「新年あけましておめでとうございます。今年も・・・・・・って、これって私じゃなくで作者さんのセリフですよねぇ!?」by鈴蘭
新年あけましておめでとうございます。かなり遅い新年のあいさつとなってしまいましたね。
前回の更新から一年と三ヶ月くらいですか。本当に遅くなってしまいました。本来なら去年中には……とそんないいわけはいらないですよね。
本当に遅くなってしまってすみませんでしたぁぁぁぁ!
と言うわけで、これからも『高天ヶ原学園十三組』をよろしくお願いします。それでは最新話をお楽しみください。
1
「珍客とは、まさにこのことね」
深夜1時頃。
3人を抱えた九頭龍は学園を走り抜け、目的地である裏山のどこかにある理事長棟に到着していた。
九頭龍達の目に前には棟と呼ぶより館と呼んだ方が正しいような建物が建っており、その入り口には女子高生ほどの年齢の女の子がメイド数人を従えて立っていた。
そんな彼女の視界の中には血まみれの高校生を3人担いだ幼女が一人立っている。
どちらかと言えば後者の方が異常で非常識な光景であることは間違いない。そしてこの状況を目にしても表情一つ変えず、
「血まみれで意識を失っているうちの生徒を担いだ幼女って、マジウケる! マジないわ、何それ! あんた達が居てそれって、あーははははは!」
「うるせぇ」
むしろ大笑いを始めたこの少女自体も異常だということが今ここで判明した。
普通の人であれば卒倒するか、すぐに救急車などを呼ぶという対応をするであろう。しかし笑い始めた彼女は、彼らの状況を把握しているかのようだがそれでも笑い続けている。
そんな彼女に九頭龍は苛立ち始める。
「笑ってる暇なんてねぇえんだよ! 早く相棒を、こいつらを直してやってくれ!」
「ふぅん……」
少女は九頭龍、一真、千歳、隆浩の順に目を配ったあと、再び九頭龍に目を向ける。
その表情は先ほどまで大笑いしていた人物と同一人物とは思えないほど、別の者に変わっていた。
「急いで入りなさい。そろそろ限界みたいだからね。三人も、中にいる2匹も」
理事長棟の中に消えていく前にメイドにいくつかの指示を出していった。
それを追いかけるように九頭龍も中へと足を進める。
入ると同時に一真達三人はメイドに連れて行かれ、九頭龍だけが別室に案内される。そこはこの建物の中で最も大きい客間であろう部屋と考えられる。
今ここには九頭龍だけ。
テレビや小説等の本、その他の娯楽類も揃っている。だが一人と言うことと、勝手の分からない家ということから動くことはない。
しばらくしてメイドと、人間の姿をした九尾と九鬼が部屋に入ってきた。
「お前ら、やっと来たか」
「妾は最後まで我が子に憑いておるつもりだったんだがのう、彼奴に無理矢理剥がされてしまった」
「龍の。あの娘は何者じゃ?」
「あら、私のこと?」
全くと言っていいほど気配を感じさせないで、この館の主は3匹の後ろにメイドと一緒に現れた。
「まて。貴様は今お嬢達の怪我を――――――」
「怪我? ああ。あの子達のとっては大惨事でも、あたしの身体のことに比べたらあの程度簡単よ」
等と彼女は言ってのける。が、その姿は健康的な女子高生にしか見えず、身体のどこかに異常があるようには判断することは出来ない。しかし当の本人が言うのだから、身体のどこかに何かしらの異常が存在しているのだろう。
しかし今大事なのはそこではない。
「それよりも何? おもしろいこと話してた? だったら仲間に入れなさいよ!」
「いや、そこじゃねぇだろ!」
「何よ? ああ、あの子達のこと? 言ったでしょ、あのくらいの怪我なら簡単だって。もう治療は終わったわよ。出血量が多かったから、ここのストックから輸血している最中よ。意識の方はまだ回復してないけど、そっちは時間の問題ね。だから、あんた達の契約者はもう安心していいわよ」
「そうか」
「そうか、じゃないわい蛟龍! 主が探しておったのは、寺子屋の主であろう? この小娘はそうは見えぬぞ」
「あら、心外じゃない……と言っても、この姿じゃそういう反応になるわよねぇ。でも……うん……まあこのままで自己紹介しましょうか」
