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公爵令嬢の寄り道  作者: 月圭
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騎士も目覚めた

久し振りの更新です。国王視点は書きやすかったです。

時間的にはエイヴァと対峙するよりちょっと前。


 メイソード王国、その王城にある一室で、彼は大いに悩んでいた。


 彼――メイソード王国国王、アレクシオ・メイソード。


 彼は窓から見える騎士が一つあくびしたのを見て、ぼそりと呟いたのである。


「……たるんでんなあ……」




   ✿✿✿




「でだ、シャロン」

「何が『で』なのか前後を全く説明してないのに分ると思うのかこのすっからかんが」


 年甲斐もないとはわかっているが、抑えきれずに瞳を輝かせて言えば、シャロンに息継ぎもせずに両断された。


 笑顔で。

 笑顔で。


 なんなのこの子相変わらず怖い。


 ともかく。


 ――場所は王城、執務室。


 久々に俺のところに顔を出し、この間のジルを伴う強制魔物殲滅イベントの結果をお知らせしに来たシャロン。


 勿論清々しいまでの笑顔で、


「一網打尽ですわ♪」


 と告げた彼女。


 うん知ってた。だってジルがすごい笑顔で、


「あれほど理不尽且一方的な蹂躙を私は今まで知りませんでした」


 って報告してきたからな。


 楽しそうで何よりだけどシャロンの辞書に手加減という言葉はあるんだろうか。……ないんだろうな、うん知ってた。


 だって今日も容赦なかったもの。

 今日も今日とて度肝を抜かれたもの。


 いい加減慣れろよと思うけれども慣れないシャロンの『息抜きサプライズ』。何処が息抜き? ねえどの辺が息抜き? って追求したいけどさせてくれないのがシャロンだよ。


 挙句に飲みかけていた紅茶を盛大に零すという失態。

 すげえ熱かったんだけど。

 しかも興味本位で自分で淹れたせいで余計に熱かったんだけど。


 自業自得?


 そうだな、シャロンもそう言って爆笑してたよ何なのこの踏んだり蹴ったり。

 まあそれで汚れた服はシャロンが一瞬で綺麗にしてくれたんだけどな。


「アホのアホな失敗のために城の麗しいメイドさんたちの仕事を増やす気なの? 馬鹿なの?」


 と言われたけど。

 メイドよりも俺の優先順位が低い件について。

 国王ってなんだっけ。


 ……ともかく。


「簡潔に、分りやすく説明してくださらないかしら、陛下?」


 にいいっこり、シャロンは笑った。


 背筋を悪寒が走った。


 ので、大人しく従うことにする。


「おおう、ごほん。実はだな―――――」


 で。


 はっきり言えばだ。最近城の騎士がたるんでいるのである。

 それでは国防上も治安上もよろしくない。


 ので。


「ランスリー家の私兵ってシャロンが教育したんだろ? 前に見たけど、アレすごかったから、うちのもちょっと指導してやってくれねえか?」


 ……と、いうことである。


 あれだよ、ランスリー公爵家の護衛部隊は、まあ……。某筋肉達磨と魔術狂を配下に従えたシャロンが鍛えた精鋭で。


 その実力は今回以前の殲滅作戦で目の当たりにしているわけで。

 シャロンの一言で十を察して動く素晴らしい部隊だった。


 ただまあ……なんて言うかこう……ちょっと目覚めてるっていうか……うん。


 すごく楽しそうに、シャロンの師匠連と夜を明かして語り合ってる輩が割といるっていうか……。


 ……いや、気のせいだな。

 それよりも活である。


 あれだよ、特に貴族出身のボンボンたちが、舐め腐った態度をとってんだよ。

 勿論シャロンもとっくの昔にご存じだったようでいい笑顔だった。


 うんこいつ言ってたもんな、「ちょっと気配消して城を歩いただけで、身分とか肩書きを笠に着てメイドさんを口説いてたり時には手籠めにしようとしてるやつとかもちらほら見かける」って。


 規格外とはいえ令嬢が、なんでちょっと気配消しただけで気付かないんだよ。それでも騎士か?


 だから、


「こう……あらぬ何かに目覚めても、私は責任取らないぞ☆」


 と、シャロンが言ってたことなど、俺は華麗にスルーした。

 ……この時点では。



 で。



 現在、俺は呆然としている。


 シャロン?

 すっげ楽しそうに笑ってる。


 青年の姿で。

 うん、青年の姿で。


 なんか一応『シャーロット・ランスリー』としてはっちゃけるのはまずいってことで、『ランスリー公爵家専属護衛部隊所属』の『セン』という名の金髪碧眼の平凡男子に化け治ったシャロン。


 いや化けれるのは知ってた。あの商会でも『シャルル・ラング』としてバリバリ動いてる報告受けてるし。


 だから、俺が呆然としているのはそこじゃない。


「あっはっはっは! さあさあ、反撃しないと体力が削られていくだけですよ☆」


 笑うシャロン。

 場所は城外、王国騎士専用の訓練場。

 逃げまどうはボンボン騎士。


 ブオンブオンと不穏なうなりを上げ、王国騎士(ボンボンども)を追いかけまわすのは巨大なゴーレム。


 ゴーレム。


 しかも炎・氷・雷・風・水流を纏ったより取り見取りカラフルで目にも楽しい仕様ですってシャロンが言ってた。


 そのシャロンはノーマルゴーレムの肩に乗って相変わらずすっげ楽しそうに爆笑しながら騎士たちを追い回してるけど。


 なにこれどうしよう。

 どうすればいいわけ俺は?


 ゴーレム一体でも倒せたら訓練は終了だよ☆ってシャロンは言ってたけど、十メートル級のゴーレムが、一糸乱れぬ統率で連携組んでがっしょんがっしょんと襲い来るのに、実戦経験もないボンボンが反撃できるわけないだろ。


 しかもノーマルじゃなくて魔術纏ってるし。

 なのにシャロンはすっげえ笑顔だし!


 ランスリー領って何? みんなこんな訓練受けてんの? そんで勝つの?

 そんな危険な土地だっけ? 違うよな? 緑豊かな肥沃な土地だよな?


 どうすんのこれ、教育完了する前に全員心折れて実家に隠居すんじゃねえの?


 さすがにそれは戦力不足になるから望んでないんだけど。ニートを量産するつもりはないんだけど。


 だから、俺は。


 盛大に顔を引き攣らせながらも、何とかシャロンに手加減をしてもらおうと、声をかけようとしたんだ。


 俺は間違っていない、絶対間違っていない。


 が。


「あっはっはっはっは!」

「ぎゃああああああああ!」

「助けてえええええええ!」

「命だけはああああああ!」


 阿鼻叫喚の中。

 ……俺は聞いてしまったんだ。



「……もっと」



 二度見した。

 でも()は確かに恍惚とした表情で……。


 ……割とちらほらいた。

 俺は叫んだ。


「あいつ目覚めさせやがった……!」


 ……俺はランスリー領護衛騎士の現状から目を逸らしたことを後悔した。












「何してくれとんじゃ」と喚く国王に「責任は取らないって言ったでしょ?」としゃあしゃあと笑うシャロンがいたそうな。


※因みに

「鮮花」→「鮮」→「セン」です。

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