第三十三話 炭酸
「こ、これは……」
最初に舌に振れた赤いソース。
ちょうどよい酸味と甘みを感じる。
それにミリキーカークの味が混ざり、とてつもない美味しさを感じる。
酸味とミリキーカークのうまみがとても合う。
「これは……止まらないな……」
残っていた部分もいつの間にか消えている。
夢中で食べてしまった。
「最後に……このゼリー……」
中に小指ぐらいのカラフルな球がばらばらに埋まっている。
なんだか、宝石が浮いているみたいだ。
ゼリーの中に浮いている小さな空気の穴がそれを引き立てている。
(プルリ)
スプーンで軽くすくってみる。
ひとつだけ赤い球を入れてある。
スプーンの上でゼリーがプルプル震えているのを見ると、スライムとスライムの核を合わせた物みたいに見える。
そのままゆっくりと口もとに持ってきて舌の上に流し込む。
舌の上でプルプルと動きまわり、ほんのりと甘い感じがする。
それと同時に軽く舌ではじける感じがする。
これは……シュワップを使っているのか……?
そのまま舌を使って、球らしき物をつぶす。
「―――!」
その瞬間、皮を破った感覚がして口の中に新たな風味が生まれる。
甘みと共に微かな酸味。
これは果物か……?
たぶん……イチコかな。
ゼリーの無機質な甘みに新たな甘みが合わさって、絶妙なハーモニーを生み出す。
すごい……
そのままさらに掬って口の中に放りこんでいく。
甘みが強い物や、酸味が強いものまで多種多様な味わい。
一つ一つの球で味が違うのだろうか。
これはオランジの様だな……
他のも一つ一つ味が違って良い。
二つまとめて掬って口に運ぶと、さらに濃い味が口の中にひろがりあらたな味が生まれる。
面白いアイディアだ。
気が付いたら器の上のゼリーが完全に無くなっている。
楽しみ過ぎて気が付かなかった。
「もう一回……お代わりしようかな。」
席を立とうとするが、そこである事に気が付く。
「あれ?シュナは?」
その答えはすぐに出た。
「遅くなったのじゃ。」
「おぉ、おかえ……り……」
シュナの手元は予想通り……ではなくその何倍もの量のケーキで埋め尽くされている。
しかも三段がさねでだ。
もう何十個あるんだろう……
「シュナ……取りすぎ。」
「大丈夫じゃ。これぐらい余裕じゃ。」
「いや、他の人の分は!」
「いや、係員に言ったらまとめてくれたのじゃ。」
係員が手伝ってくれたのか……
ならいいや……
「とりあえず僕はもう一回取りに行ってくるから。」
「了解じゃ。」
席を立ち、もう一度デザートコーナーへ向かう。
今回もミリキーカーク二つにゼリーを一つ。
赤いソースを片方にかけて完了。
最初にとったのと同じものだ。
そのまま席に戻る。
シュナのデザートは既に半分ぐらいになっている。
さすがの速さだ。
数分後、ほぼ僕もシュナも同時に食べ終わった。
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまなのじゃ。」
席を立ち、出口へむかう。
「ありがとうございました。」
係員のお辞儀で送りだされる。
コックの顔がとてつもなく渋い顔になっていたのは気のせいだろう。
なにはともあれ、食べ放題のお店にしておいてよかった。
普通のお店だったら……いくらかかったか……
「次は……どこ行くかな……」
「クルレスさんは待たなくてよいのじゃろうか。」
「あぁ、あいつは放っておこう。」
シュナに変な事を教えたんだ。
ちょっとぐらい罰があったっていいだろう。
「まぁ、まだこっちについていないだろうし。」
「わらわたちが速すぎたのじゃな。」
「じゃあどっか行きたいところある?」
「う~ん……そうじゃ!この旅人の服の代わりがほしいのじゃ!」
「そういえばまだ買っていなかったな。」
町の中で服屋を探し始めた。
次回、未定
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