入り口に立っていた少女は佇まい、そして表情を改めて口を開く。
「改めまして。私が高天ヶ原学園の理事長の――――――」
2
あの襲撃から夜が明けて翌日の朝。
戦闘に参加していた一美、アリス、アッシュ、京子、鈴蘭、晶彦の6人は風路に連れられて風紀委員室に連れてこられていた。
室内には委員長である徳川憂一、委員の一人である北条美緒。そして副委員長であり、2度の襲撃に参加していた遠山楓が拘束魔法で入念に縛られた状態で椅子に座らされていた。
しかし雰囲気は昨日とは打って変わり大人しい物である。
「ねえ、風ちゃん」
「何ですかぁ、桜ノ宮さん?」
「この人、本当に昨日私達を襲って来た人と同一人物?」
「私は初めて見たのでぇ……どうなんですかぁ、徳川君」
「朝目覚めた時から遠山はこんな感じですよ。一言も話そうとしないし、目も合わせようとしない」
憂一の言うとおり、彼女はここに風路達が入ってきた時でさえ顔を上げようとはしなかった。ずっと床に視線を向けたままである。
抵抗の意思はないように感じられる。が、ここにいる誰もが感じるだけで拘束を解くような行動を取らない。拘束を解いた瞬間、彼女が何をするのか分からないからだ。
「……風ちゃん。この尋問、私にさせてくれないかしら?」
立候補したのは「白き百合」に姉を奪われ、最愛の兄に重傷を負わされた被害者家族の一美であった。
ここには妹の鈴蘭に、一真と同じように大怪我を負っている隆浩の弟の晶彦も在室している。しかし彼女が尋問をすると言うことに対して2人は異を唱えることはない。
「そうさせて上げたいのは山々ですがぁ、今は先生に任せてくださいぃ。今回のことはぁ、もしかしたら大事になるかもしれませんからぁ」
「……分かったわ。でも、もし拷問するなら参加させてちょうだい。もし参加させてくれなきゃ……」
「わ、分かりましたぁ……」
異様なまでに重い雰囲気を漂わせながら教師を脅す女子生徒。
憂一や美緒にとっては担任教師に対してそのような態度を取るようなことは絶対にあり得ない。生徒としてもだが、風紀委員のツートップとしては見過ごすことは出来ない。
「おい、神童。先生に向かって――――――」
「黙りなさい」
一蹴。
聞く耳持たない一美は、憂一の指摘に対して言葉を被せるように遮ってしまう。
「なっ」
「お前、委員長に何て口の利き方を!」
「いいんですよぅ、今はぁ。神童君もあんなことになってますからぁ」
「しかし……」
あの時、一美が風路に向けていた物の中には怒り以外にもう一つ。間違いなく敵意が混ざっていた。だからこそ納得することが出来ないでいた。だが、それを真っ正面から受けていた風路自身がこう言っているのだからそれ以上何も言えなくなってしまった。
鈴蘭が謝っているのを尻目に、一美は設置してある椅子に腰を下ろした。
「皆さんいいですねぇ。遠山楓さん、全部話してもらうわよぉ。嘘ぉ、偽りなくねぇ」
「分かりました……まず、誰か昨日私にそっくりな人に会いませんでしたか?」
それを言われ一美、アリス、アッシュは屋上で戦闘したときのことを思い出していた。
一美が意識を失わせたにも関わらず、神無の隣に立っていたのは言動や雰囲気は違うものの顔は全て目のまえにいる彼女と同じ物であった。
「やっぱり、あの娘も来てたんですね」
「あの女は遠山さんの知り合いなのかしら? だとしたら今すぐ居場所を吐いてほしいのだけど。私や隣に座ってる無個性女やわかめ女は、あの女にやり返さないと気が済まないのよ。お姉ちゃんや、お兄ちゃんやお兄ちゃんやお兄ちゃんの分をね」
言葉の直後、3人の雰囲気が一気に変貌する。
当たり前だ。一美にとっては家族、3人にとっては思い人の仇をとる絶好のチャンスなのだ。それを無駄には出来るはずがない。
しかしそれを遮るように風路が動く。
圧倒的な魔力が一瞬だけ部屋に充満したのだ。
「今はぁ、私が話をしてるのよぉ。邪魔するようならぁ、寝てもらうわよ」
「……」
「お姉ちゃん。今は先生に任せた方がいいよ」
「……っ」
「ごめんなさいねぇ。続けていいわよぉ」
「は、はい。神童さん達が見たのは双子の妹、桔梗です」
