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別の世界で新たな生を望みますか?と、問われた俺の物語  作者:


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1 銀の有資格者

初投稿です。宜しくお願いします!

いきなり主人公が死んでます。ちょっと流血注意。

 それは飲み屋街の、真夜中の路地裏。

 俺は、薄暗い道をほろ酔いで歩いていた。

 正面からフードを目深に被った男が、歩いて来るのが見える。逆光で顔は見えない。

 そして、すれ違いざまに刺された。

 声を上げる間もなく、俺はその場で倒れた。


 あー、これは死ぬなと。

 霞む目で立ち去る男の後ろ姿を見た。

 多分、あれはヤクザだ。クソっ。


 刺された腹は、内臓逝ってるらしく血が流れ続けてて、止まらない。熱かった痛みが既に鈍い。

 飲み屋街の喧騒も遠く霞んでいく中、それはやけにはっきりと頭の中に聞こえた。



《あなたの意思を確認します。このまま死にますか?それとも、別の世界で新たな生を望みますか?》


 なんじゃそら───────っ!!!!



◇◇◇



「──テリュース様の意識が戻られた!ご隠居様に報告を!」

「はい、畏まりました!」


 ぼんやりと目を開けた。

 『僕』には、見慣れた自分の部屋だ。

 周りが慌ただしく騒いでいたけど、突然流れ込んできた記憶が頭で巡っていて喋れなかった。


 『僕』は、テリュース・ウィルクス。

 まだ4才のガキんちょで、両親はいないらしい。

 お祖父さまが面倒をみてくれているらしい。


 ──らしいってのは、

 テリュースとしての記憶が、4才児の理解力のせいだ。

 そこに成人の俺の前世の意識と記憶が、滂沱の雨のように降り流れ込んできた。

 そして、統合された記憶は違和感もなく『僕』と俺が、馴染んでしまっている。

 つまり、実はちょっと良く分かってないけど。

 俺はどうやら、このテリュースとして転生してるっぽい?


「テリュースの具合はどうだ?」


 ぐるぐると回る頭でぼんやりしていた。

 近くに居た執事が、声の主であるご隠居を俺の寝ているベッドの傍へと通したのが見えた。

 ご隠居様は銀髪が部分白くなってる短髪で、歳は50過ぎぐらいな感じ。目は水色。背筋はしゃんと伸びてて、イケオジのテリュースの爺様。

 ちなみに、言語は日本語じゃない。

 けど俺が理解できてるのは、テリュースとしての記憶があるからだろう。たぶん。


「──先ほど目を覚まされましたが、未だ意識ははっきりされていないご様子です」

「……そうか。まだ4才と幼い上、魔力枯渇で倒れたのだ。──しばらくは安静で良かろう。魔力が回復すれば、次は魔力制御を教えねばならないな」

「畏まりました」


 俺の様子を見た後、爺様と執事は言葉を交わしながら部屋を出て行った。

 じんわりと眠気がきて、俺はうとうとしながらも思考を巡らせた。

 魔力枯渇──その爺様の言葉で、何故こうしてテリュースが寝ているのかを思い出した。


 テリュースが住んでいるウォード砦には、隣接する騎士団の鍛練場がある

 近付く事を禁止されているテリュースだけど、魔法の演習をどうしても見たかったようだ。

 侍女を撒いて、テリュースはこっそり覗きに行った。

 そして、魔法を発動している兵士の詠唱を真似て、呟いたテリュースはその魔法を発動してしまった。

 爆発が起きて、その後は意識が途切れた。


 あれで魔力を使い切ったという事なのだろう?

 とても残念だな。

 せっかくの異世界なのに、魔法一発で終わりの魔力とか、しょぼ過ぎだろテリュース君。

 転生チートとかなさそう。

 けど、前世の記憶と意識が戻ったのは、

 やっぱり魔法のせいなのかな?



◇◇◇



「おはようございます、テリュース様。もう起きても大丈夫なのですか?」

「おはよう、ニーナ。全然問題ないよ」


 朝起きたら、頭もすっきりしてた。

 しょぼい魔力は、回復も早いんだろう。多分。

 赤毛の侍女ニーナに心配されつつ、朝の支度を手伝って貰う。

 侍女だからたぶん貴族の子女だろう、品の良いお仕着せが似合う20過ぎくらいの娘だ。だけど、黒のお仕着せはスカートが長いのが残念無念。

 俺フトモモフェチだから。

 ただ、西洋風ファンタジーだとフトモモ出してるミニスカの遭遇率はどうなんだ?無いか。


 前世はそれなりにモテてた俺だから、前の人生ちょっと調子に乗ってたのは認める。

 え?転生モノ主人公は前世は童貞が王道?

