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21.続・病院で医者に告られる

『黄金の乙女』

世界にたった一人の至高の存在。

その女性と相思相愛になると、この世界はおろか、マルチバース全てが二人のものとなる、という伝説。

伝説を信じ、冒険者達は異世界転生を試みていた。


これまで

1.星野翔真 転生者。アイドルグループ・バイオレットバタフライメンバー 告白した騒動を謝罪し、現在は電話で会話する仲。

2.進藤君也 転生者。三崎東高校数学科教師 生徒指導担当 校舎の屋上で告白するも失敗、仁平からあやめを守る。

3.見城利幸 三崎東高校1年 バスケ部所属 体育館裏で告白するも保留。富永からあやめの危機を救う。千枝美琴と付き合っている。

4.吉水健吾 アイドルグループ・バイオレットバタフライメンバー 告白するも失敗。来春、三崎東高校に入学予定。

5.仁平茂樹 転生者。株式会社『あすなろ』社長。75歳 あやめに死を宣告するも失敗。二度と近づかない事を誓う。

6&12.富永悠一 転生者。ファストフード店元アルバイト 不治の病の妹を掬いたい、という口実であやめに近づくも失敗。夜道であやめを襲うも失敗。日本政府によりあやめ達から遠ざけられる。

7.島畑和毅 転生者。塾講師アルバイト 無理矢理あやめをわがものにしようとしたが失敗。

8.下田 三崎東高校1年 教室で告白するも保留。

9.清水良治 転生者。病院勤務内科医 母親の再婚相手としてあやめに近づいたが失敗。

10&19.野村正貴 三崎第二中学二年 市民プールで告白するも、あやめに諭される。市立図書館で再開し改めて告白するも、夏休みの終わりに下されるあやめからの回答待ち。

11.内藤洋二郎 転生者。雑誌編集者 原宿であやめ達に声をかけたが失敗。

13.海道信哉 警視庁SP 監禁中のあやめを救おうとして失敗。重傷を負う。一時的に『黄金の乙女』の力を発動出来る様になる。

14.氏名不詳 某国大統領 あやめと付き合いたいと伝えるが失敗。

15.渡辺慎之介 転生者。旅行代理店勤務 旅先のホテルであやめに恩を売ろうとするが失敗。

16.常盤隆人 転生者。書店員。あやめに告白するが失敗。この世界での安住を望んでいる。

17.小田原雅和 外務省事務次官。あやめと付き合いたいと伝えるが失敗。

18.戸川健二 転生者。市民病院の泌尿器科医。あやめと結婚を前提に付き合いたいと伝えるが失敗。

20.大窪高保 転生者。産婦人科院長。ちえみの件をネタにして、あやめに交際を了承させる。


やすことちえみの待つファミレスへと向かいながら、私は打開策について思案していた。

このままだと、私は日曜日に大窪とデートをして、あの男に処女を奪われる訳だ。

それを回避する為の方向性は二つある。

一つは日曜日までに私が処女を捨てる、という方向性、もう一つは日曜日までに大窪をHが出来ない状態にする、という方向性である。

荒事の経験も度胸もないので、まずは私が処女を捨てる方向性を考えてみる。

そもそも今、この人となら・・・と思える男性はいない。頭に浮かぶのは海道さんと山崎君だけど、海道さんについては、私は彼の現状を知らないし、もし再会出来て私が頼んでも、私の様なガキンチョを相手にはしないだろう。山崎君に至っては、私はまだ告白もしていない状態だ。告白からSEXに至るまで時間が無さ過ぎるし、もしそれが叶ったとすれば、それは私の好きな山崎君ではない様な気がする。ということで二人を除外して、更に考える。

今回までの一連の騒動の中で、敢えて性愛の対象として許容出来るのは誰だろう?頭に浮かんだのは三人。バイオレットバタフライのショーマとケンゴ、それに野村君だ。ショーマなら、事情を話せば、納得はしないだろうが、抱いてくれるとは思うが後々マウントを取られそうで嫌だ。ケンゴの場合は、その場面になっても、お互いに恐縮して出来ない様な気がする。野村君は私から誘えば多分出来るだろう。名器であるという自信はこれっぽっちもないが、野村君が私とのHに溺れてしまって、覚えたての猿の様に求めて来られても困る。それに相手は中学生だ。中学生の未来を、私の都合で歪ませる訳にもいくまい。という訳で、この三人も却下。

