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 安心した脱力感に気合を入れ直して階段を降りました。リセルにに手を差し伸べて立ち上がらせます。


「ここまでドジだと洒落にならんな。もう少し淑女の勉強をしたらどうだ?」


 眉を寄せ腰を擦りながらダンティル様が立ち上がりました。


「それにしても軽いな。少しは姉上に鍛えてもらって筋肉をつけろ」


 エリアウス様も首をポキポキさせて立ち上がります。エリアウス様のお姉様はリセルのお兄様とご結婚なされているのです。


「えへへ。二人ともありがとう!」


「リセル。怪我はない?」


「ベティ。ありがとう。大丈夫よ。下に素晴らしいクッションがあったから」


「「おいっ!」」


 四人で燥ぐように笑い合いました。


 右からはマジラウル様とカルラが、左からはフロレント様とゲルダが、心配そうに急ぎ足でやってくるのが見えます。


「ほぉら。カルラとゲルダも心配しているわ」


 リセルが困ったという顔をいたします。


「マジラウルに少しは説教してもらえ」


 ダンティル様は少しだけ意地悪く笑っていました。


「それより、フロレントに説法してもらったらどうだ」


 エリアウス様も意地悪が嬉しそうですわ。


「べぇ」


 天真爛漫なリセルは二人に向かって舌をチラリと出します。とても可愛らしいのですが、淑女としては減点ですわ。わたくしはクスクスと笑いながらリセルの腕を『ピチリ』と叩きました。


 四人がどうしたどうしたと聞き、エリアウス様がリセルを誂いながら説明いたします。リセルは口を尖らせながら弁解しているようです。


 わたくしとダンティル様はその様子をそっと見ておりました。


「ベティ」


 ダンティル様が甘く声をかけてきます。最近のダンティル様はわたくしの心臓に悪いのです。


「な…んでございますか……」


 わたくしの右頬を左手で包みます。


「やっと『ダン』って呼んでくれたね。すごく嬉しいよ」


「あ、あれはっ! 突発的な事情ですわっ!」


「でも、君は見えない俺を頼ってくれた」


 階段の上にいたわたくしからはダンティル様は見えなかったのです。

 でも、よくよく考えれば、リセルは『主人公は大丈夫』だと言っておりました。ダンティル様は走らずとも間に合うところにいらっしゃったのかもしれません。


 わたくしはダンティル様の左手を押しやり、後ろを向いて顔を覆い隠しました。


 ダンティル様の嬉しそうな笑いが聞こえます。そして、ダンティル様はわたくしの腰に手を回しました。


「そのままでは危ないから、俺がエスコートしよう」


「えっ? みなさんは?」


 後ろを振り返るとすでに誰もおらず、わたくしとダンティル様は二人きりになっておりました。


「気の利く友人たちでありがたいね。せっかくだから少し遠回りして女子寮へ送ろう」


 ダンティル様は左手に二人分の鞄を持ち、右手はわたくしの左手をしっかりと握っております。


「はい」


 わたくしたちは夕暮れの中庭に向かいました。


〰️ 〰️ 〰️


 

 こうして卒業式を迎えたわたくしたちですが、卒業パーティーでリセルがわたくしのお父様に一目惚れし、わたくしの義母になるとは驚愕でしたがとても喜ばしいことなのです。


 リセルは転生者としての記憶は卒業までだそうなので、それ以降のわたくしのお父様との逢瀬は完全にリセル自身のことのようです。


 リセルの容姿のお好みはわたくしですものね。お父様に似たお子が生まれたら溺愛なさるでしょうね。リセルに似ていたらお父様が溺愛なさるわね。うふふ。


 今のわたくしの夢はリセルと一緒に子育てすることですの。この子はきっとダンに似ていますわ。


〜 fin 〜

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これぞ百合?! てぇてぇですわぁ〜
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