↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛シミュレーションゲームのお邪魔虫キャラに転生した俺。王子に婚約破棄した悪役令嬢を押しつけられる  作者: 雲乃琳雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/17

1、遊び人の俺

「キース様待って~、どこですの~?」


 首都の街中。俺は壁の陰に張り付いてやり過ごした。今俺を探しているのは、遊びで付き合っていた、ウェリントン伯爵夫人だ。ぽっちゃりの品のいいご婦人だ。

 お互い遊びのはずが、なぜか相手が本気になる。やれやれ——。


 俺は、キース・グランテ。子爵家の三男坊。そして、恋愛シミュレーションゲームのお邪魔虫キャラでもある。黄色い瞳に、明るい茶色の長い髪を黄色いリボンで結んでいる。茶色のジャケットにクリーム色のベストがゲーム衣装だ。


 ゲームでは、キースが攻略対象に話しかけると、主人公の好感度が下がってしまうのだ。主人公だけでキースに会えば、恋愛のアドバイスをもらえるお助けキャラでもある。


 俺がキースに転生したと気がついたのは、十五歳のとき。剣の稽古をしている最中だった。何の前触れもなく、急に前世の記憶がよみがえった。


 前世の俺は二十八歳、サラリーマン。彼女いない歴に終止符を打つために、恋愛シミュレーションゲームをすることにした。選んだのは当時、人気があった全年齢向けのこのゲームだ。


 俺はゲームを完全攻略して、恋愛スキルを身に付けた。陰キャだった俺が、会社の独身女性と話すことができた。気になる子ができて、もっとお近付きになろうと思った矢先、後ろから来た自転車に轢(ひ)かれて死んでしまった。


 なぜ分かったかというと、死んだ俺が上から、倒れた自分と横に転がった自転車を見ていたからだ。


 記憶が戻る前の俺は、上の兄二人を手本にして、真面目に勉強と鍛錬に打ち込んでいた。しかし、キースだと分かった途端、俺はゲームのキースとして生きることを選択した。手に持った練習用の木の剣をポイっと捨てて、訓練場を去った。


 それから遊び歩き、女性とも話をした。自分でも驚くほど、どこからともなく言葉が浮かび、呼吸をするように女性が喜ぶ言葉を口にした。


 女性たちはすぐにキースの虜になった。さすがキース! これがキースのチートなのか? いや、チートって言ったら、俺TUEEE系の能力か。まあ、キースの設定と才能だろうな。


 俺は大人になると、婚約者がいたり、結婚して相手がいる女性を選んでは、秘密の恋人になった。遊びだから、本気になられても困るからだ。

 それでも、相手は本気になった。でも、俺には分かる。彼女たちは俺が好きなのではなく、キースの言葉に酔っているのだ……。


 俺は相手の男たちからも追いかけられ、すっかり遊び人のレッテルを貼られてしまった。トラブルは日常茶飯事だ。



「こんなんじゃ、命がいくつあっても足りないな。ゲームのキースはどうやってしのいでいたんだ……?」


 ゲームのキースはいつも涼しい顔をしている。——そうか! 俺は気がついた。キースの場合は設定だけで、実際に恋愛の場面はない。ゲームのキースは遊んでいないかもしれない……! 俺の勘違いか?


 ふぅ~、……もうこんなことは止めよう。俺も二十三歳でいい年だし、今世こそ相手を見つけて結婚しよう! よし! 俺は真面目になると決めた。



 屋敷に帰ると、早速父さんに呼び出された。うわあぁ……。今度は何だ? 慰謝料か、賠償金か……、それとも俺の首か……。


 何かあるたびに父さんが解決金を支払った。前世も今世も家族仲はさほど悪くないので、恵まれている。

 前世の家族に対する記憶は朧気で、家族に対する気持ちはもう感じないが、前世の親には親孝行できなかったから、これからは今世の親には親孝行しよう……。


 俺は父さんの執務室に入った。感傷的になっていたので、父さんをウルウルした目で見つめた。


「なんだその気持ち悪い目は……」

「……なんでもないです」


 父さんには俺の気持ちは伝わらなかった。


「それで、なんの用?」

「ふ~」


 父さんは目を瞑って、机の上で両手を握ってため息をついた。俺をじっと見ると真剣な口調で言った。


「王子からお前に命令が下った」

「王子ぃ~?」


 俺は子爵令息だから、階級的にも下。王子との接点はもちろんない。舞踏会で遠目に見たことがあるぐらいで、挨拶もしたことがない。


「王子が婚約破棄した、マレルタ・ゼレツ公爵令嬢とお前が婚約するようにとの仰せだ」


 え? ……なんで?


「……どういうこと?」

「知らないよ。好き勝手しているお前に貴族から苦情が来たんだろ」


 真面目にしようと思った矢先に……。ゲームでは、王子が主人公でプレイヤーだ。マレルタ・ゼレツ公爵令嬢もゲームのキャラで攻略対象の一人だ。

 婚約破棄はゲームイベントでもある。マレルタは嫉妬深くて悪役令嬢キャラだ。人気がないといけないので、スタイル抜群の絶世の美女という設定だ。


「婚約破棄したのは初めて聞きました」

「城に出入りしている聖女をいじめたことで、王子が婚約破棄したそうだ」


 なるほど。イベント通りだ。聖女も攻略対象の一人だ。光魔法が使える平民で、王子のお気に入りだから城に自由に出入りしている。それをマレルタがおもしろく思わないので、小言を言うという展開だ。


 ただ、ゲームの王子はいい子ちゃんキャラなのだが、この世界の王子はすこぶる性格が悪くて評判も悪い。そして、友達もいない。金髪に緑の瞳で、見た目はものすごくいいので、平民の女子にだけは人気がある。


 俺もゲームのキースとは違うから、王子もゲームとは違うのだろう。しかし、俺に悪役令嬢を厄介払いするとは、どういうことだ?

 でも、まあ、相手を探そうとしていたからちょうどいいか。


「俺はいいですよ」

「……どうした。なんか変なものでも食べたのか? それとも何か隠しているのか?」


 父さんの信用ゼロ。隠していると言えば前世の記憶はそうだけど、それは頭がおかしくなったと思われるから言えない。


「俺も真面目になろうと思いまして……」

「そうか……。お前がそうでも、公爵は反対だろうな」


 父さんは、俺の真面目になるという言葉を信用せずに軽く流した。——そうだな。俺は腕を組んで考えた。うちは子爵だから、格差的に婚約は到底無理な話だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。