偽りの果実
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大樹の根本。ここは牡丹派の所有する理想郷への入り口。現世界と理想郷を繋ぐ大穴だ。
かつては数百の若い男女を大樹の根元へ集め、大和歌で想いを伝えることや、親が子に『くっつけ』――お見合い――を強制していた。この二股の根本で結ばれた男女は、『ふたりで理想郷を乗り越えてこそ次代は芽吹く』、そういう言い伝えで理想郷へ足を踏み入れていたらしい。
既婚者は安産や子宝といった祈願目的で二股をくぐっていたらしい。
そして現代。ぼくたちは生きるために理想郷の土地で農業や畜産や漁業や採取や採掘と、様々な分野で理想郷の土地へ足を踏み入れている。
需要と供給、それは簡単に乗り越えられる壁ではない。ヒトは五本の大樹に生きる権利を与えられたにすぎない、それだけでも十分な希望となっているのだけれど、希望は撚糸ではなく《蜘蛛の糸》のようだから簡単に切れてしまう。
その希望を切らないために、とある果実が何よりも必要となっている。
「フォルス無くしてヒトは長く生きられない」
と、総隊長殿はけものとの戦いの前にそう言った。
総隊長殿の言う通り偽りの果実無くして現世界は守れない。
それもこれも耕世紀より前の新創世紀の影響だ。新創世紀は大罪時代と呼ばれ、現世界で聖戦があった世紀になる。その新創世紀の大罪時代というのは、現世界に爪痕を残した。
大罪時代の聖戦により現世界の土地は使い物にならない。汚染された草木は死に至る病を全人類へ与えた。野ノ地病や赤死病と呼ばれる病気が蔓延して、フォルス無くして解決できないセカイになってしまった。
しかし、大きな絶望の中で希望も消えなかった。
夜禅の仕事――それ即ち理想郷でとある怪物と戦うこと、故に偽りの果実は怪物より出づる。
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