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別の世界で新たな生を望みますか?と、問われた俺の物語  作者:


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17 予言書物

 オスカーの部屋で長々と話込んだ後、俺の部屋に戻ると中でレックスが待ち構えていた。

 侍従であるレックスなので、俺の部屋の掃除とか洗濯とかも任せてあるので合い鍵を持っている。

 故に部屋に居ても何ら不思議ではない。

 ていうか、掃除や洗濯は侍従の仕事じゃないとかツッコミは要らない!

 前は従僕だったレックスなので、そこまで本人が気にしてないし。俺、今は公爵家令息だし!


「──遅いお帰りですね、テリュース様。今までどちらへ?」


 そろそろ変声期で、低くくなり始めたレックスの声が更に低く感じた。

 なんだろう、この感じ。

 昔、同棲してた彼女が、遅く帰った俺を待ち構えてた時のあの雰囲気に似て──って、落ち着け俺。


「あー、オスカーの部屋で話込んじゃって」

「──そうですか。余り夜更かしなされるようなら、ご隠居様に報告しますよ」

「すまん、俺が悪かった!」


 ゲーム云々の話さえ無ければ、裁定の巫女の話は共有しても問題は無いんだけどな。

 ただ、どうしてそんな話が出たのかと言われたら──ギルバートさんからの話として通すか……

 裁定の巫女の件は、爺様なら調べる伝手もあるだろうし。

 なんて、色々理由を付けて考えてるのは、つまる所俺一人で考えて抱えるのが嫌だからなんだが。

 世界が消えるかも──なんて重い重過ぎる。


 そんな訳で、俺はレックスに話す事にした。

 裁定の針、襲撃と巫女の行方不明、巫女が世界に絶望すれば世界が消える事。万象の地図。

 転生者や乙女ゲーは、──オルトランで古い書物から予言書のような書物が発見され、ギルバートさんからオスカーを通じて伝えられた。

 ──事にして誤魔化した。


 ギルバートさん本人とは、手紙のやり取りだけで面識も無い俺だが、後でオスカーとでっち上げを擦り合わせる必要がある。

 そのギルバートさんは、お兄さんが王位を嗣いだ後もまだ王弟として城に残っているらしい。

 王族籍をまだ残しているのは、この件故かもな。


「予言書物。『裁定の針が時を刻み回り終えた時、世界の生きとし生けるもの全ては消え、この世界は終焉を迎える。──そして世界は、新たな世界を構築する。』ですか。──なかなか荒唐無稽な話だと感じますが。万象の地図と称するそれは、私もテリュース様と一緒に幼い頃に見てます。出鱈目とも言い難い。なにより、帝国クロウラーが絡むかもしれないとは、捨て置けませんね……」

