第三十六話 購入
遅れるかと思ったらぎりぎり間に合った……
「じゃあ、この二つでいいか?」
「もちろんじゃ。けど、わらわは今お金を持ってないぞい。」
「大丈夫。僕が出すから。」
「ありがとうじゃ。」
シュナの服を二つと、自分の選んだ物一つを持って店員の所に持っていく。
ちなみに危ない服シリーズはすべてシュナに元の所に戻させた。
さすがに、自分で戻しに行く度胸はなかった。
あんな危ない服を持って歩くなんてどんなけ恥ずかしいんだよ!
「すみません、この三つを下さい。」
「えっと……三つ合わせて銀貨5枚ですね。」
想像よりもだいぶ高い。
けど、まだまだ財布は大丈夫そうだ。
「カルって使えますか?」
「大丈夫です。」
「では、お願いします。」
財布から紙を取り出して、渡す。
「三万カル丁度頂きます。ありがとうございました。またお越しくださいませ。」
支払いが終わり、店の外にでる。
少々長い時間中にいたからか、空気が美味しく感じられる。
周りの痛い視線もなくなって、肩の荷が下りる。
もう……シュナに自由に行動させる事はできないだろう。
う、嬉しくなんてなかったんだ!絶対に!
「どうしたんじゃ?ものすごい葛藤をしているように見えるのじゃが。」
「心を読んだ!?」
「顔にもろに出ているのじゃ。」
そんなに顔に出ているのかな……
自分で心配になってくる。
ポーカーフェイスが欲しいな……
いろいろ便利そうだし、ちょっと変な事を考えてもばれなさそうだし。
「次はどこに行く?別にどこに行ってもいいけど、変なところはやめてよね。」
「お主、わらわを誤解しておるのではないじゃろうか。わらわは変な事なんてしたことないじゃろう。」
「いや、これまでも何回かやったよね……」
正直言って、いろいろな意味で信じられない。
色仕掛けなんて、あ、あまり好きじゃないから……
頭を無理やり叩いて思考をリセットする。
これ以上進んでいたら戻れない無限ループにはまっていた気が……
「で、次はどこに行く?」
「あそこに行きたいのじゃ!」
シュナが指差したのは、なんだかハートマークが散りばめられた派手な見た目をした店。
えっと……名前は……愛を育む……
「うん、駄目。」
「なんでじゃ!」
「なんか分からないけどダメ!絶対に!」
中がどうなっているのかは全く知らないけど、確か、マサトがお前にはまだ早いといっていた店みたいだ。
ちなみに、性的知識は全く持っていない。
個人的にそういうのは大人になってから知りたい。
マサトが何回か危ない本を貸そうとしてきたりしたが、すべて断ってきた。
まぁ、おばあちゃんに見られたら精神的に死んでしまうし、そう言う事にはまだまだ興味がなかったというのが本当の事だが。
「じゃあ……あのお店に行きたいのじゃ!」
「……え?」
シュナが指差したのは、同じように派手な見た目をした場所。
う……ん……ハートマークもないし、安全な場所だろう。
でも……でも……
「なんで賭博場なんだよ!」
「え?ここは遊び場と聞いていたのじゃが。」
「まぁ、間違えてはいないな。確かに遊び場だ。うん、遊び場だ。でも……大人の遊び場だ!」
「ここは、大丈夫そうなのじゃが。」
「お金も必要だし……まぁいろいろ出来るけどね。」
「それでも行ってみたいのじゃ!」
どうするべきか……
一度社会の厳しさを教えておいた方がいいだろうか。
「しょうがない……行くか。」
「やったのじゃ!速く行きたいのじゃ!」
お店に向かって歩んでいく。
人生初の賭博場……
うまくいけたらいいな……
泥沼にはまって借金地獄にはならないようにしたいな……
「なかなか派手なところじゃのう。」
「まぁ、こういうものらしいからね……下手な事をしないように気をつけてね。」
とりあえず、周りを見渡してみる。
やっぱり、こういう雰囲気の場所にはなれないな……
「おいおい、ちっちゃいお子さんが遊びにきたんかい?ちびっこはとっとと帰りな。」
いきなり、絡まれる。
めんどくさいな……
「ここは年齢制限などなかったはずですが?」
「お子様にはまだ早いっという事だ。ほら、さっさと帰んな。」
「ほう、わらわがお子様ということじゃろうか。」
シュナが少しイラッとした様子で言う。
あ、これは怒ってるな。
お子様扱いされるのは耐えられるが、見ず知らずの人に言われるのは我慢できないのだろうか。
「あぁん?俺に喧嘩を売ってるのか?」
「そうゆうこと……じゃ!」
シュナが風の魔法陣を男の前で突然展開し、速攻で完成させる。
ただ単純に風の現象を発生させただけの魔法だ。
だが、その量が大変な事になっている。
風の方向を限定させていたのが幸いしたのか、災いとなったのか、男は扉の方へ吹き飛ばされていった。
うん……シュナを怒らせるとこわいね……
次回、少しシリアスになります。
でも、第二章の本番ではありません。
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