるんだ」


 なるほど、気安そうなのは元同僚的な感じだからか。


「了解。俺も同じだし」


 まあ、これで。

 俺も城の事とか色々突っ込まれなきゃいいや。

 お互いに暗黙の了解を得た所で、ビキニアーマーのギルド長が戻って来た。改めて黄色いカードが手渡される。


「登録は終わったよ殿下。いや、今日からDランク冒険者のテリーだな。せいぜい怪我などしないでおくれよ、私の責任になるんだからね」

「ありがとうギルド長、それでお金だけど……」


 とりあえず、稼いでから払おうと算段してたんだけど。ギルド長は手を振った。


「要らないよ、殿下から金は取れないね。まあ、その代わりに殿下が王太子になった時は、せいぜい冒険者ギルドもご贔屓にして貰うけどさ」


 にっこりといい笑顔でギルド長が応えた。

 俺が王太子にって、まだサイラスが居るのにどっちがとかなんてすっ飛ばして内情を把握してないと言えないだろ。ゼイア伯爵家って何処の勢力だー?

 ひとまず金の心配がないのは助かったけど、ちょっと笑顔が引き攣る俺だった。


「あ、ありがとう?えっとDランクが最下位なの?」

「いや、最下位はFだ。けど、テリーのカードが黄色だからね。黄色カード持ちを最下位登録は流石にどうかと思ってねえ。だからって無茶されても困るが」

「最下位がF?え?色が関係してるの?」

「そうさ、鑑定の魔法を使った事は無いかい?その警戒色と同じような仕組みなのさ。今のテリーの能力ならCランクでもいいんだが、流石にまだ13才だしねぇ」


 鑑定の警戒色の意味は分かるけど、このカードの魔力登録でその色が出るって事か!

 え?じゃあ、Aランクのカイさんのカードは?

 思わずカイさんの顔を見たら、合点がいったのか懐からカードを取り出して見せてくれた。

 そのカイさんのカードは赤だった!前は黄色だったのに強くなったんだな、納得!


「Dランクは普通にダンジョンに潜るなら問題無いよ。ただ、高ランク限定のダンジョンはダメだからね。ダンジョンの規制は国によっても違うんだが、無理せずに実績を積んでおくれ」

「おおー、了解です!」


 やったぜ。これで俺も冒険者だ!

 後は冒険者ギルドとの契約書にサインして、ギルド長にお礼を言った。

 心の中では、ありがとう第二のフトモモ様!って拝んでおいた。久々にいいむちむちフトモモを見たぜ!


 それから、俺とカイさんは冒険者ギルドの建物から外に出た。


「それで、テリー。ここから国境までどうする予定なんだ?」

「国境までなら俺の転移で飛べるよ」

「マジかよ……俺も覚えよう」


 カイさんは辻馬車で国境近くまで行く気だったらしいけど、チューン公国との国境は既に行った事のある俺には転移が使える。

 カイさんを連れて、ヴァレリウスとチューン公国の国境まで飛ぶ事にした。


 国境の関所も冒険者ギルドカードを見せれば、こんな小さな子が!という驚きの顔をされながらも通して貰えた。もちろん、しっかりフードを被って認識阻害はがっつりだったけど。

 Aランク冒険者のカイさんと一緒という事もあり、詮索されるような事もなくて一安心だ。


「まずは、チューンの冒険者ギルドに寄るか。トレントの出るダンジョンの詳しい場所とか確認しないとな」

「なるほど、ギルドの場所は遠いの?」

「ここからなら、辻馬車で1時間もあれば行ける。あれだ、夏にテリーを泊めた宿の近くにギルドがあるんだ」

「ああ、その宿なら転移で飛べるよ」

「……ちょっと、マジで俺も転移覚えるわ」


 夏に会った時に色々魔法覚えたとかカイさん言ってたのに、回復魔法でいっぱいいっぱいだったのかよ。

 選別板で赤文字が出てるんだからカイさんも全属性だよな。何で魔法覚え無かったんだろ?


「便利なのに、魔法が嫌いだったとか?」

「いや、その。昔の俺は剣術バカで魔法なんて軟弱だ!……とか思ってたみたいでな。剣術だけで生きて行けると思って城を飛び出したらしい。アホかコイツって俺でも思ったけどな」


 なんだろ。他人事のように表現するのは、自分の意思じゃ無かったみたいな?


「──つまり。カイさんが城を飛び出した後に、前世の記憶が戻ったとか?」

「は?え?前世って……」

「選別板の赤文字読めたんだよね、あれ日本語だよ」

「え?」

「もしかして、読めるから言語の違いに余り頓着してないのかな?」


 まあ転生者だって分かるのは、同じ転生者ぐらいだと思うけどね。


「えーと、テリーよ。つまり、お前もそうだって事か?」

「そうかもね。ちなみに、カイさんの妹のクリスティーナもそうだよ」

「ええぇ……」


 身内に自分以外の転生者が居ると、ちょっと気まずいかもしれない?

 動揺してるっぽいカイさんだけど、俺はもう一つの目的である方も確認しないとな。


「そうそう。夏に助けて貰った時、レインって女の子が居たよね。あの娘って何処に住んでいるの?」

「え?レイン?あの娘は、チューンの冒険者ギルド長が保護者代わりのはずだけど」

「そうなの?また会えるかな?」

「ああ、最初にあの娘の面倒をみていた奴が冒険者だったんだけど、亡くなってな。それで、ギルド長が代わりに面倒見てるんだと。ギルドに行けば話は聞けると思うぞ」

「ふむ。何か色々事情がありそうだね」


 とりあえず、夏に泊まった宿まで転移で移動した。

 チューンの冒険者ギルドでダンジョンの事だけでなく、ついでにレインの事も聞けるといいけど。


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