表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神鎧戦騎 アトラス  作者: 谺響
14/19

第13話 「迸る想い」

アトラスは広がる空に漠然とした不安を感じてはいたが、アーティーの言葉を信じていたから、あまり深く考えようとはしなかった。それが良いことなのか、それとも悪いことなのかは兎も角。

だが、いつかそんな日が来ることは、予想されて然るべきだった。

マウロと遺跡の記録をした翌日の明け方、再び光の矢が降って来た。

それはいつもよりもなお一層、濃い白色の空が広がる朝だった。


激震と轟音とに驚かされてイアとアトラスは飛び起きた。窓の外で騒ぐ隣人のおかげで、二人にも状況はすぐに把握できた。

把握できたが、アトラスには理解が出来なかった。


「でも、アーティーはもう、攻撃はないって……」


「あの場限りの話だったのかもね」


それであれば、アーティーが嘘を吐いたことにはならないとアトラスは理解したが、いまひとつ納得はいかなかった。

表では避難を呼びかける声が響いている。

「何故?」は今考えるべきことではない。今考えるべきなのは、「どうするか?」だ。

それで言えばイアの行動は早かった。アトラスの手を取って、避難しようと促す。


「でも、あの光の矢はアーティーを狙ってっる、って……」


アトラスはアーティーからそう聞かされていた。事実、あの光の矢は全て山に――――恐らくは遺跡に落ちていて、今だって村には一本たりとも落ちて来てはいない。

アトラスの中で何かが繋がりかけていた。


「青空が消えてしまったってことは……また光の矢が降って来たってことは、あのタマゴがまたやって来てる、ってことで……」


「アトラス、今は外に逃げないと!」


イアの声を押し潰すようにして、再び矢が降る。より山の奥へと落ちたのだろう、揺れは先程よりも小さく感じられた。

外の声を聞く限りでは、アーティーはまだ姿を現していないようだ。徐々に”天蓋の大神”への期待と祈りが高まっていた。


「アーティーが、飛ばない……?」


自分の呟きをきっかけに、アトラスは閃いた。アーティーが何を考えているのか、分かった気がした。次の瞬間には駆けだそうとしていたが、イアに掴まれたままの腕では半歩しか動けなかった。


「離してよ、イア。僕、行かなきゃ!」


「どこに行こうって言うの、アトラス?」


イアの手に更に力が籠められる。イアの必死に引き留めようとする想いが伝わってきたが、それでもアトラスはきっぱりと言った。


「アーティーを助けに!」


「助けるって、あなた何もできなかったって、自分で言ってたじゃないの!」


「違うんだ!」


アトラスは力任せにイアの手を振り払った。

確かに、あの日のアトラスには何もできなかった。今だってたとえ行ったところで、戦いの手伝いができる訳でもない。

でも今はきっと、求められている物が違う。


「多分、アーティーはこのまま死ぬつもりなんだ。そんなの、絶対にダメだ!」


そう叫んだ時にはアトラスはもう、窓枠を蹴って飛び出していた。




山道を駆けてゆくうちに、アトラスの中でアーティーを助けたいという気持ちは徐々にアーティーに文句を言ってやりたいという気持ちにすり替わっていった。最早怒りに近い感情と言っても良かった。

雑木林を抜けたところで、この日4度目の光の矢がアトラスの目の前に落ちた。

アーティーはまだ姿を現してはいない。その理由は知れなくとも、このまま矢が降り続けたらどうなるかはアトラスにも分かる。

昨日記録を取ったばかりの禁域の扉周辺はまた、酷い有様になっていた。2枚目の扉も無残に破れ、崩れた土砂で半ば埋もれていた。アトラスは一瞬の躊躇いもなく、その破れ目から中へと滑り込む。

あの日、イアと歩いた薄暗い通路をアトラスは息を切らせて駆けてゆく。

橋の架かったあの広大な部屋に、果たしてアーティーは、いた。最後に別れたあの日から何一つ動いていないかのようだった。壁に背中を預けて腰を下ろしているアーティーは、橋の先から見れば見下ろすような形になる。

顔も上げずにアーティーが、驚きの声を上げる。


「アトラス、どうしてここに来たのです?」


「どうしても何もあるか!アーティーこそ、外があんな大変なことになっているのに、何こんな所で蹲ってるんだよ!」


広い部屋の中、アトラスの声が反響する。切らしていた息がようやく落ち着きを取り戻してきたところで、アーティーは静かに言った。


「アトラス。ここは危険です。退避して下さい」


「アーティーはどうするのさ?このままここでじっとしているつもりなの?」


「……私がいなくなれば、じきに攻撃は止むでしょう」


「だからっ!いなくなればとか、なんでそんなことを言うのさ!?アーティーはあんなに強いのに、何で戦わないの?今日は前みたいに村を守ってくれないの?」


アーティーを狙って攻撃が続くというのなら、生きている限り戦い続けなければならない。それは確かに難儀な話かもしれない。しかも親しい人たちを亡くして、一人で戦い続けることにどれほどの意味があるのか、定かではない。それでも、戦う力があるのに端から諦めてしまっているアーティーに対して、アトラスはまたもや憤りを感じてしまうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