冬の花 5
*たくさんある作品の中から見つけていただいて、お読みいただきありがとうございます*
私が精霊草を鉢植えで育て始めて、一月程経った頃。季節はすっかり夏から秋になっていた。
その間にも順調に…というか、ジェイド殿下とは友達として親しく…なっているんじゃないかなぁ、な感じにお互いに楽しく時間を過ごせるような関係にはなっていた。うん、やっぱり同い年だと思うと恋愛感情は絶対無理だわ、とあやめさんの記憶のせいでガッツリとイケオジスキーな性癖が出来上がっております。えっへん。
まぁ…いつかはジェイド殿下とは結婚てことになるんだし、遠い未来に期待しておきます。まぁ…ジェイド殿下は所謂イケメンなんで遠い未来はきっと有望。イケオジ要素あると思うんだ…。私もおばさんになってるわけだけど。まぁ…お母様そっくりな私なので、努力を怠らなければ…おばさん臭くはならないかなぁ。まぁ別におばさん臭くなっても全然いいんだけど。
なーんてことを考えているのは、目の前のこの人のせいだろう。ジェイド殿下のお兄様でアレクシス王太子殿下のせい。
「アイリス嬢って本当可愛いよね。シトリンが自慢するの本当に分かるよ。でも、未来の義妹になるのかと思うと嬉しいんだよ。ジェイドが多分抱え込んで会わせてくれない気がするけど…それもまぁ、何とかできるだろうし、問題にならないだろうし」
「あ…はい。ありがとうござい、ます?」
「ふふ、本当可愛いなぁ。こんなに可愛い妹がいたら、嫁になんて出せないなぁ。僕ならね」
別の意味で口説かれてるなぁって思う。王太子殿下には婚約者で想い人のカリガ皇国の第二皇女殿下がいらっしゃる。だから私なんて全く目に入ってないし、ジェイド殿下の婚約者っていう立場になったわけだから、本当口説かれてるわけじゃないのは分かってるんだけど、まだ身内にすらなってないのにすっかり殿下にとっては王族の一人扱いになってる。
いや、正直王太子殿下のお気持ちはある意味ありがたいのかもだけど、実際には非常に重たいです。というか…考えたくないです。
「兄上、そろそろ僕達のお茶会の邪魔をするのをやめていただきませんか? わざとですよね。アイリスに会えないからって突撃しにきましたよね?」
「ん? やだなぁ、アイリス嬢に会いたいって思ってたのは事実だけど、突撃したわけじゃないよ? 母上が二人のお茶会があるって教えてくださったんだし」
「…犯人は母上でしたか」
「あははは! 本当ジェイドも可愛いよねぇ。二人共最高だな。可愛いと可愛いが並んでて、すっごくお似合いだ」
「兄上! ぼ、僕は男なので可愛いとか言われても嬉しくありません!」
「それは残念だな。でも、私にとってジェイドはいつまで経っても可愛い弟だからさ。そこは諦めてね。…っとそろそろ私も戻らないと怒られるかな。シトリンは侍従でも側近でもなんでもないのに、私の側にいることが多いからね。きっとアイリス嬢のことで文句を言われそうだ。二人共邪魔してごめんね。じゃあ、これで失礼するよ」
「はいはい。兄上、もう来ないでくださいね」
「あははは。約束できないなぁ、二人を見るの楽しいから。じゃあね」
「兄上!」
笑い声を響かせながら、去って行く王太子殿下。その背中を追うようにシトリンお兄様が歩いていくのが見えた。本当、シトリンお兄様近くにいらっしゃったのね。なんて思っていたら、ジェイド殿下が私の手を握ってきた。どうしたのかとジェイド殿下に顔を向けると、少し拗ねたような顔を見せている。
「どうされましたか?」
「兄上ばかり見なくていいから」
「…え? シトリンお兄様を見てはいけないのですか?」
「え!? あ、ちがっ」
突然顔を真っ赤に染め上げて、慌てた様子で私の手を握っていた手も、空いていた手もあたふたと振っている。何か行き違いでもあったかな? と思いながら、「んー?」って考えて、全然わからなくて、ジェイド殿下を見た。
「…兄上じゃない、なら…いいんだ」
「………あ!」
やっと把握出来た! なーんだ王太子殿下のことを言ってたのね。私はてっきりシトリンお兄様かと思ってしまった。あれ? 王太子殿下のことを言ったって、どういうこと? あやめさんが何か背後で言ってる、気がするんだけど…でも、ぼやいてる感じ? 私には分からないことみたいなので、考えるのをやめたのだった。
(少しはジェイド殿下のことも考えてあげて)
なんて言うあやめさんの言葉が聞こえることもなく。