後は海道さんの時の様に瞬間的に燃え上がる様な恋をする可能性だが、ゼロではないにしろ、それは極めて低いものだろう。期待するだけ無駄というものだ。

結論、九条あやめは週末までに処女を捨てることは不可能ということだ。

仕方が無い、もう一つの方向性で考えるとするか。

一つ言えるのは、大窪は転生者にありがちな自信過剰なメンタリティを持ち、理由はわからないが夜のテクニックについても並々ならぬ自信があるということだ。女性にとっての初めては随分痛いものだと聞いているが、そんな女にもあいつのテクニックは通用するとでも思っているのだろうか。少なくとも私が快楽に溺れて、自分の思い通りになるとでも思っているのだろう。随分と失礼な話である。『黄金の乙女』は伝説通り、清純なものとして扱って欲しい。また、あの態度からしてこの世界の女性を数多く泣かしているのだろう。だったら、大窪に制裁を加えることに躊躇する必要は無いだろう。

では、誰を実行役に任命するかである。一人に依頼するのでは駄目だ。複数の組織に競わせる方がいいだろう。

私は歩きながら、呟いた。

「いるんでしょ、責任者、出て来なさい」

目の前の電柱の陰から1人の男が出て来た。

「何の用だ、九条あやめ、我々は御前となれ合うつもりはないぞ」

「あなた達も見ているんでしょ。土曜日までに大窪高保に制裁を加えて欲しい。少なくとも二度と私に近づく気が起きない程度にね。まさか出来ない、とは言わないわよね?」

「出来る出来ないで言えば、出来る。しかし、我等が実行するメリットはあるのか?」

「勿論あるわよ。私の中で、あなた達への好感度が若干上がる。・・・それにあの男は社会の敵よ」

「わかった。あの男に制裁を加えよう。・・・確認だが、殺さなくていいのだな?」

「うん。殺さなくていい。あんな男にでも、診てもらっている患者さんがいるんだからね」

「お優しいことで。そんな甘い事を言っていると、いつかは寝首をかかれるぞ」

「大丈夫よ。そんな時の為にあなた達が守ってくれているんだし。・・・話は済んだわ。さっさと私の前から消えて頂戴」

  

男が私の視界から消えると、スマホを取り出して電話をかけた。

「もしもし、戸川先生でしょうか。御存知とは思いますが、九条あやめと申します。今日は先生にお願いがあって、電話をかけさせていただきました。・・・あなたの同業者について、ひとつお願いがあるのですが・・・」

戸川は私の言葉に訝しんだのか、警戒感を含んだ口調で言った。

「俺は御前の要求に応える筋合いは無いが、話だけは聞いてやる。そもそも俺に報酬はあるのか?」

「その質問は尤もだわ。いいよ、答えてあげる。私の要求に応えたら、当面の安全と私の中の信頼度がちょっぴり上昇するわ。悪くない条件だと思うわ」

「冗談じゃない。誰が御前の命令に応える必要があると言うんだ。そんなしょぼい報酬で。第一、御前に俺の命を脅かせる力があると言うのか?」

「ええ、勿論。あなたが知らないだけなのよ。私は手駒として10人以上の転生者を抱えている。彼等は好感度を上げる為に、私の依頼を何でも叶えてくれるわ。それに転生者はこの世界の法律とか道徳に躊躇しないからね。だからあなたの存在を消して、とお願いしたら叶えてくれる人も出るでしょうね。これが私の裏の力」

「裏の力?表の力もあるという事なのか?」

「勿論。『黄金の乙女』の力を手に入れる資格を持っているのは転生者だけではないのよ。この伝説はじわじわと世界の為政者にも広がっている。つまり、私の感心を得たいと思っているのは転生者だけではなく、この世界の権力者も思っているのよ。そして私はそういった人物に伝手があり、実力組織を動かせるという訳よ。まあ、信じるも信じないもあなた次第、好きにすればいいわ。・・・それでどうするの?私の頼みに応える気はあるの?答えなさい」

