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センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?【コミカライズ版2巻8/28発売!】  作者: 二上圭@じたこよ発売中
非遵法性享楽主義者ノ人生論

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04

「そういやガミ、なんで今回帰ったりしたんだ」


 タマは空のグラスを差し出してくる。


 童貞といじられるのが嫌で、話をすり替えようとしたのだ。今日の本題はこちらなので、大人しく乗ってやることにした。


「日本に帰ってきたのと一緒よ」


「面白いことないかなってか? あんなクソみたいな田舎に、そんなものあるわけないだろ」


「そうでもないわ。案外面白いことはあったわよ」


 グラスを受け取りながら私は答えた。


 私たちの地元は、車を走らせれば延々と田園が続くわけでもなければ、お隣さんがキロ単位先にいるわけではない。駅前の商店街も賑わっているし、大型商業施設も沢山ある。


 東京を引っ張りだせば確かに田舎だろうが、そもそもが比べるほうがおかしいのだ。だからクソみたいな田舎、と呼んだのは、郷里へと抱くタマの想いといったところか。


「例えば高橋なんだけど」


「どこの高橋だ?」


 ビールを注いでいる途中にも関わらず、ついタマへ目を向けてしまった。


 その顔は軽口を叩いたニヤっとしたものではなく、本当に心当たりに至ってない。その顔に、嘘でしょ、と声を出しそうになった。


「……高橋って言ったら、高校のときの担任に決まってるでしょ」


「ああ、あいつか。いたな、あんなクソ教師も」


 私たちの母校はクラス替えがないゆえに、担任も三年間同じである。だというのにも関わらず、その名だけではピンと来るものがなかったようだ。あれほどのことをしておいて、よくここまで綺麗に忘れられるものである。


 タマがクソ教師ということもあって、あれは悪い意味で教師らしい教師であった。体罰こそないが、偉そうでうざくて理不尽。嫌われる教師あるあるを体現していた存在だ。あれを好きになる物好きなんて、私の知る限りはいなかった。


 ただし、クソ教師がクソ教師である納得の理由もある。


 なにせ母校は、市内最高峰の底辺校。高校受験を見据えなかった底辺の受け皿。


 こんな底辺高校でクラスを持つのだ。それに対抗できるクソ教師でなければ、あの高校ではやっていけないのだろう。


 まさにクソ教師VSクソ生徒。


 高橋に目をつけられていないタマであったが、クラス一丸となって連帯責任を負わされることが多々あったので、それだけでクソ教師と呼ぶに値するのだ。連帯責任さえなければ、タマもクソ教師と呼ぶことはなかったかもしれない。


 ただし、ある事件をキッカケに高橋は、タマにとってなにがあっても許せない存在へとなったのだ。


 持ち帰ってきた土産話。


「あのクソ教師がどうしたんだ?」


「首を吊ったらしいわ」


 ビールと共に私は差し出した。それを口に付けようとしたタマは、面を食らったようにその手を止める。


 そんなに長い時間ではない。手を動かし喉を三度ほど鳴らすとグラスを置いた。


 感情を読もうにも、顔は俯いており覗けない。


「ガミ」


 私はグラスに口をつけ、


「祝電ってどうやって送るんだ?」


「ぶっ!」


 勢いよく噴き出した。


「そうかそうか、くたばってたのかあのクソ教師!」


 タマはケラケラと笑声をあげた。


 今ので気管に入り、むせている私を嘲笑っているのではない。なにせあの思い出のときと同じ笑い声なのだから。


 だから次に出るだろう言葉も、すぐにわかった。


「ざまぁ見やがれ!」


 タマはかつてのように叫んだのだ。


 景気づけとばかりにグラスを一気に空にすると、それを差し出してきた。


「なるほど。だからあのときのように、寿を司ったわけか」


「タマにとってはめでたい席でしょ?」


「流石ガミ。ナイス采配だ」


 イクラをぱくりと口にしたタマは、店内を陽気な音で満たした。


 私たちは改めて乾杯をする。正確にはタマに求められたのだ。


「それで、なんであのクソ教師、首なんて吊ったんだ?」


「勿論、タマのせいよ」


「そんなわかりきったことじゃねぇよ。後日談だよ、後日談」


「教師を続けられなくなり、妻と子には逃げられ、親戚一同からも責めたてられて、なにもかもを失った。そんな先にある、よくある終わり方らしいわ」


「あのクソ教師に相応しい末路だな。その分、あのとき巻き込まれた子供は可哀想だったな」


「その子供にいわれなき罪を被せておいてよく言うわね。やってもいないことを責め立てられるのって、どういう気持ちだったのかしら」


「父親の大好きな連帯責任だ。恨むならクソ親を恨め」


「クソ親といえば、あの両親も揃って吊ったらしいわ」


「どの両親だよ」


「斎藤のよ」


「マジか、あのクソ親共もくたばってたのか」


 タマは口に運んだそれで喉を鳴らして、愉快そうにまた叫ぶのだ。


「ざまぁ見やがれ!」


「日夜誹謗中傷の雨あられ。すぐに仕事が立ち行かなくなったらしいわね」


「客商売の自営業には、児童虐待のレッテルは致命的だもんな」


「ま、それもタマが貼ったものだけれどね。息子に死なれた先で、そんなレッテルで糾弾される親って、どんな気持ちなのかしら」


「ま、少なくとも無責任な責任を押し付けられた、俺の気持ちはわかってもらえたんじゃないか?」


「その心は?」


「ふざけんじゃねぇクソが、くたばりやがれ! ――って、もう奴らはくたばってたか」


 タマはあの二人の顔を思い出したのか、憤るでもなく、呆れるでもなく、おかしそうに大笑いをした。


 人の死を報告した場で、タマは不謹慎極まりない発言を繰り返す。


 しかもただの人の死ではない。あれは間違いなくタマ自身の行い、意図して引き起こしたもの。直接手こそくだしてないが、タマが殺したのも同じである。それをこうして笑っているのだから、タマは間違いなくろくでなしだ。


 けれどもあの大人たちを可哀想だとは思わない。それは私が悪人だからではなく、タマの言葉こそが正しいと賛同しているからだ。


『ならあいつを追い込んだのは、この程度のことで逃げ場がない。死ぬしかないと信じ込ませた親と社会だ』


 自らの不出来不手際を棚に上げ、無責任に責任を押し付ける。それを自覚なくすることが、どれだけタチの悪いことなのか。


 今のタマをろくでもない大人と評するなら、あの者たちはタチの悪い大人であった。なにせ耳障りのいいだけの綺麗事を振りかざせば、子供に責任転嫁をしても許されると信じているのだから。


 あれはそんなタチの悪い大人に、正面から立ち向かったのではない。何十倍にも責任を膨らませ、押し付け返しただけだ。


 だからあの大人たちの、もう一つ悪かったことをあげるとしたら、無責任に責任を押し付けようとした相手。


「カアッー、クソ共の不幸で酒が美味い! 自分で作ったものならなおさらだな。ざまぁ見やがれ!」


 保身に走ることに関しては、他の追随を許さないその様を、存分に発揮されたというだけ。結果、多くの無関係な者の足を引っ張り、人生を狂わしこうして笑っているのだから、タマは本当にろくでなしである。

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
推しの百合営業系Vチューバーの間に男が挟まったばかりに、脳破壊された主人公が子供時代にタイムリープした話。
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― 新着の感想 ―
[一言] 虎の尾を踏んじゃったんやなって
[良い点] ろクズでなしだなぁ…… その時の過去編がめちゃくちゃ読みたい
[一言] やっぱり数百人って学校一つ崩壊させるような何かか
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