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構ってもらいたがりの友人と私  作者:


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9/9

9

 マデリンと決別してから、私はとても穏やかな日々を過ごしてきました。


 一年くらい経った頃でしょうか。ケリーが作っているワインがついに最優秀賞を取り、王宮での授賞式に参加するために王都にやって来ました。


 せっかくですから、ケリー一家とジョイス一家を我が家に招待して一緒にお祝いすることにしました。


「おめでとう! ケリー」


「ありがとう、二人とも」


 ケリーはとてもニコニコしています。私達の夫もみな同級生なので、いろいろ懐かしい話で盛り上がっているようです。


 子供達もそれぞれ歳が近いので、みんなで楽しく遊んでいます。


 私達三人もお喋りに花を咲かせていました。


「ねえ、私授賞式の後、王宮のパーティーに参加したのよ」


「ケリー、招待されたのね! どうだった?」


「あのね、最近起きたある出来事の話でもちきりだったわ」


「あら、どんな事?」


「マデリンが、若い男の人と不倫して離婚されたんだって」


「ええっ?! 離婚?」


 私もジョイスも驚きました。


「それじゃあマデリンは今はご実家に?」


「それが実家にも受け入れてもらえなくて、修道院に行ったらしいわ」


「まあ……不倫って、私も前にパーティーで聞いたことあるけれど、その時噂されていた人かしら」


「若い俳優らしいわよ。確証のない噂だったけれど、ついに旦那様にバレたとか。なんでも、その俳優の妻が全て暴露したらしいわ」


 どうやらその俳優は公にはしていないけれど結婚していて、妻には内緒でマデリンとデートしていたようです。お金をくれたり物を買ってくれるからと。でも妻にその事がばれ、怒った妻がマデリンの屋敷に乗り込み、夫と義母のいる前で全てぶちまけたそうです。


 夫と義母は怒り、即刻離婚された上、マデリンは無一文で追い出されたとか。


「マデリンには子供がいたじゃない? 子供達はどうなったの」


「それがね、不倫していた母親を許せなくて全員夫のもとに残ったみたい。面会も一切拒否しているんですって」


「それで行き場がなくなって修道院へ行ったのね……」


「それとね、私、リリアナに話しかけられたんだけど、」


 ケリーが私を見つめて言います。


「リリアナは従兄弟を裏切ったマデリンを許さないってひどく怒っていたわ。でね、マデリンから『学生時代からずっとセシリアにいじめられている』って聞いていたんだけど本当かしら? って聞かれたの」


「ええっ? どういうこと?」


「私もびっくりしたわ。それで、『セシリアはそんな事絶対にしない、むしろ親身に相談に乗ってあげていたわ』って言ったのよ。そしたらリリアナ、『やっぱりそうなのね。あの子の言うことは嘘だらけだったんだわ』ってまた怒ってたわ」


 どうやらマデリンは、私にはリリアナの悪口を、リリアナには私の悪口を言っていたようです。そして『可哀想なマデリン』という同情を集めて注目されたかったみたいなのです。


 こうなってみると、夫や義母から冷たくされているというのも嘘だったのかもしれません。もしくは、ちょっとした事を大袈裟に言っていたのかも。


 それなのに十年もマデリンの言うことに振り回されてきた私は本当に馬鹿だったなあ、と思います。


 常にマデリンに同情し、話を聞き、慰めの言葉をかけ続けた私は、マデリンにとって『悲劇のヒロイン気分』を味わえる格好の依存先だったのでしょう。


 私はもうこの際だからと、これまでの事をすべてジョイスとケリーに話しました。


「まあ、セシリア……あなたって何て人がいいの。こんなに長い間マデリンに付き合うなんて」


「私達に相談してくれたら良かったのに。一人で抱えて辛かったでしょう」


 二人は、以前からマデリンのことを信頼していなかったそうです。


「セシリアが強く言わないから調子に乗ったんでしょうね。他人に秘密を言いふらすこともしないし」


「ありがとう、二人とも……今思えば、私は完全に舐められていたのかしら。そして私に人を見る目が無かったのね。去年ブライアンに相談してやっと、マデリンがおかしいと気付くことが出来たの。もっと早く、学生時代に二人に相談していればこんなに長く悩むことなかったのね」


「まあでも、こうなる前に縁を切っておいて良かったわね。そうでなかったらここに転がり込んで来てたわよ、きっと」


「有り得るわね。『義母に虐められて追い出された可哀想な私!』とか言って」


「……ありそうで怖いわ」


 私は二の腕を押さえ震える真似をして、二人と一緒に笑いました。




 その後、マデリンから一度だけ手紙が来ましたが、ブライアンが先に中を読んで


「君が見る必要はないよ」


 と言って暖炉の火に投げ込みました。またしても同情を誘うようなことが書いてあったそうです。


「マデリンが今こうなっているのは誰のせいでもない。自分のせいなんだ。それがわからないうちは関係を修復するべきではないだろう」


「ありがとう、ブライアン。あなたがいてくれて本当に良かった」


 それからは、二度とマデリンに会うことはありませんでした。





 これで、私とマデリンの十年間の話はおしまいです。聞いていただきありがとうございました。


 皆さんも、構ってもらいたがりの友人とは早めに適度な距離を置いて下さいね。


 ご自分の心が壊れてしまう前に。



(完)

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 すごくありそうな話で、一気に読みました。 セシリアは良い子で、依存されて消耗する過程が可哀そうでした。他の二人の友人や夫が良い人だったのは、彼女が信頼できる良い人だったから…
[良い点] あえて現代物になさらなかったところが、なまなましさや、えげつなさが緩和されてスカッとポイントかな、と思いました。 [一言] いますよねー、こういう人。 お人好しを通り越した優柔不断なターゲ…
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