 リア充爆発しろって?

 有名キャバ嬢に言い寄られ、喜んで寝たらそれがヤクザ幹部の情婦で、たぶん三下送られて──

 もう既に一回死んでるよ!


 閑話休題、着替えながら部屋にある鏡の姿見で、テリュース君の容姿も改めて確認。

 なんかね、銀髪を短く揃えて碧眼でガキのくせに目鼻立ちはっきりの、将来モテそうな顔なんですよ。

 いいね!

 爺様も渋くてイケオジだから、テリュース君も歳食ってもイケるだろう。

 けど、侍女とか居る時点で、テリュース君てば貴族なのでは?

 いや、両親がいない状況で、爺様が面倒みてる庶子の可能性もあるか。


「テリュース、もう起きて平気なのか?」

「はい、お祖父さま。もう元気になりました」


 食堂で爺様に挨拶したら、なんか驚かれた。


「……もう二、三日は寝込むかと思ったが。まぁ、元気なら良い。食べ終わったら、後で私の部屋に来なさい。お前の魔力検査と選別をする」

「魔力検査……ですか?」

「ああ、本来なら6才になったら、教会で選別の儀を受けるものだが、お前は……」


 俺の顔を見て言い淀む爺様。俺は……何でしょね?


「……いや、また魔力枯渇で倒れることのないよう、年齢的には早いが魔力制御を教えようと思う」


 爺様、思い切り目を逸らした。

 なんかやっぱ、テリュース君てば訳あり疑惑。



◇◇◇



 ここは国境近くの街ファンリンで、それ故に騎士団の駐屯地があるようだ。テリュース君の住んでる建物は、その駐屯地に隣接するウォード砦だ。

 テリュース君の爺様が何者なのかイマイチよく分からないけど、この砦ではご隠居様と呼ばれて敬われている。

 その砦の三階の奥が爺様の部屋だ。ちなみに、テリュース君の部屋は二階にある。


「お祖父さま、テリュースです」

「入りなさい」


 俺は爺様の部屋の、重厚な重い扉を叩いて中に入った。

 テリュース君が部屋の中に入るのは、初めてではないはずなんだが、広い部屋の壁一面の書棚に圧倒される。奥にも扉があるけど、たぶんそっちは寝室だろう。

 書棚の対面に応接セットがあって、そのソファーに促されて腰を下ろした。

 テーブルの上には、いかにもソレっぽい水晶玉が鎮座している。


「テリュース、そのクリスタルに利き手で触れなさい」

「はい!」


 ちょっとワクワクしながら取り出したのは、ちんまい右手。目の前の水晶玉に、そっとその手を乗せた。


 水晶玉の中から光が溢れて明滅する。

 赤・青・緑・黄茶・黒・金

 最後に、瞬く銀色に水晶玉が染まった。


 おおぉ、なんだコレ!とか心で叫んでる俺の対面で、一瞬息を呑んだ爺様は、光を凝視した後──

 深い溜め息をはいた。


「──テリュース、心せよ。この結果は、誰にも漏らしてはならない」

「え?これは、悪い結果なんですか?」

「いいや、そうではない。──だが、この結果が知られれば、お前の命を狙う者が現れるやもしれぬ」


 テリュース君の、訳あり疑惑が確定した!

 爺様の複雑そうな声に、思わず俺は唾を飲み込み喉を鳴らした。

 え?また殺されるとか嫌過ぎ!


「……七色の光りが見えたであろう?それはテリュース、お前が全属性を持つという意味だ。全属性持ちは貴重なのだ。故に悪しき心を持つ者に知られれば、常に狙われると心せよ」

「……はい」


 潜めた声で爺様は俺に念を押すと、水晶玉をテーブルの下に置いてあったらしい金属製に見える少し大きめの箱の中に仕舞った。

 そして同じ箱の中から、中央が透明な板状で、縁取りとしっかりした台座の付いた物を取り出した。


「これは特殊な魔導具で、選別板という。使用者の魔力から内面を数値化して描写するものだ。魔法の鑑定よりも詳細に読み取れる。この台座にある板の部分に、お前の魔力を流してみろ」


 え?魔法の鑑定?そんなのもあるのか?

