第十九話
「そ、それじゃあ白妙様。お金の扱いはオレがやるので、お客様が指定したものをとって、この白い袋に入れてください」
「......ここは恋愛成就の神社なのにそれ以外の御守りも置くのだな」
「ぷぷ。白妙様、他のことに関しては自信がないんですか?」
透は小夜に言われた通りに、白妙に授与所での仕事を教えていく。
そんな中、小夜は御朱印を書く準備をしていく。
休日にでもなると、御朱印の依頼が普段の三倍ほどになる。
となれば、授与所の仕事がおろそかになる。
よって透がバイトとして手伝いに来てくれている。
「......小夜。そなたこそ、きちんとした御朱印を書けるのであろうな?」
「ふっ。ご心配には及びません私の御朱印、評判いいんですよ? ほら!」
小夜は自慢げに白妙に自身が書いた御朱印を見せてきた。
白妙はそれを見ると――。
「......ほう。まぁ、及第点とでも言っておこうか」
「もう! 素直じゃないんだから。......あ、参拝客が来始めましたよ!」
「うーちゃん達は......」
透はきょろきょろと辺りを見渡すと、授与所の外で遊んでいる三人を見つけた。
――この光景はいつも通り、平日と変わりはない。
「あのー......」
「あ、こんにちは」
「ここここんにちは!! あ、あの、御朱印と、学業祈願の御守りをお、お願いします」
「ここは恋愛成就の神社だぞ。ほれ。これも持っていくがよい」
白妙は押し売りのように恋愛成就の御守りを押し付けようとしている。
それを見た小夜と透は慌てて白妙の手から御守りを取り上げる。
「ちょいちょいちょーい!! 白妙様!! 宗教の勧誘しないで下さい!!」
「何故だ? 我が直々に力を込めてやったのだぞ?」
「申し訳ございません! 御朱印と学業祈願の御守りですね? 御朱印帳をお預かりしても?」
「ははははい!!」
透が女性から御朱印帳を受け取ると小夜へと渡す。
そして小夜はスラスラと御朱印を書いていく。
小夜の繊細な作業に白妙と女性は感心したように目を輝かせる。
「小夜。先程のは落書きかと思ったが、これは評価してやろう」
「......ドーモ」
「それでは、御朱印と御守りで、千五百円になります」
「透。これも付けてやれ」
そういって恋愛成就の御守りを手にする白妙。
小夜は止めようとしたが、白妙が何か目線で訴えてきた。
――これは何か、考えがあると見た。
「お代はいりません。よろしければ受け取っていただけますか? えーっと、そう!こんな失礼があったお詫びに!!」
「......小夜?」
「白妙様には何か考えがあるみたいだから」
小声でやり取りをする二人に、女性はどうしたらいいのかオロオロとしている。
その隙に、白妙が学業祈願のお御守りの入った袋に、勝手に恋愛成就の御守りも入れる。
「さ、さあ! 受け取ってくださいな!!」
「あ、ありがとう、ございます?」
女性が財布から小銭を取り出そうとした、その時。
風が強く吹き、女性は思わず財布を落としてしまい、小銭がバラまかれた。
「だ、大丈夫ですか?!」
「だ、だ、だ、大丈夫、です!! すみません!!」
透は女性の元へと駆け寄り、小銭を拾うのを手伝う。
ここでまたトラブルが。
小銭を拾い終え立ち上がろうとした際、二人はぶつかり尻もちをついた。
――カシャーン。
女性がかけていたメガネが地面へと落ちる。
メガネが外れたことにより露になる素顔。
――小夜は思わず目を見開いた。
ものすごく綺麗な女性だった。
「め、メガネ......メガネは......」
「あ、ここに!!」
「ありがとうございます......。こ、これ、お代です。そ、それでは!!」
「あ......。行っちゃった」
透は女性が去って行った方向を見ながら立ち止まったままだった。
「白妙様。これでよかったんですか?」
「あぁ。二人の縁はちゃんと繋がったようだ」
「......見えたんですね? "赤い糸"」
小夜がそう問いかけると、白妙は口角を上げニヤリと笑う。
そして、人差し指を口元に当てた。
「......これからが楽しみだ」