それを聞いて納得が一美達は納得することが出来た。
あの時、あそこに立っていた彼女は楓と同一人物にしても雰囲気が違う。そして一美達よりも早くあそこにいること自体がおかしいのだから。
「あの子の様子がおかしくなったのは一年前、私が風邪を引いて行けなくなった日に代わりに行きたいと言って登校してからです。帰ってきてからはずっと神童会長のことばかり話すようになりました。更に翌日になると全寮制の学校に自宅から通うと言い始め、数日後にはあの子が通っている学校から登校していないと連絡もありました。そして数ヶ月後には行方不明になったんです。あの子が不登校になってちょうど半年のある日、連絡もなかったあの子が帰ってきたんです。あの男、須藤弘史と。そして、その日を境に私もおかしくなっていった……気がします」
「気がするとはぁ、どういうことかしらぁ?」
「以前の私は神童会長に憧れることはあっても、崇拝するようなことはなかったんです。ですが、あの子が帰ってきた日から、神童会長に対する感情が憧れを超えた物になっていったような気がするんです。しばらくは以前の私と、おかしい私が交互になっていました。しかしここ1ヶ月は私じゃない私が、ずっと表に出ていてあなたのお兄さんにまで敵意を向けるようになっていました。だけど今日の朝目が覚めたとき、今までの感情が嘘のように消え去っていて……」
「……遠山さん。お前がそうなってしまった原因に思い当たる所はないか?」
「いえ、それは……」
楓の記憶にあるのは、妹の桔梗が須藤と共に帰ってきてから自分の抱く感情に変化を覚えたと言うことである。そのため自分が変わってしまうことになった原因に思い当たる節がない。
もちろん今まで接点のなかった十三組の一美達や、中等部の鈴蘭と晶彦には分かるはずもない。風紀委員長、副委員長の憂一と美緒にも同じであった。
しかし、彼女正面に座って話を聞いていた風路には何かしら知っているようで、
「じゃあぁ、『レギオン』って聞いたことはないかしらぁ?」
ほぼ確信しているように質問を投げかけた。
ここにいた全ての人間がその言葉の意味を理解することが出来なかった。
「れぎおん……ですか?」
「レギオンってローマの軍団? それともマルコによる福音書の? それとも怪獣映画の敵の奴?」
楓が記憶の中から思い起こしている最中に晶彦が三つ例えを上げるが、全員がピンと来ていないようであった。特に最後のものは女性陣には分かりにくいかもしれない。
ただ憂一だけ理解することが出来ていたようである。流石は男子、といったところである。
「最後が何なのか分からないけどぉ、ある意味正解に近いのはぁ、二つ目かしらぁ。ところで、遠山さんはどうかしらぁ?」
「聞いたことがあるような気はするんですが、どこで聞いたのか。自分が自分じゃないときの記憶は、どうしてか凄く曖昧で……」
「そう……」
「で、風ちゃん! その『レギオン』って何なの?」
「単刀直入に言うと人工契約獣よぉ。これはとある企業がぁ、軍事目的で計画したことなのよぉ。親となる契約者がぁ、コピーを他の人間に植え付けることでぇ、その人間に指示を出さなくても思い通りに動かすことが出来るようになるというものなのぉ。そのために作られたのが人工契約獣『レギオン』よぉ」
「それが遠山がおかしくなっていた原因なんですか?」
「まあぁ、断言は出来ないけどねぇ。もしそうなのだとしてもぉ、どうしてあなただけがレギオンのコピーから解放されたのかしらねぇ?」
そのことに関しては誰にも分からない。
たった一人、彼女を倒した一美意外には。だが、一美も話すつもりはなく沈黙を続ける。
「遠山さん。最後にぃ、次の襲撃はいつになるか分かるかしら?」
「いいえ」
「そうぅ……徳川君、北条さん。この子のことはお願いするわぁ。神童さん達はぁ、一緒に来てください。これからのことを考えましょうぅ」
「先生! 私は……」
「もう大丈夫ですよぅ。学園長からもぉ、あなたことは風紀委員に任せると聞いてますからぁ。お願いしますねぇ、徳川君、北条さん」
「「はいっ!」」
3
……何でここにいるんだ?