「・・・仕方無いな。頼みというのは何だ?」

「あなたの同業者である大窪高保に制裁を加えて欲しい。命まで取れとは言わないけど、少なくとも私に対して舐めた態度を取らない程度にね」

「どうしてそんな荒事を実行する必要があるんだ?」

「あの男は、私の友達が診察を受けた事をネタにして、私にオンナになれ、と脅迫したのよ。それ相応の制裁を受ける必要があるわ。・・・わかったのなら、すぐに動く事ね。既に警視庁に依頼しているから、どちらが私の役に立つのかしらね」

「ガキだと思っていたら、随分と権謀術数を繰り出すんだな、まあ、いいだろう。大窪に御前を取られる訳には行かないからな」

「私がこうなったのは、転生者達から色々と教えられたからよ。・・・とにかく私の役に立ちなさい」

私は電話を切った。これ以上、戸川と会話をして、声を聞くのは堪えられなかったのだ。だが今回の通話で戸川に対する牽制は十分機能したとは思う。大窪に対して、彼が有効であることを証明してくれればいいが、何も出来ないなら切り捨てる事も考えるべきだろう。

これで事前に出来る大窪対策は終わりである。あとは警視庁と戸川が何とかするだろう。

失敗した時はどうするか?デートの時に誰かに襲撃させるか。不純異性交遊ということで内藤洋二郎に写真を撮らせるて脅すか、日曜日だしサラリーマンの渡辺慎之介にパワープレイをさせるか。この件の検討はもう少し後でもいいだろう。


やすことちえみの待つファミレスに到着した私は、唖然とした。

二人で時間制限のないしゃぶしゃぶ食べ放題にチャレンジしており、肉を載せていた皿が十枚程重ねられていた。最初から私の分もオーダーしてあったらしく、箸と小皿が置かれていた。

「ごめん。遅くなったわね」

私は空いている席に座りながら言った。

「別に気にしていないわよ。御覧の通り、先に始めちゃってるから。・・・それで、話って何だったの?」

やすこの話に私は割り箸を手に持ち、皿に残った肉をつまみながら答えた。

「今回の診察は母さんからの紹介だよね。だから、母さんに報告する必要があるかどうか、娘の私に確認を求めたという訳よ」

「ふうん、それであやは何て答えたの?」

「母さんには私から直接話すから、お医者さんから連絡する必要はない、って答えたわ。もっとも私の言う通りにするかどうかはわからないけどね。・・・安心して。学校に連絡する、という話は出なかったから」

「それならいいんだけど」

私の言葉にちえみは安心した様だった。今後早まった行動を取らない様に祈るばかりだ。

私は猛然と二人との差を縮めるべく食べ始めた。

やすこ、ちえみ、頼むから黙っていてくれ。色々あって私はお腹が減っているのだよ。

三十分後、ようやくひとごこちついた時には、私が来た時よりも積み重ねられた皿の高さが倍になっていた。そして三人でソフトクリームを食べる様になり、ようやくJKらしく雑談に花が咲く事となった。話題としては、来週に迫った花火大会である。

「あやは花火大会、どうするの?」

「う~ん、どうしようかな、母さんその日は夜勤だし、一人で見に行くのもねえ、淋しいじゃん」

「誰か仲のいい男の子っていないの?」

「う~ん、いると言えばいるんだけどね・・・」

「どうしたの?何か問題でもあるの?」

「その子、中学生なんだ。弟みたいに思ってるけど、花火大会に誘って勘違いされても困るし」

「確かに、中学生は危ないわよね。暴走したら、向こうの方が力が強いだろうし」

「去年は受験勉強で見に行けなかったから、今年ぐらいは見たいわね。・・・ねえ、私が場所取りするからさ、あんた達は夏祭りを満喫すればいいよ」

「え~、それはありがたいけど、何か悪いわね」

「気にしないで。私もいい場所で花火を見たいからね。・・・それにこの夏はあんた達に色々助けてもらったからね」

「あや、気にしなくてもいいのよ」

「そう言われてもね。私は気にするんだよ。とにかく、当日はいい場所をキープしておくから期待しておいてね」

二人はとまどいながらも、私の言葉を受け入れた。その後も取り留めのない雑談を続けて、ちえみの騒動の打ち上げを終えた。案の定ワリカンではあったが、ワリカン負けしない程度には食べた筈だ。

