000 Prologue 7月某日、1840
「03より全隊、後方約200に小学生くらいの男の子を発見。停止願う」
撤退中の自衛隊の後方を、ひとりの男の子が助けを求める泣き声を上げながら、必死に追いかけて来る。
『05より各機、方位010よりアンノウン、急速に近づく!警戒を!』
無線の声がパイロットの耳に届き、彼はその方向へ視線を移す。
「ああ、やばい・・・」
左後方の上空から巨大な蜻蛉のような怪物が急降下してくる。
進行方向に、男の子。狙われている。
鋼鉄の人型兵器は身を翻し、右手のライフルを怪物に向け、火を放つ。
銃弾が光の直線を描き、不気味に光る赤く巨大な目に命中した。
しかし——
弾丸は白い結晶状の何かに弾かれ、あらぬ方向へ消える。
何度も発砲するが、跳弾してまるで効果がない。
「くそっ!」
人型兵器が男の子を庇うように、巨大な盾を前面に構え怪物の前に立ち塞がる。
『おい!やめろ!』
誰かの絶叫する声が轟く。
次の瞬間、怪物は人型兵器に突進し、襲い掛かった。
激しい衝突音と共に、構えた盾が左腕ごと吹き飛ぶ。
怪物の鋭い爪が鋼鉄の巨体へ食い込む。
怪物は巨体を掴んだまま空へと舞い上がり、中空へと放り出す。
そして・・・くるりと一回転して人型兵器を地面に向かって叩きつけた。
激しい音、飛び散る鉄の破片。
人型兵器は、叩きつけられた反動で何度も無軌道に跳ねた後、動かなくなった。
その近くに、駆け付けた装甲車両と、驚いて腰を抜かした男の子を庇って抱きしめる女性自衛官の姿があった。
怪物は嘲笑うようにくるりと回転し、悠然と飛び去って行った。
『笹木ぃ!』
誰かの悲痛な叫びだけが、戦場に残った。
次章より本編「遭遇編」へ進みます。