ここは思い出したくもないあの場所……そもそもここはなくなっているはずで。
だったらどうして、たしか俺は姉さんの『嵐王の聖域』に取り込まれてたはずなんだが……あー、そういうことか。だからこんな場所にいるわけだ、あっけない人生だったな。
あの時の誓いも守れず、姉さんを助けることも出来ず。
「クソッタレが」
「何がクソッタレだ、どアホ!」
「ごっ!」
突如背中を襲う衝撃。
それをまともに受けて俺は吹き飛ばされる。完全に油断しきっていた俺は、受け身も取ることが出来ないまま地面に叩きつけられた。
何しやがる、と叫びそうになったがそこで気がつく。ついさっきまでこの空間には俺一人しか立っていなかった。360°見て確認したから間違いない。
だったら誰だ?
ここがあの世なら、俺以外の住人か。いや、それもおかしいか。
「んなもんいるわけねぇだろうが。早くこっち見やがれ」
「ああ? 誰だ、てめぇ?」
振り返ってそこにいたのは、背中の真ん中くらいまであるであろうロングの黒髪で白いTシャツにジーパンというラフな……いや、ラフすぎる服装の女。
美人の部類に入るのは間違いねぇけど、何つーか残念美人な感じが強すぎる。
それにだ、この人どっかであったことがあるような気が……やっぱ、気のせいだな。
「気のせいじゃねえよ」
「んだと? つか、何でアンタは俺の思考を呼んだように話してやがんだよ?」
「……ああ、そうか。この姿も見たことなかったか」
「この姿?」
何か、同じような会話をここ最近したことがあるような気が……、
「もしかしてお前、九龍か!?」
「正解だ、相棒」
「何であのガキの格好じゃねぇんだよ?」
「あれが受肉したときの人間体だよ。受肉してると、子供の姿じゃないと力の消費が激しくてな。代わりにこここみたいに精神体で居られる場所だと消費少ないから、本来の人間体でいられる訳だ」
「ん? ちょっと待て、ここみたいに精神体だと?」
「ああ、ここはお前の意識の中だ」
ようやく納得がいった。
どうして存在しないはずであるここに、俺一人で立っているのかということに。
ここが俺自身の心象世界ということなら、ここが存在していることは変なことではない。何せ俺のトラウマ……の原因になったような場所だからな。
「ちなみに身体の方は治療済みだが、まだ動ける状態じゃねえ。だからお前の精神に、意識に直接憑依してるわけだ」
「何で?」
な直球の質問に、九龍は珍しくはぐらかすことなく口を開いた。
いつもなら後でとか言って、大切なことはすぐに言わないくせに今日はどうした? 何か気持ち悪ぃが、今は黙って聞いておくか。
つか、多分俺がこんなことを考えてるなんてことは俺自身に取り憑いているんだから筒抜けなんだろうけども知ったことか。
「理由は二つ。お前達が『神降ろし』と言っている技、正しくは『神懸り』と呼ばれてる行為だ」
「それが何だよ?」
「お前のそれは完全じゃない。とてつもなく中途半端だ」
何でもつい最近俺の腕となった九頭龍の左腕がまだ完全に俺の魂、存在と融合できていないらしい。そのため仮契約から本契約となった今でも発揮できる力は80%までが限界な上に、必ずしも80%の力が発揮できる訳ではない。
何つーめんどくせぇ状況だよ。
