家族Ⅱ
「遅いぞ、桃谷」
「ごめん、上手な言い訳が思いつかなくて」
「いつも一緒にいる友達が蜂だと苦労するんだな」
他人事みたくいう雅哉に美羽は肩を強めに叩いた。雅哉はすぐにごめんと言って叩かれたところをさすっている。
私達、四人は誰もいない空き教室で集合した。とりあえず現時点で人間だとわかっている四人で元の世界に戻す方法を考えることにした。
「ねえ、さっき聞こえたんだけどさあの城に住んでる女王様に子供が生まれたって」
「子供?まるで人間みたいな言い方やな。」
聖奈ははるから聞いた話を思い出した。確か、姫様が寝返りを打ったと言っていた。この表現は本来人間に使われるはずだ。なぜ蜂の世界でその表現を使ったのか引っかかっていた。女王様が人の形をしているのならばそこから生まれたその姫様と呼ばれる者もまた人なのか?
「周りと同じだよ。見た目は俺たちと一緒でも中身が違う。人だけど人じゃない」
蒼汰は私たちの疑問にそう答えた。
「人やけど人じゃないっておかしい話よな。あん時の先生みたいに噛まれたら、俺らもああなるんやもんな」
口にすることで一気に恐怖が増す。雰囲気がなんとなく重くなったので聖奈は昨日聞けなかったことを聞いてみた。
「そういえば聞きたかったんだけど、みんなの家族ってどんな感じなの?」
「私のとこは離れて暮らしてるんだけど昨日電話で連絡とってみたんだよね。でも多分…」
少し俯いた様子で言った彼女を見てすぐに分かった。美羽の家族は皆、人でなくなったのだろうと。雅哉はそんな美羽の背中に手をまわした。そんな二人を見て素敵な関係性だなと聖奈は思った。
「俺は兄弟もおらんし、両親は離婚してそれぞれ再婚したから長らく連絡なんか取ってへん。やから正直どうなってるかはわからん」
雅哉は淡々とそう告げた。
(普段の様子からは想像できないな。山本君も色々あったんだろうな)
「熊野君は?」
聖奈が最後に聞いた。蒼汰は一瞬顔をこわばらせた。日頃から人の顔を気にして過ごしている聖奈はその僅かな変化にすぐ気づいた。蒼汰は間を開けまいとすぐに口を開く。
「俺も両親とは連絡とってないからわからない」
「そっかー。無事だと良いのにね。それで聖奈ちゃんは?」
「私はお母さんと二人なんだけど、この世界になってから一回も見てなくて。それで心配だったからみんながどうなってるか聞きたかったんだよね」
「そうなんや、ごめんな。あんまり役に立つこと言われへんくて」
「いや、謝らないでよ。こんな状況だから仕方のないことだし」
雰囲気を明るくしようとしたのにまた元の重たい空気に戻ってしまった。