今日の殿下とのお茶会は、王城で行われたもの。だから王太子殿下が突然にやって来たという状況。そうでなければ、早々邪魔するようなことをする人は…いない。うん、精霊様も来たことがないし、そうのはず。
…なんて思っていた頃もありました。現在絶賛王妃殿下に絡まれ中です。ええ、本当。お母様がいらっしゃればきっとこんなことには…よよよ(涙)。
「アイリスちゃんは、本当に可愛いわぁ。将来は私の義娘になるのね、嬉しいわ」
王妃殿下の語尾には見えないけど、言葉にはされていないけれど、(♡)って付いてる気がするのは気のせいだろうか? 遠い目になりながらそんなことを思う私。
そうして気付けば、ジェイド殿下が非常にむくれた様子でこちらを見ていた。何故かって? 私が王妃殿下のすぐ隣に座らされているからなんだろうな、と予想。まぁ、二人でのお茶会なら殿下とは向い合せだけど、妃殿下がご一緒なら、きっと普通はジェイド殿下と私が横並びのはずよね…。
そうして私は王妃殿下に猫可愛がりされて、精神的にグッタリしそうになりながら、この日の王城でのお茶会を終えたんだけど…これで終わるわけないよねー。次は陛下が現れたからジェイド殿下の御機嫌が非常に悪くなっていったわけで…。えーっとこれは、殿下が私に御両親の愛情を奪われた的な感じの事を思ってらっしゃる? などと思ったのだけど。また背後であやめさんが何か言ってる気がして、声を聞こうとするんだけど聞こえない。うーん、こういう時あやめさんと私自身の記憶が今は同期しているのにも関わらず、あやめさんが別人格のように思えるのは…やっぱり別の一人の人間として生きていたからだろうか。
それはともかく。妃殿下同様に陛下の隣でやっぱり猫可愛がりされている。どう考えても、親バカ丸出しな感じの陛下に、私もちょっと引いてはいた。いくら陛下がイケオジでも。
さすがに態度には出してはいない。気付けばお父様みたいに頭を撫でられたり、私がお茶を飲んだ後やお菓子を口にした後に、陛下が私の口元をハンカチで拭うなんてことをされるから、周囲にいる侍女や侍従、それに護衛の騎士とか皆さんガン見してますよ。
「なんかもう居た堪れないんですけども!」と、内心大声で叫んでたりする私。私、そんなことされるほどの幼女ではないはずですわー! とも叫んでたりする。
でもその前にジェイド殿下が陛下に声を掛けた。おかげで私のお世話を陛下は一旦やめたのだった。
ジェイド殿下に「え? あなたは神ですか?」と思ったのは内緒だ。
「父上! いくらアイリスが可愛いからと幼子ではないのですから、そのようなことはお止めください!!」
(ジェイド殿下! 神? あなた神だったの!?)
「おや? 前回のお茶会では妃が同じようなことをしていたと聞いたぞ。儂とてこれくらいのささやかな世話くらいはしても問題なかろう?」
(いえ、妃殿下はさすがに私の口を拭うなんてされてなかったんですけれど)
「そうではありません! アイリスは僕の婚約者です。だから、世話をと言うのならそれは僕の役目です!」
あ、違った。神じゃなかった。ジェイド殿下が斜め上の援護射撃をしただけで、私にとっては全然嬉しくない展開だった。
確かに子供ですよー、アイリスの年齢は陛下から見ればまだまだ充分小さな子供ですよー。だけど、小さいけどレディーですからね! いくら婚約者だって言っても、同い年の男子に口を拭いてもらうとか有り得ないから! どんな羞恥プレイだ! と内心ではかなりムカムカしていた。絶対に口にもしないし、態度にも出さないけど!
「仕方ないな、確かにアイリス嬢はジェイドの婚約者だな。いくら未来の義娘とは言えジェイドには義理の父親が手を出すのはさすがに嫌…だな」
何か明後日の方向で陛下が納得されている。うん、ちょっとホッとする展開になりそう…な、え? ちょっと待ってください。陛下? 何をされてますか? ええええ!? ソファに座ってる私をひょいっと抱き上げて、ジェイド殿下の真横、腕が触れあうくらいの近さに移動させた。
私は一瞬理解が及ばなくて、アワアワしそうになった。でも、ジェイド殿下が私の頭を撫でたことで、ちょっとクールダウン出来た。でも、そうじゃない。そうじゃないよー! この後何が待ってるか、それを理解しちゃったからー!
(うわーん! 誰か助けて―!)
という私の心の叫びを誰も聞いてはくれなかった。
少しだけ補足です
アイリスがジェイドから何をされたかは、きっと想像通りで陛下にされたようなことを一通りされます
で、満足したジェイドがアイリスをずーっと撫でてました




