番外編 細長ちい竜王はハーフ子竜が気になる。
番外編の電波が来ました。
よろしくお願いします。
嘘だ、オレは大人の雌竜が好きなんだ~。
「アリア、もっと食べなきゃダメだよ。」
長い水竜体をもつ地竜の子竜が
育児袋から顔を出してオレを見てる。
「アリア、丸ちい竜が好きにゃの。」
アリアがぷいと横をむいて、育児袋に潜った。
この間見たときより、可愛くなってる。
不味い、雄竜の本能が抱き込みたいと叫んでる。
「トルード様、アリアが落ち着かないので向こうに行っててください。」
子守り竜のたしか…イアソンが言った。
イアソンめー、雄竜のくせにオレの伴侶をよくも育児袋にー。
いや、オレは大人の雌竜が好きなんだ~。
「なんだ、トルード、来ていたのか?」
雄竜の本能丸だしの地竜王クロルリードが
伴侶の結愛ちゃんを抱き込んでやって来た。
「アリアちゃんに会いに来たのですか?」
結愛ちゃんがクロルリードの腕の中から聞いた。
く、オレだっていつか、あのチビを…。
どうしたいんだ?
オレは変態か?
「結愛おばちゃん、アリア、長ちいのいやなの、丸々ちくなりゅたいの。」
アリアが育児袋から
顔を出した。
アリア、オレの事嫌いなのか~?
もう、この世に居たくないー。
オレはたしかに竜体が風竜だから、水竜以上にシャープな長い竜体だ。
長いのいやか?っておい。
わー、オレやばすぎる。
こんなことぐらいでよー。
「竜果草いっぱい食べればなれるの?」
アリアが可愛く小首を曲げた。
可愛い、文句なく可愛い、なんでも、オレが叶えてやる。
ま、不味すぎるぞ、オレ。
「やっと、幼児竜になったんだから、きちんと食べるんだよ、アリア。」
イアソンがアリアのくちもとに竜果草を押し付けるとアリアがもぐもぐ食べはじめた。
うらやましすぎる。
あーんだと…イアソン、抹殺してやろうか?
…おい、オレ、変過ぎるだろう?
「アリアちゃん、ちっちゃくて可愛いの。」
結愛ちゃんがクロルリードに言った。
奴は結愛ちゃんの耳たぶをアマガミしている。
「じゃ、もう一人作ろうか…結愛。」
クロルリードが結愛ちゃんに囁いた。
「もう、クロさんったら。」
結愛ちゃんが恥ずかしそうに言った。
まったく、伴侶のいる雄竜ときたら理性がないのと同じだな。
甘い…甘すぎる…。
オレは思わず腹をさすった。
胸やけしそうだ。
二人はアマアマしく向こうに行った。
まったく、ラブラブ夫婦め。
「…細長ちいのお腹しゅいたの?」
アリアが育児袋から顔をだした。
可愛い…ダメだ…オレは…。
アリアはまた、育児袋に潜った。
もう一度、顔を出した時口に竜果草のパンをくわえてオレの方へ差し出した。
わかってる…子竜は手足がまだ弱いから…口にくわえることが多いって…。
ダメだ…限界だ…。
オレは、アリアの口の竜果草パンをそのまま食べ…口づけ…し損ねた。
「アリア、菌がうつるから、大人の竜にお口から食べさせちゃいけないよ。」
イアソンがアリアの口からパンを取り上げてオレの口に押し込んだ。
こいつ…子守り竜なのか?
「アリアは細長ちいのがきらいなんですよね。」
イアソンがニコニコ言った。
「丸ちくなりゅたいの。」
アリアがイアソンを見上げて言った。
「僕は丸ちいですよ。」
地竜のイアソンが言った。
「イアソンおにいちゃまは丸ちくてうらやまちいの。」
アリアが言った。
「僕が大事にそだててあげます。」
イアソンが嬉しそうにアリアを抱きあげた。
ダメだ、その子竜はオレの伴侶だ。
「アリアを離せ…このエセ子守り竜!」
オレは威嚇した。
「…トルード様は綺麗な大人の雌竜さんたちと遊んでいればいいんですよ。」
イアソンが笑った。
「オレの伴侶だ!離しやがれ!」
オレは風の術を放とうとした。
「このバカ!自分の伴侶に怪我させる気か!」
クロルリードにどつかれた。
「オレの伴侶だ!」
オレは頭の痛みを忘れて叫んだ。
「わかってる、イアソンは普通の子守り竜じゃない。」
クロルリードが言った。
やっぱり、アリアの求愛者のなのか?
消し去ってやる!
「イアソンさんはアリアちゃんの叔父さんなの。」
結愛ちゃんがクロルリードの後から来て言った。
…叔父さん?
「ええ、可愛い姪をお盛んだと噂の風竜王、トルード様の伴侶にするわけにいきませんから。」
イアソンが言った。
…自業自得かよ!
「細長ちいの頭いたちいの?」
気が付くとアリアがオレの頭をちっちゃい手で撫でてた。
「アリア、細長ちいのは大丈夫だから戻っておいで。」
イアソンが言った。
「アリア、撫でるの…痛そうなの。」
アリアがさらに頭を撫でた。
「アリア。」
オレはアリアを抱きしめた。
不味い…もう離せる自信がねぇ…。
…離す気もねぇが。
「トルード様、アリアはまだ、子竜です、返して貰います。」
イアソンが言った。
「…イアソン、それは雄竜の生殺しだ…トルード、これを。」
クロルリードがそっとなにかを渡した。
エプロン…オレは育児用のエプロンなんて付けた事ねぇぞ。
「アリアはいりゅの。」
アリアがキラキラした目で言った。
オレはいそいそとエプロンをかけてアリアを入れた。
「トルード…よく似合ってるぞ。」
クロルリードが笑いながら言った。
「トルード様、アリアはまだ、子竜です、なにかしたら容赦しません。」
イアソンが言った。
「………も、もちろんする気はない。」
オレは育児袋で可愛くオレを見上げるアリアから目を離せず言った。
「…竜王様、僕、しばらく…二十年か三十年ばっかり風竜の里に行ってきますね。」
イアソンがため息を付きながら言った。
「ああ、行ってこい…トルードも伴侶が出来た以上、他の雌竜に目移りはしないと思うが。」
クロルリードが言った。
「だからこそです、アリアを叔父として護らないといけませんから。」
イアソンが言った。
ちょっと待て…この雄竜常にオレとアリアの邪魔をする気か?
「細長ちいの、アリア寝るの。」
アリアはくるんと丸まって寝た。
何て…無防備なんだ…ああ、触りたい。
「まあ、アリアが成長するまで頑張れ。」
クロルリードが憐れんだ目で言った。
…おい、オレをどんだけ獣だと…。
まあ、これだけ可愛いと…。
いや、まだ、幼児竜に手を出すわけにいかないぜ。
がんばれ、オレの理性。
よんでいただきありがとうございました。




