先物取引
「そんじゃ、つぎは『ショウケンジュツ』をタメしてみるかな、
あぶないかもしれないから、ちょっとハナれていろよ、テースト」
モーブスは、そうボクに告げると、
ポケットから出した、もう一本の方のコピーナイフを鞘から抜いて、
右手に刃を下向きに握り込んでから、立木の方へと構えた。
「うん、少し離れて見てるよ、
いきなり全力で切り付けると、手首とかを痛めたり、
ナイフの刃が折れたりして危ないかも知れないから、
最初の内は程々の力でね、モーブス」
「おう!わかった。」
モーブスは、ボクに、そう返事を返すと、
少し軽めと見える動作で、立木の横をすり抜ける様にして、
逆手に握ったナイフで、木の幹を切り付けた。
「どんな感じかな・・・おお!木の幹にクッキリと切り傷が刻まれて居るね、
体の方は、どこか痛めたりしなかった?」
ボクが確認の為に、木の幹を見てみると、
モーブスが切り付けたと見える部分に、
割と深めの傷が確認できたので、
感嘆の声を上げてから、そう尋ねた。
「おう!ぜんぜんイタいとこはナイぜ!
スキルのオカゲで、どんなふうにカマえてから、
キリつければイイとかがワカるんだ。
それから、カタい木をキッたのに、
ヤワらかいモノをキッたみたいに、ぜんぜんテゴタエがなかったぜ!」
「へ~、スキルを使うと、
そんな補正が入るのか、そりゃ凄いね、
まだ子供のモーブスで、そんな効果があるんじゃ、
体が成長して大人になったら、もっと凄い効果が出るんだろうね」
「おう!なんたって、オレはボウケンシャになるんだからな、
スキルをセイチョウさせて、ビックなオトコになってやるぜ!」
モーブスは、齢5歳にして、
そんなノーキンなセリフを、のたまわりながらポーズを取った。
「うん、モーブスの魔法やスキルは、
割と冒険者向きの物だから、練習して上手く使える様になったら、
その夢が現実になるかも知れないね」
聞き上手のデキる男のボクは、
モーブスの言う事を否定する事無く、
当り障りのない無難なセリフを、モーブスへと送ってあげた。
「おう!マカせとけ!
それからテースト、このコピーのナイフなんだけどさ、
父ちゃんからモラったナイフは、
なくさないようにウチにオイとくようにして、
ふだんモチあるいたり、レンシュウしたりするように、
オレがモラっといてもいいか?」
「うん、別に良いよ、
今んところ、他にコピーする物の予定は無いし、
スキルが成長すれば、コピー出来る数も増えて来るみたいだしね、
モーブスのスキルを伸ばすのに使ってくれよ」
ボクは、将来がソコソコに有望そうなモーブスに恩を売って置き、
大きく返して貰う為の先行投資をして置く事とした。
「おう!サンキューな、テースト
あとは、おまえの『アイテム・ウェアハウス』とかいうスキルを、
しらべてみるだけだな」
「うん、ボク的には、
一番使える有用なレア・スキルじゃないかって睨んでいるから、
確かめるのが楽しみだよ」