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Mission-59 『メガネと眠気とヤバいやつ』


 そんな訳でそこそこ距離の縮まった俺と伏見…じゃなかった緋音は、当初の目的通りに生徒会室へと向かい再び歩き出していた。

 

 緋音曰く愉快な仲間たちである生徒会役員諸君。

 だが、そうは言っても俺も昨日の今日で愉快な人物に会いまくっている。変な言い方になるが、ぶっちゃけちょっと個性的ぐらいじゃもうあんまり驚かないと思う。

 ふむっ、意図せずして謎にハードルが俺の中であがっとるな。まぁ、だからといって狂人全開みたいなやつに出て来られても困るけども…。


「は~い、とうちゃ~く」


 考えているうちにどうやら着いたらしい。

 やけに陽気な緋音の声が廊下に響く。そして、止まった位置の横にあるドアを見てみればそこには『生徒会執務室』と心なしか厳格そうな文字の表札が掛かっていた。

 ちなみに俺が緋音呼びになった影響からか先程から伏見はご機嫌+テンション高めである。


「ここが――私の城よ」


「お前のでもないし、城でもないがな」


 サラリととんでもないことを言い出した緋音にツッコみを入れつつ、ドアの小さな窓から室内をチラリと覗き込むように眺める。

 中ではすでに二人の生徒が作業机に向かい、何かを書いている様だった。仕事中だろうか?


「そういや生徒会って何人いるんだ?」


「今は私を除いて三人かな、副会長と書記と会計ってな感じ。もう少ししたら一年生を二人ぐらいお試し期間で入れる決まりがあるから、五人に増える予定だけどね」


「ほぉ~ん」


 緋音の説明に相槌を返しながら、視線を窓から戻す。

 

「ベタに二年二人の三年二人か?」


「そそっ、私と会計が三年ね。ちなみに二年生に一人ヤバいやつがいるんだ~」


「は?」


 そしてそうサラリと結構なことを言うと、俺に何か言う暇を与えずに「じゃあいこっか」と緋音が生徒会室の扉へと手を伸ばす。

 扉がスライドし、当然ながら何のためらいもなく緋音が室内へと足を踏み入れた。

 

 …もうちょい室内の役員たちと一切合切面識のない俺を慮って欲しいんだが。

 あとなんで生徒会にヤバいやつがいるんだよ! そしてなんでそいつを今まさに俺にノリノリで紹介しようとしてるんだよ!?

 そう心の中で軽く愚痴を言いつつ、仕方ないので俺もその後に続く。


「お疲れ様です、会長」「どうもでぇす」


 緋音の姿を見て、室内で書類に目を通していた見るからに真面目そうなメガネの少年とパソコンに向かい何かを入力していた少し眠そうな表情の少女が挨拶をしてくる。

 それに対し、緋音は片手を上げて「はい、おはよ~」と独特の挨拶を返していた。

 いや、今もう夕方になりかけだぞ。なんでおはよう? 芸能人なのかこいつは…。


 相変わらずの一々謎の指摘ポイントをつくるやつだな、こいつは。

 だが、俺もその一挙手一投足にツッコミを入れているほどに暇でもない。そもそも疲れるし。

 とりあえず、「どうも~」と緋音の後ろからひょっこりと顔を出して控えめな挨拶をしてみた。


 すると、当然ながらその二人は見慣れぬ俺の存在に不思議そうに首を傾げた。

 

「えっと、会長。どなたですか? 見慣れない方ですが」


 とりあえずメガネくんがそう緋音に尋ねる。もっともな疑問だ。とりあえずこの少年はくだんのヤバいやつではなさそうだ。

 しかし何故か緋音はそのメガネくんの問いに「ふっふっふっ」とわざとらしく笑う。

 嫌な予感がする。そして、


「この子は私の最高の友にして、生徒会の救世主。――その名も葦山蒼葦よ!」


 はい、嫌な予感的中。

 当然そんな要点を全く得ていない説明に生徒会役員二人はポカン顔。そして緋音は何故か満足げ。そしてそして、俺はリアクションに困り苦笑い。


 生徒会室にメチャクチャ微妙な空気が流れたのだった。


 うん、これあれだな。


 そして、そこで俺は一つ確信した。

 どう考えても緋音が普通に生徒会で一番ヤバいやつなんじゃねぇのか?


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