表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月が照らす数多の誓い  作者: わおわお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/2

ユースの誓い

一部を除き、ほぼ全ての大陸を神々が統治している現代

神の庇護下にある生物は5歳になると能力を授かれるとちう祝福が存在する

それは貧富の格差、種族間の隔てという問題を全く意に介さない、神の庇護下に置かれた全ての生物に与えられる平等だ

小さな村でまたひとりの少女が新たに神からの祝福を

授かろうとしていた

1本の大樹の麓ではしゃぐ二人の子供がいた

周りには2つの家を除いて、畑や比較的小さな家屋ばかりが広がる小さな村だ


「あー!早く明日にならないかな!」

「いいなー!俺も早く5歳になりたい!」

明日誕生日を迎える少女ルナは5歳になるということで浮かれていた


人生での分岐点

5歳に貰える能力で今後の人生が大きく左右される

これまで迫害されていた者

これまで持て囃されていた者


良くも悪くも、全ての者がこの5歳でこれまで見てきた景色と、これから見るであろう景色を一変させる事ができるのだ


「どんな能力が欲しいとかって決めてるの?」

「え〜、 秘密かな〜」

ルナより歳が一つ下の少年ユースがそう問いかけると、ルナは嬉しそうな表情を見せて秘匿した


「ユース〜ご飯よ〜」

ユースの母親が大樹のもとまでユースを迎えに来た


「ルナも良かったら一緒にご飯どう? お母さんいいかな?」

ユースの両親とルナの両親は仲が良くどちらかの家で一緒にご飯を食べるということはよくある事だ


「もちろん良いわよ〜、 後でルナちゃんのママにも伝えとくわね〜」

「じゃあ、 お言葉に甘えてお邪魔させて頂きます!」

明日は誕生日という事もあり、家庭内でお祝い事をするだろうと思い、今日はユースの家に甘えることにした


「ルナちゃんももう5歳か〜、 ユースの事小さい頃から面倒見てくれてありがとうね〜」

「ちょっとお母さん!やめてよ!」

ユースはふと数年前の記憶を思い出すと、 恥ずかしさで母の言葉を遮るように怒った


「任せてください! ユースの事は弟のように思ってるのでこれからも見たいので面倒見ます!」

「ついこないだだって、 虫に怯えてたくせに!」

「私に虫を近づけようとして転んで泣いてたのは、 どこの誰だったかな〜?」

二人の間でいつもの何気ない言いふらし合いが始まった


「言うなよ!」

「ユースが先に言ったんでしょう!?」

2人の言い合いがヒートアップしそうになった時

ユースの母が落ち着かせるように話題を逸らす


「まぁまぁ落ち着いて〜、 そういえばもう欲しい能力は決まってるの〜?」

「え、 はい! 1番貰えたら嬉しいのは戦える能力が欲しいと思ってます」

ルナは欲しい能力について語り始めた


「家族や村のみんなに何かあった時、 守れる存在でありたいと思って」

「あら〜、 立派ね〜、 ユースにも見習って欲しいわ」

「ちぇっ! 俺が聞いた時には教えてくれなかったくせに!」

ユースは拗ねるように文句を垂れた


「辺りが暗くなってきたし、 そろそろ帰った方が良いかしらね、 ユース送ってあげなさい」

「はいはい、 分かったよ!」

「はい、 は1回でしょ!」

注意する母から逃げるようにユースはルナの手を握って玄関の重たい扉をギィと勢いよく開け、 飛び出した


「お母さんの言う事はちゃんと聞かなきゃダメでしょ?」

「うるさい! ルナは俺の姉ちゃんかよ!」

「そうだけど?」

当たり前の事をなんで聞いてくるんだという表情を見せてルナは答えた


「違うわ!」

捏造するなと言わんばかりの速いツッコミを入れる


この世界では神々の存在によって

小さい頃から青年と同等の知性を持つ子供も珍しくはなかった、 その典型例がルナやユースであった


「明日、 ルナはお家で時間無いと思うし、 また明後日どんな能力貰えたか教えてくれよな!」

「気が向いたらね〜?」

ニヤニヤしながら煽るようにルナは返事を返した


翌朝、 ユースがいつものように大樹の麓に居ると

立ち並ぶ村の家屋とはうって変わって、

1件だけ立派な家の前に馬車が止まっていた


一生の中でも特に大きな誕生日という事もあり、 (王都でお祝いするのかな)と心の中でユースは疑問を抱いた


ルナが村を離れてから数日後...

またルナの家の前に馬車が止まっていた


いつものように大樹の麓にいたユースの視界にその光景が目に入り、 一目散にルナの家への駆け出した


ユースがルナの家の前に着くと大声で叫んだ


「ルナー! 遊ぼー!」

すると2階のカーテンがシャッと開き

そこに居るルナと目が合った


(浮かない顔してたような)

