闘い、勝つのみ
この作戦会議は、ふたつの顔を持っている。ロスト・エンジェルスの独立を懸けた闘いであると同時に、ふたりにとって共通の〝大切なヒト〟を救う狙いもあるのだ。
「賢者の石か……。〝特別遊撃隊〟を組むのが、一番の近道だと思うよ。ただ、今度はMIH学園の子たちが使えないと思ったほうが良いし、そもそも使っちゃいけない。あのときに比べれば、幾分か時間に余裕はあるからね」
「あぁ。超少人数──分隊レベルで良いな。私を含めて4人から5人……、スターリング証券から兵隊を出す。ポールは確定として、八千代という〝クノイチ〟もいる。オマエがボコったリヒトってアホと、空間移動担当のマーベリック。これで5人か。ちょうど良い」
ルーシは腕を組み、問題の運び方を考え込む。
「しかし、そうするとスターリング証券の機能が停止するな」
「まぁ、証券会社が機能不全になったら、厭戦の気配がやってくるね。ここまで戦意が高まってる中、出鼻をくじかれるわけにもいかない」
「うーむ。誰かを国内に残すか」誰を離脱させるかで、命運が決まるだろう。「そうだねェ……残すのはマーベリックだな。そつなく代理社長を行えるし、アイツのテレポートはポールの空間移動術式で代用できる」
「ちなみに、どんな潜入作戦を考えてるの? 賢者の石はパリーナが抑えてるはず。そしてパリーナ政府は、沿岸に大量の魔術師を張り付けてる。ポールモールさんのテレポートも、ブロッキングされるかもしれない」
「アーク、欺瞞作戦って知っているか?」
「フェイクの情報を流して、なんなら囮の部隊を用意するヤツでしょ? ロスト・エンジェルスに、囮を用意する余裕はないよ」
「まぁ、民間人には無理だしな。作戦の性質的に、捕虜になってもサエズラないであろうヤツが好ましい。うーむ、情報だけで勝てるかね。いや、内通者がどれくらい有能かの試金石にはなるか。思い切りギャンブルになるが、それくらいしないと勝利は掴めねェ」
最初から無茶を承知なのは、実は珍しい気がする。ルーシのような臆病者が、こんな風に無茶な作戦を組むことは、つまるところ今の困窮具合そのものだ。
「それに、遊撃隊は欺瞞作戦の囮にも使える。パリーナに上陸し、現地の共産主義者どもやスパイと協力すれば、連中は〝背後からの一撃〟に怯えるだろう。アーク、これからは情報だ。情報を制したヤツが、時代を制するのさ」
そうだ。まだこの世界で遊びきれていないのに、卒業を思い浮かべるわけにいかない。
*
大統領・クールに権力集中している国家が、ロスト・エンジェルスだ。しかし、クールの支持率暴落の所為で、下院は敵対政党〝自由労働党〟が三分の二を占めている。そのため、そもそも下院で宣戦布告が可決されるとも思えない。労働党も馬鹿ではないので、現実的に勝てる戦争だと考えていないであろう。労働党からすれば、これはよくあるブラフであった。戦争を煽り立て、戦時経済へ移行すれば、ロスト・エンジェルスは一時的に団結する。この手法は、割と由緒正しき保守党の戦法なのだ。
だが、宣戦布告するかしないか、というのはこの際どうだって良い。それはどのみち、相手から侵略してくると見込まれているからだった。
『──番組の途中ですが、大統領による緊急会見が行われるため、一時映像が切り替わります』
そしてついに、そのときがやってきた。クール・レイノルズ大統領は、その高価なスーツと恰幅の良さとは不釣り合いなほど、疲れた表情で、緩やかに話す。後に〝成功に目がくらんだ〟と評される、外交的失敗の例を告げる役割。
それでも、繁栄のためには避けて通れない道もある。ロスト・エンジェルスが行うべきは、闘い、勝つこと。それだけだ。
第十二幕、お終いです。第十三幕『諸戦争を終わらせる戦争へ──情報を制する者が欧州を制す』をお楽しみに!!
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