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スノーローズ~転生した精霊の愛し子は唯一と何度でも巡り合う~  作者: ありや


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冬の花 11

*たくさんある作品の中から見つけていただいて、お読みいただきありがとうございます*

 私は未だトワ様の腕の中である。うむ。私はやっぱりぬいぐるみなのだろう。そんな気分になるくらいには、トワ様に抱き込まれて、ぎゅうぎゅうされている。

というか…猫が威嚇してるみたいになってるよ、トワ様。もうちょっと落ち着こうか。と、私は思うんだけどトワ様には伝わらない。ええ、私ぬいぐるみなんで喋れないんですぅ。だってぇ、口元トワ様の腕で抑えられちゃってるしぃ~。……私の体が小さいせいかも。うん、まぁいいんだけども!

 鼻はさすがに抑えられてないから、呼吸に問題ないしぃ。なんかちょっとぉ…自由が利かないせいでイライラしてきてるかもぉ。やっぱり私はぬいぐるみじゃなかったわ。仕方ないから、トワ様の腕を手でペシペシと叩いてみる。もちろん痛くない可愛い感じで。

でも、気付かない。しょうがないなぁと思いながら、もう少し強く叩いてみる。まだダメらしい。しょうがないなぁ、で今度はベシベシと叩いてみる。ちょっと自分の手が痛い。私ひ弱な伯爵令嬢なので。

 私が手が痛いなぁなんて思って、叩いてないほうの手で掌を撫でてたら、トワ様が私の方を見た。やっとかよ、とか思うのは多分あやめさん。


「どうしたの?」

「んんっ! んー!」

「…あ。ごめんごめん。口元が塞がってたね」


 ぷはぁと口を開けて空気を吸い込んだ。うむ、やっとぬいぐるみ脱出。


「トワ様、いつまで私はトワ様に抱っこされていればいいんですか?」

「……あー、別にアイリスの人生このままでいいと思うけど、アイリスは嫌なんだよね?」

「はい。というか、トワ様に抱っこされてる人生って……。私の余命ずっとはさすがに困ります」

「…そう、だね。多分僕が抱っこし続ければ、死なずに済むとは思うけど…」

「でも、私もしたいことがいっぱいありますから!」

「ごめん。でも、あの人が君のことを狙ってる…から」


 シュンと肩を落としたトワ様。私に対して漏らした本音だと思うけど、ずっと私がトワ様に抱っこされていればいいという、もう本当にぬいぐるみ化を推奨するみたいなそれ、私は絶対に嫌ですが? と遠回しに伝えた結果がそれだった。

そして、カナ様。精霊王の妃。どうやらトワ様とカナ様の間には何か事情があるようで、私はそこに触れるつもりも立ち入るつもりもない。厄介事としか思えないので。ただ…すでに巻き込まれてる気がしないでもないんだけど。…ふぅ、溜息出ちゃうよね。

 そして、あの人と呼ばれたカナ様はとってもキラキラしいお顔で、満面の笑みを湛えている。既にカナ様のその御様子が尋常ではないっぽい。え? どういうこと?


「もう、トワったら。私が貴方の母親だからって照れなくてもいいのよ? アイリスちゃんの可愛らしさは、精霊王も絶対に気に入るもの。貴方だけが特別なわけじゃないわ」

「…だから! アイリスは僕の妃にしてもいいかなって思えた相手だけど、実際に接してみたらそうじゃなくて、妹みたいな感じなんだよ。そんな大事な子を親だからって、他の精霊に簡単に加護を与えさせたくなかったの!」

「えー? 精霊の加護なんてバードキスみたいなものでしょ。大丈夫よ、ノーカウントよ、精霊なんだもの」

「いや…それは、そうだけど。でもアイリスは前世の記憶がある子だって分かってるんでしょ? だったら、その辺りの配慮は必要では?」


 ああ、また精霊様お二人の会話が始まった。私は自分がネタにされてるのは分かってても、もう聞く気がない。ハッキリ言う。話を聞くつもりがない。だから、耳を塞ぐ代わりに現実逃避的に他の事を考え始めた。

(そう言えば精霊草、品種改良とか出来るかな? 八重咲のクリスマスローズがあったけど、あれもこちらの世界で見てみたいなぁ)

 なんだか重要そうな話をしてる気もするけど、私は知らなーい! 知らないったら知らない! 知ったら、なんだか負けみたいな気がするし、トワ様の事情とか知らないほうが安全な気もするしー!

というわけで、精霊様お二人のお話は全く聞かなかったのだった。


「ねぇ、アイリス。僕のお姫様。ちょっ! 話聞いてる?」


 自分をまだまだ抱えこんでいるトワ様を全力でスルーしていた時に、唐突に声を掛けられた。仕方ないなぁと思いながら、トワ様の顔を見上げる。私、まだ幼いので。

トワ様はそんな私にホッとしたのか、小さく息を吐いてから、にこりと笑いかけた。


「トワ様、どうしたました?」

「あー。これ話を聞いてなかったでしょ。とりあえず話し合いの結果を伝えるよ…」

「…話し合い。それで?」

「あの人の加護は、避けられない話だったって分かったんだよ。もう加護は与えられちゃったわけだけど…」

「えーっと、カナ様からも加護を、ということですか?」

「そう」

「お二人の精霊様から加護…」

「うん。本当ならカナ様の祝福があれば、アイリスの寿命がなんとか平均的に出来るかもしれないって…カナ様が五月蠅く言うから、それが妥協点だったんだけどさ。

あの人調子に乗ってアイリスに加護を与えたから、精霊王の助けもあるかもしれないって。そこはほぼほぼ可能性はないと思っておくべきだけどさ」

「えーっと、はい、分かりました」


 そっか、私の命の期限が予想よりも延びる可能性があるんだ、という気軽な感想しかなかった。トワ様が私が十七歳までしか生きられないという未来を見たというのだから、それがカナ様に祝福された今、その期限が延びるらしいというのなら、加護をもらったのは悪い話ではないと思う。うん、悪くないと思う。

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