と、 ユースは心配そうに思った


ルナが降りてきて、 玄関の扉を開けると

いつもの笑顔でユースの方へと走ってきて

手を掴み大樹の麓へと向かった


ユースはさっそく、 誕生日に貰えたであろう能力について好奇心を隠せないような表情で詮索を始める


「ルナ!どんな能力貰えたんだ!?」

「めっちゃ強い能力授かったんだ〜!」

自慢するようにドヤ顔でユースの質問に答えた


「いいなー! もしかして剣聖とか!? 賢者とか!?」

強い能力と聞き、 数多(あまた)ある能力の中でも他を超越し、 戦闘に特化したおとぎ話でしか聞かないような能力を口にしていく


「さすがにそこまでは行かないわよ」

自慢した事をほんの少しばかり後悔する持ち上げ方に呆れながら首を横に振った


「どういう物か教えてくれよー!」

「ユースが5歳になって、 能力を貰えたら一緒のタイミングで言おう?」

「分かった! 俺の強過ぎる能力にびっくりして嫉妬なんかするなよー?」

1年後に約束をする形で詮索から逃げ切ったルナは

強い能力を貰える事が確定しているかのようなユースの言動に呆れたような表情をしたあと、 一瞬暗い表情をした


約束をした日から1ヶ月後

辺りはすっかり暗くなり

いつものように二人がユースの家でご飯を食べた後、 ルナを家に送っている時のこと


「なぁルナ、 ライトウムシ見に行かないか?」

「こんな夜遅くにー?」

ユースの提案にルナは怪訝な顔で言葉を返した


「だって夜じゃないと、 綺麗なの見れないだろ?」

「それはそうだけどさー、 もう、 ちょっとだけだからね」

渋々首を縦に振ったルナはユースと一緒に、

大樹の麓へ歩き始めた


大樹の麓へ着くと、そこには

黄色や紫色のお尻を光らせながら

草木に止まる大量のライトウムシがいた


「いつ見ても綺麗!」

「そうだな、 これをいつでも見る事ができたらなぁ」

ユースは淡い願望を漏らす


「そういえばなんで急にライトウムシを見ようって誘ってきたの?」

「だってルナ、 5歳の誕生日から暗い顔をする事が増えたから、 いつもの笑顔に戻って欲しくて」

驚いた表情でルナはユースを見た


「あちゃー、 顔に出てたかぁ」

「あの日、 何かあったのか?」

ユースとルナは座り込み、 少しの間下を向いた後

ルナが口を開いた


「私ね、 授かっちゃいけない能力を授かっちゃったの」

「授かっちゃいけない能力って?」

「具体的に言うとあんたは優しいから、 どうにかしたい気持ちが溢れて色んな人へ相談するでしょ? だから言えない」

ユースは図星を突かれたように、 何も言えなかった


「あの日から、 家族以外の私を見る目が変わったんだ」

どこか遠い目をしながらルナは今まで溜めた物を口にしていく


「私の前では何も言わなかった家族も、 この前たまたま私の事について話してるのを聞いちゃったんだ」

ユースは静かにルナの話を真剣に聞いている


「私生まれてきちゃダメだったのかな...なんでなんだろ...お勉強とお稽古もお父さんやお母さんがやりなさいと言ってきた事はなんだってやってきたのに...」

ルナの家は貴族の家系で、 権力争いで周りに敵が多い父は、 ルナと妻を誰の目にも止まらない小さな村で暮らさせたが、 いつか人前に出す事があるかもしれないと様々な教育・習い事はさせていた


「こんなのあんまりだよ...」

ルナの足元に大粒の水滴がいくつも滴り落ちた


神の庇護下にある全ての種族に与えられる能力

それはこれからの人生を必ずしも得てして、

良い方向へ運んでくれるのではない


中には5歳になんてなりたくなかった、

と思う者も少なくは無い


運命とは時に非情な物を押し付けてくるのだ


話を聞いていたユースはスッと勢いよく立ちあがった

「この世界の全てのやつが、 ルナの事を嫌ったとしても、 俺だけはルナの味方でいるよ」


「これから先その事で、 酷い目に会いそうになることもあると思う、 その時は俺が絶対にルナのことを守るから! 誓って君を1人にしない! だから泣かないで...」

座りこみ涙を流すルナに立ち上がるように手を差し伸べる


「ありがとう...ユース...」

ユースの手を掴み立ちがると、 ユースの胸を借り

静かに泣いた、 ユースはぎこちない手つきでルナの背中をさすった


十分後...

ルナは泣き止み、 目をこすった後、 満月を見ると

周りがどれだけ暗くても、 負けない明るさで夜が明けるまで光り続ける、 そんな人間になろう、と

心の中で静かに決心した


「もう大丈夫か?」

「うん! ありがとう! それで〜?さっきの私を守ってくれるって言うのは本当に出来るの〜?

いつも私に守ってもらってばっかりのくせに〜?」

ユースのさっきの誓いを煽るかのように

言葉を並べるが、 表情はとても気持ち良さそうに笑っていた


「今日からだよ! 今では父さんに稽古つけてもらったりしてるんだから、 少し前までの俺とは思わないでくれよな!」

ユースは立てた誓いを有言実行する為に、 安心してくれと言わんばかりに父との稽古話を口にした


「そろそろ帰るか」

「そうね、 今日はありがとう...かっこよかった」

ルナの手を握り引っ張りながら歩くユースの手と背中はいつもより暖かく、 そして大きいように感じた


2人がいざ大樹の麓から下っていこうとした瞬間

とてつもない地響きがおきた


ルナは咄嗟に身を低くし頭を手で覆うようにし

ユースは屈んでいるルナの上から自分の身をかがめて同じく手で頭を被った


地響きが収まり

なんだったんだと辺りを見渡すふたり

ユースがあんな大きな地響きを受けても傾きさえしない大樹に驚嘆していると、

ルナが声を漏らした


「ね、 ねぇ、 あ...れ何」

「!!! なんだ...あれ何で...月が赫く......」


さきほどまで、 当たり前のように辺り1面の暗闇を静かに照らしていた月が...人の血と大差ない程に赫く染まっていた


家を出てからずっと吹いていなかった風が吹いた

その風は涼しさを全く感じず、かと言って温風というほどでもなかった

それはまるで、 不吉の前触れ

気持ち悪いほどに温度を感じないのに

全身の毛が逆立った


直後、 不気味な雄叫びのような声が

村と反対方向に広がる森から小さく聞こえた











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