「そうなんだ。その予言書物が本当の話なら、一刻も早く巫女を見付けたいと、そう思う。──そんな訳で、お前から爺様にも上手く報告してくれ」

「仔細は理解しました。ご隠居様に報告致します」

「うむ、任せた」


 とりあえず、爺様に投げた。



◇◇◇



 翌朝。

 ベルナール神学園の日課である礼拝を、大聖堂で終えてから教室に向かう。

 その途中でオスカーを見付けたので、小声で設定の擦り合わせをした。


「──と、いう訳で。予言書物がオルトランにあるという感じで、話を合わせてくれ」

「ほう、巧い手やな。ギルの旦那にも話は通すか。後は、オタク女にもやな。昨日一応、釘は刺したんやけど──あ、あいつ居るし、ちょっと言うとくわ」


 大聖堂から去る生徒の中に、オタク女・クリスティーナを見かけたオスカーが後を追って行った。


「──テリュース様。アレン殿下のご様子がおかしいです」


 レックスが小声で呟いて、視線を動かす。その紫の瞳が動いた方を見ると、アレンが廊下の壁に寄り掛かるようにして立っていた。

 銀髪が顔に掛かって見え難いが、その顔色は青白い気がする。


「──アレン!」

「……やあ、テリュースおはよう」


 近寄ると、アレンはその青白い顔を気怠そうに上げた。額が汗で濡れている。


「どうした?体調が悪そうだぞ」

「……うん、昨夜からちょっとね。念の為に解毒ポーションも飲んだんだが──効果は無いようだ」

「上級治癒は試されて無いのでしょうか?」

「──ああ、私は金の属性は適性が無いから、使えないんだ」

「……そうでしたか」

「『金よ、其の身に宿りし害意持つ不浄を消し去らん──浄化』」


 レックスがごちゃごちゃ言う間に、俺がアレンへ上級治癒魔法を使った。

 金の魔法陣が展開され魔法が発動する。

 一息吐くと、アレンの顔色が少し戻ってきた。


「──ありがとう、テリュース。だいぶ楽になったよ」

「ついでだ『恢復』」


 治癒魔法では原因は消せても失った体力は戻らないから、初級の回復魔法もアレンに使った。


「すまない、気遣いさせて」

「気にするな、それより原因は……」

「たぶん、ね。証拠は無いよ」

「なるほど。即効性じゃなかったのが救いか」


 少し離れて、顔色の悪いアレンの侍従が立っている。顔に出ている所がお察しだ。

 だが、次は即効性のある物でも用意されかねない。


「──アレン、空の魔石は持ってないか?」

「空か、部屋にあるよ」

「テリュース様、それなら私も部屋に幾つか所持してますので。後で私が治癒を込めてアレン殿下に届けます」

「そうか、任せる」

「助かるよ、ありがとうレックス」


 動けるようになったアレンと校舎の階段まで一緒に行ってから別れた。

 4階まである校舎の2階が1年生、3階が2年生、4階が3年生の教室になる。

 ちなみに1階は、談話室や購買部、職員室がある。

 教室に入ると、既に席に着いていたオスカーが俺に手を振ったので、その空いてる隣に座る事にした。


「オタク女には、話を合わせって言うてある」

「助かる」

「そうそう、ソレも攻略対象らしいで」


 オスカーが前方の席に座る金髪の後ろ姿を指差す。


「聖王国サーラ第一王子、正義のイザークやって」

「また二つ名が……」

「それで、アレも攻略対象。ギルの旦那の甥っ子」


 今度は別の明るい茶髪を指差した。


「オルトラン第一王子、闘魂のサルエル。これはちょっとウケるやろ?」

「………闘魂。叫びそうだな」

「ちなみに、オタク女は悪役令嬢(笑)」


 他の配役は揃っていても、肝心の主人公が不在な件は頭が痛いな。



◇◇◇



「ごきげんよう、クリスティーナですぅ。クリスって呼んでねっ。はぁ……レックス尊いぃ」

「後で、撫でるなり舐めるなりしていいから、話聞かせて」

「──ちょっと、テリュース様?」


 昼休みに、再びカフェにてクリスティーナ登場。

 見た目は美少女なのに言動はとても残念な王女だ。

 カフェの丸テーブルを囲んで俺、オスカー、クリスティーナが椅子に座る。レックスは俺の背後に立つ。


「──予言書物の有資格者が、金地火銀黒で悪役令嬢のお前が風は分かった。水のチューン公国は絡んでないのか?」

「えっとね、本来は水の公女も悪役令嬢なのよ。でも公国が、クロウラーの属国になっちゃったから学園には来てないのよね」

「ああ、学園は聖王国の、同盟国しか留学できんからやな。クロウラーとは和平交渉止まりの筈や」

「うん、そもそもゲーム……じゃなくて予言書物?の状況からもホント色々だいぶ違うのよ。特にヴァレリウス、テリュースのとこ。それに、隠しキャラのレックスね」

「──すみません、王女殿下。隠しキャラ、とは?」

「あっ、えっとね……秘密の素敵な存在?みたいな?はぁ、レックスに見つめられて問われるとか萌えるシチュだわ」

「──レックス、質問は後にしてくれ」

「はい、失礼しました」


 他の有資格者は王族、もしかして……?

 有資格者とは何を定義しているのか、俺は知らない。これは聞くとマズいのか?


「──それで、ヴァレリウスの何が違うんだ?」

「王族の数よ。予言書物では王子はテリュースだけなのよ。それなのに実際は他に2人居て、テリュースは公爵令息だし。オマケに全クリしないと現れないレックスを連れてるし」

「ほんまや、変やな。直系でないと有資格者にはならん筈や。──ん?レックスはどうゆう事なんや?」


 待て、直系でないと有資格者にはなれない?

 テリュースの父親が誰かは、俺は知らない。

 それに、レックスの黒髪は──父親は?


 ──俺の脳裏に、いつぞやの黒髪の帝国第一皇子の顔が浮かぶ。

 あの時、確かに似てると思ったんだ。


「だから、隠しキャラなんだってぇ」

「いや、隠しキャラってもな」

「──その言葉の意味は分かりませんが、確かに私は帝国の皇帝の血を引いていると教えられました」


 マジかよ?!

 レックスは表情もなく、ただ事実を述べたというような声音だった。


「なるほどな、そういう設定なんやな」


 待て設定って、現実の話だから!!


「うん、予言書物だとそうよ」

「──予言書物は、恐ろしいですね」


 信じてるよ、レックスの奴。

 ちょっと、頭痛が痛いよ俺。


「──えっと、それじゃ俺は?」

「テリュース様に関しては、私は存じておりません」

「テリュースのお父さんは、戦争の時に亡くなったグレン王子だった筈よ。今の王の双子の弟」


 王の双子の兄弟?!

 確かに、戦争で一人死んでた。それか?


「それは、予言書物の設定?」

「ちょっと違うわ、予言書物だとグレン王子は王になってて、だからテリュースは王子なの。間違いなく直系よ。それで、私クリスティーナはテリュースの婚約者だったの」

「は?」

「でもね、主人公に嫌がらせする悪役令嬢なのよ。悪役令嬢にならなくて済むように婚約なんて回避しようと思ってたら、肝心の王子が居なかったって現在」


 なんだかクリスティーナの婚約者発言に全ての思考が一瞬吹き飛んだ俺は、さっさと昼飯を食って教室に戻った。

 ちなみに、乙女ゲーのようにこんな婚約者ができなくて良かった、とか思ったのは内緒にしておこう。




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