ファミレスで二人からウィッグ等を回収して、家路についた。

しばらく歩いたところで、やすこが追いついた。私に聞きたいことがあるのだろう。

「あや、ファミレスで言った話、嘘だよね」

「やすこ、何のことを言ってるの?」

「本当は病院の先生に何を言われたの?」

「やすこ、それを本当に聞きたいの?嫌な気分になるだけよ」

「それでも聞かせて欲しいわ。私はあやの友達だから、聞く責任があるわ」

「ふうん、聞く権利じゃなくて、聞く責任ね。わかったわ、その覚悟があるのなら教えてあげるわ。聞いても不快になるだけよ。あの医者に言われたのは、『ちえみのことを流布されたくなかったら、俺の女いなれ』とね」

「あや、何と答えたの?」

「勿論、承諾したわ。次の日曜日にデートすることになったわ」

「それって・・・」

「ええ、当日間違いなくレイプされるでしょうね」

「あや、どうしてそんなことを選ぶのよ!もっと自分を大切にしなさいよ!」

「やすこ、落ち着きなさい。私がちえみに不都合なことを選ぶ訳ないでしょ。・・・それに、あの男はわかっていない。誰に向かって脅迫しているのか、ということを理解していないわ。私は『黄金の乙女』なのよ。私と相思相愛になれば、この世の全てが手に入るのよ。それなのに私をレイプしようなんて、何を考えているのか。それに私が誰かとカップルになるのを不都合に思う者もいるのよ。既に警視庁と転生者の一人にあの男の制裁を依頼済みよ。恐らく五体満足で私の前に現れることは無理だと思うわ」

「あや、いつの間にそこまで手筈を整えたの?」

「そりゃあ、病院を出てからファミレスに着く迄よ。私には警察の人間が何人かつきまとっているから、そいつに話せばいいし、転生者の中から適任者を選び出して電話を掛けただけよ」

「どうして、彼等はあやの言うことを聞くの?」

「それは私が力を持った時に、不都合が発生するのを恐れているからよ。結局は、自分のこと・・・。だから私は彼等にお願いはしない、命令するだけ」

「怖いわね」

「何が怖いの?」

「だって、あやと付き合おうとしたら、誰かがその男の子に制裁を加えようとするっていうことでしょ。相思相愛になることは出来ないんじゃあないの」

「だから、気になっている男の子とは、絶対に二人きりでは会わない、と心に決めているわ」

「あや、この話は一人で受け止めるのはちょっと重過ぎるのよ。どこまでだったら話してもいいかな?」

「ちえみには勿論言わないで。齋藤君については言っても構わないわよ。彼を通じて、進藤先生やショーマに伝わっても別に構わないわ。但し、ちえみの事がバレない様に言い方には気をつけてね。・・・それから見城君の耳に入らない様に注意してね」

「見城君?それは何で?」

「回り回ってちえみが知ったら困るからよ」

「わかったわ。・・・あや、あまり一人で抱え込まないでね。私に何が出来るかわからないけれど、力になるわ」

「ありがとう。その気持ちだけで力になるわ。じゃあ、また明日ね」

やすこと別れて、一人で家へ向かう中、私はやすこにちょっとした罪悪感を抱いていた。私はどうして見城君への不信感を、やすこに話さなかったのだろうか? 見城君はかつて私に告白して来た男の子だ。勿論お付き合いすることはなかったが、彼は告白から間も無い頃にちえみの告白を受け入れて付き合うことになった。さらに先日にはちえみの懇願を受け入れて関係を持ってしまったのだ。私には見城君がちえみに好意を抱いている様には思えないのだ。だとしたら、彼の思惑は何だろう?それを考えた時、私は恐ろしい考えに行きついたのだ。彼は私の側で、私を監視する為にちえみの恋人という立場を選んだのではないだろうか?私に変化が訪れた時、迅速に手を打つ為に。それは他ならぬ『黄金の乙女』を手中におさめる為だ。やはり彼は転生者なのだろうか?決して油断してはならぬ。ちえみの為にも、私自身の為にも。