「それを今完全な物にすることと、もう一つはお前の中のリミッターを少しでも外すことだ」
「リミッター?」
「お前、気がついてないのか? 神無と戦う時、無意識に手を抜いていることに」
そう言われて思い出す。
姉さんと戦ってるとき、本気を出すことが出来ていなかったこと。自分の中の何かが力を押さえ込んでしまって、思ったように戦うことが出来なかった。
俺はあの日、自分自身の魂に強く誓った。
家族を誰にも傷つけさせないと。
その誓いは俺以外の家族に対して敵意を向ける者全てに発動する。それは俺自身も例外ではなかった、という訳だ。
「今回のこの事件。お前のリミッターを外さねぇと、完全に足手まといでしかないからな」
「……分かった」
「お前の気にしていることにはならねぇつもりだ。相棒の中に存在している呪いの対象に、相棒自身が入らないようにするだけだからな」
そこまで言って目の前に立っていた九頭龍の姿が姉さんのものに変化する。
中身は全くの別物だが、外見は寸分違わず姉さんそのものである。
これとこれからやり合うのかぁ……憂鬱過ぎる。
「……ちょっと待て」
「んだよ?」
「手元の黒月ねぇのにどうやってお前みたいな化け物と戦えってんだ?」
「んなもんイメージすんだよ」
簡単に言ってのける目の前に立つ人外に対して、本気の怒りが沸いた。
俺は人生で初めて自分の精神世界に、意識を持った状態で存在している訳だ。そんな奴が簡単に九龍の言ったことを出来るはずもなく。
「っ……」
今のところ三回くらい試しているが、光が集まるだけで成功の兆しは一向に見えない。
目の前のクソ野郎は当然のごとく成功している。
よし、
「死ねぇぇぇぇ!」
「のぉぉぉぉぉ!」
俺がイメージしたのは黒月で九龍をぶった切る、と言うもの。
それが功を奏したのか、俺の手に握られているのはついさっきまで存在していなかった黒月。おそらくこれがイメージによって具現化されたものなのだろう。
重さ、質感、その他諸々まで完全に同一だ。持ち主である俺が言うのだから間違いない。
「で、何でてめぇは白羽取りしてんだ?」
「いや、死ぬからな!」
「ちゃんと死ね、って宣言してから攻撃したじゃねぇかよ」
「俺の契約主怖っ!」
「今更何言ってやがんだ?」
「真顔かよ!」
「で、そんなことよりもどうやって俺のリミッター外すんだ? ここに姉さんはいねえどころか、それ以前の問題だろ?」
「ああ、そのことか。簡単な話だ」
一瞬だけ九龍の姿光に包まれたかと思うと、次には完全に別人がそこに立っていた。
イメージで具現化出来るとこいつは言っていたし、だからこそ可能なんだろうが……はっきり言って気持ち悪い。
何が気持ち悪いって、その姿で九龍の仕草っていうのがもうミスマッチ過ぎる。
「さて、始めようか」
「……」
「ん、どうしたよ?」
何つーか、すげぇイライラする。
原因は分かりきっている訳だし、俺のためにその格好になったんだろうがよぉ……それでもこの感情は抑えることは出来ない。マジで半分にしてやるとしよう
今、俺が使うことの出来る魔力をイメージで作り出した黒月に流し込んでいく。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
「またかぁぁぁぁぁ!」
《つづく》