 てかこれ、スタンド付きタブレットみたいな?

 んで、魔力を流す?


「お祖父さま、魔力を流すとは?」

「む……そうか、まだ魔力制御を教えておらんな。だが、一度は発動させたのだ、その感覚は残っておろう。体内で魔力を動かしてみろ」


 え、魔力自体が良く分からないんだけど……

 魔法を発動させた時の感覚?

 

「確か……『炎よ、噴け高まれ…』」


 うろ覚えの兵士が唱えた詠唱を呟いたら、俺の眼前に深紅の魔方陣が薄らと浮かび上がった。

 あ、なんか体の中で熱が動くのが分かるぞ。

 これかな?


「このバカ者!『静寂』!」


 喜んだのも束の間、血相を変えた爺様の銀の魔方陣が一瞬で発動して、俺の形成中の深紅の魔方陣は掻き消されてしまった。


「私の部屋を黒焦げにする気か、このバカ者!しかも、今の詠唱は上級クラスの……まさか、テリュースお前、それを発動して魔力枯渇になったのか?!」

「…………………(たぶん?)」


 あれ?

 パクパクと口は動くけど、声は出ない。

 たぶん爺様のさっきの魔法のせいだ。

 てゆ~か、爺様。詠唱してなかったよね?


「上級クラスを発動できるとなると、並の4才児よりも魔力は遙かに多いな。そして回復も早い……。ともかく、魔力制御は急務だ。テリュースよ、今後は無闇に魔法を発動させるな」

「…………(はい)」


 あれ、魔力多いのか?でも一発だしな。


「──また私の部屋でやらかせば、魔力封じの首輪を付けるからな」

「………………………?!(ナニソレ怖い?!)」

「ともかく、喋らずとも魔力は流せる。テリュース、その魔導具に魔力を流してみろ」

「………?!(えっ?!)」


 爺様かなりご立腹なのか、魔法を解いてくれそうもない。

 確かに可燃物(大量の書物)がある爺様の部屋で、炎の魔法はアカンよね。分かるけどさ~

 とりあえず、また怒られる前にと魔導具に魔力を流してみた。透明な板の部分に、文字らしき羅列が浮かび上がってくる。


 ───けど。ダメだ読めない。

 テリュース君、まだ文字はお勉強始めたばかりのお子様だからー。単語登録されてないのよ、脳みそに!!

 ちょっと寂しく爺様を見上げてみる。


「どうした?…………ああ、まだ文字は読めないのか。どれ、私に見せなさい」


 コクコクと肯く俺の背後に回った爺様が、画面を指差しながら説明を始めた。


「一番上は名前だな。テリュース・ウィルクス、これは読めるだろう?」

「…………(コクコク)」

「次が性別、男だ。これが年齢4才4ヶ月。そして主属性は銀、私と同じだ。我がウィルクス家の家系属性でもある。父親の属性を継ぐ者が多い。ただ、例外も当然いる。その下が現在の魔力値だ、420とある。平均の4才児なら、貴族でも100あれば良い方だからな。──やはり上級魔法の発動が可能な魔力量か。しかし、魔力は成長と共に高くなるが、幼い頃に多くとも後が伸びないという事もある。過信は禁物だ。………む?何だこれは、初めて見るな。何処の言語だ?」


 爺様の指が画面の下の方を指す。

 そこには他の白い文字とは違う、赤い文字が浮かんでいる。

 しかも、これは俺でも読める。


 『銀の有資格者』

 これだけ、日本語だ。


「このような事例は初めてだな、何か意味がありそうだ。控えておくか………。」


 爺様はぶつぶつと呟きながら、紙に文字を書いてる。読める人居るのかね。

 でも、俺以外にもこの世界に転生している人間は居そうな、そんな気はした。



《あなたの意思を確認します。このまま死にますか?それとも、別の世界で新たな生を望みますか?》

 

 何でもいい!望む!望んでやる!

 死にたくねぇ!!


 ギリギリの土壇場で、生を望んだ俺みたいに。



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