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異動ガチャ  作者: 泉北亭南風
35/40

35 タイムアウト

 暦は4月になった。人事異動で山口所長は神宮寺所長に、田村次長は山野次長に、山中課長は新山課長へと入れ替わった。3名とも私が良く知っている人たち・・・そして山野次長は、私が大阪府に採用された時の人事担当者である。何か変化が起きるかもしれない。私は少しだけ期待した。


 そしてゴールデンウィーク突入・・・。私は順調にカフェのボランティアをこなしていたが、ここで予期せぬ出来事が起こる。コロナの「緊急事態宣言」である。宣言を受けて、カフェは行政から営業停止を指示された。私の「リハビリ」はここで一旦中断することとなってしまった。


 その件を山野次長にメールで報告したところ、一度会おうということになった。産業医面談のタイミングで会い、これまでの経過や今の状況等を次長に伝えた。そして障がい者に対する合理的配慮として、中央児童相談所で私ができる仕事に従事させてほしいと頼んだ。


 「高槻さん。復職にあたっては、緊急対応課でフルスペックで働いてもらえることが条件になります。」


 山野次長は汗を拭き、視線をキョロキョロさせながらそう答えた。次長とは長い付き合いである。こういう態度を取るときは、「立場で」モノを言っているのだ。


 「次長。合理的配慮は認められないということですか?それは法律に反することだと思うのですが・・・」


 私が切り返すと、


 「これは所としての方針です。仕事の内容によっては、合理的配慮は絶対ではないというのが法律上の解釈です。児童相談所の仕事はそれに該当します。だから揺るぐことはありません。仕事がしんどいのであれば復職を遅らせるか、主治医に相談して薬でしんどさを抑える工夫をしてください。」


 次長は再び視線をキョロキョロさせながら答えた。


 「クソタヌキ・・・院政敷きやがって・・・」


 私は心の中でつぶやいた。大阪府ではこういう事例はままあるのだ。そして、大阪府での復職の芽は完全に潰えたと確信した。行政は、一度決めた方針はそう簡単には覆さない。それは「前例」がないからである。


 山野次長は私のしんどさを理解していた。そして何とかしてやりたいと思ってくれていた。そのことは話の端々や態度から感じた。でも汗を拭き、視線をキョロキョロさせながら「立場」を貫いた。


 公務員は上司の意向や命令には絶対服従の体育会系組織である。山野次長は優秀な人だから、忠実に職務を果たしたまでである。私は腹立たしさというよりも次長を気の毒に思った。


 5月末・・・在職リミットまで2ヶ月を切った。この時点で分限休職処分を解くためのリハビリ出勤はスタートできなかった。


 これが何を意味するか・・・


 タイムアウトである。


 私の7月末での退職が決まった。数日後・・・私は山野次長に、7月末を持って退職する旨メールで伝えた。

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