翌日、午前の学校での勉強を終えて家に帰る途中に、警視庁の男から連絡を受けた。可哀想に大窪は一生松葉杖無しでは歩けない身体になったらしい。

その夜、戸川と連絡を持った。大窪と接触した時、既に片足に大怪我を負っていた為、仕方が無いので歯を2本程麻酔無しで引っこ抜いたそうだ。全く転生者は容赦しないわね。私は労をねぎらうと共に、もし大窪への制裁が足りないと私が判断した場合には、再制裁を命令することを告げた。

後は大窪がどんな精神状態となっているかだ。まだ諦めないとしたら、更なる制裁を加えることになるだろう。


土曜日の午後、ちえみとやすこが帰った後、私は動くことにした。病院には受診している患者さんがいないことは確認済みだ。

私は大窪のケータイに電話を掛けた。家族にも内緒にしているシークレットのサブのケータイだ。奴の端末には別のナンバーが表示されることになっている。最も通話履歴の多いキャバ嬢のものだ。

「何の用だ?」

随分乱暴な口調だなあ。キャバ嬢には普段はこんな偉そうに話しているのか。ますます好感度は下がる。

「残念ながら、表示されているキャバ嬢じゃないのよ。九条あやめです。明日の件の詳細について伺いたく電話をさせていただきました。まだ、私と明日会うつもりはありますか?」

「どうやってこの電話番号を・・・」

「そこから説明する必要があるのですか。この程度のことなら調べようと思えば簡単なのよ。特に公権力を行使する側ならね。あなたが家族にも内緒のプライベートの端末、最も多い通話履歴のナンバーなんて瞬時に判明したわ。そして特殊なアプリを用いて、別のナンバーを表示することにしたのよ。あなたが電話に出る確率が高いナンバーをね。元々、キャバ嬢の使っていた端末のナンバーよね、これは。・・・それで、まだ私と会うつもりなの。松葉杖を使って、無理矢理歯を抜かれた残念な姿で」

「どうして、それを・・・」

「決まっているじゃない。私が命じたからよ。患者さんや妊婦さんに迷惑をかけられないから、医師としての業務には不都合はない筈よ。もし、明日まだ私に会うつもりがあるのなら、私は待ち合わせの場所で待っていてあげるから、這ってでも来ることね。辿り着くことは出来ないと思うけど」

「なん、だと・・・」

「更なる制裁が待っているということよ。わかっていると思うけど、転生者達は他の人間に私を取られるぐらいなら、その男を殺すくらい躊躇はしないわ。彼等は私の歓心を得たくて、嬉々としてあなたを殺すでしょうね。あなたは自分の身を守れるかしらね」

「・・・」

「答えなさい、大窪高保」

「・・・わかったよ。今回は諦めることにする」

「ええ、賢明な判断だわ。それからひとつ忠告しておくわ。随分と自分の持ち物やテクニックに自信を持っている様だけど、無理矢理関係を持った女の子とは絶対に相思相愛とはならないから。・・・私の役に立てとは言わないけど、私の邪魔をするなと言いたいわね。あなたが今の生活を維持して、次の『黄金の乙女』に期待したいのならば、ね」

大窪の返事を待たずに、私は電話を切った。これで大窪の問題は解決したと言っていいだろう。

ふう。大きく息を吐いた。

猛烈な吐き気がこみあげて来て、私はトイレに駆け込んだ。涙を流しながら、胃の内容物を全て吐き出した。どうも告白して来た男をぎゃふんと言わせる度に、こうした症状をもよおす。これを仕方が無いと受け入れるしか無いのか。『黄金の乙女』である私への罰なのか。

明日は日曜日。図書館へ行って気分転換しようかな。

 

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