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Mission-60 『蒼とメガネと飲み物調達』


「んじゃ、今度はこっちが紹介する番ね」


 この困った空気もお構いなしに緋音はそう言って、今度は室内の二人の元へと近づいていく。

 そして、「ほらほら」と手を持って半強制的に座っていた椅子から立たせると、


「こっちが二年生の書記の大代おおしろ輝子きこ。愛称はキーコ。なんか常に眠そうな顔してるけど、中身は意外とすんごく今時風女子よ」


 まずは女子生徒の方を紹介してくる。

 そして、紹介されてしまったのだから当然俺も彼女も無視するわけにもいかない。


「えっと…大代です。まぁ、ちょっと状況がよくわかんないんですが、よろしくです」


「あっ、ああ。三年の葦山だ。こっちこそよろしく」


 少々ぎこちない挨拶を大代と交わす。

 大代としてもぶっちゃけいきなり紹介された『生徒会の救世主(仮)』相手にはどう接していいかわからんだろう。だって俺が仮に大代の立場だったら意味不明のチンプンカンプンだし。

 

 だがしかし、現段階ではこの大代という子もヤバいやつとは到底思えない。

 そんでさっきは「緋音こそが一番ヤバいやつなのでは?」と言ったものの、緋音自身がヤバいやつと言っていたのだからそのヤバいやつの正体が緋音ということはないのだろう。

 つまり、緋音、メガネくん、大代を除く残り一人。今この場にいない人物Xこそがヤバいやつということなのだろう。

 言いすぎて『ヤバいやつ』がゲシュタルト崩壊しそうだ。


「それでこっちが同じく二年生の副会長の高柳たかやなぎよみ。勉強できて真面目だけど、基本的に頭おかしくてヤバいやつよ」


「…は?」


 と、思ってたらお前なのかよっ!?


 サラリと告げられたその言葉に俺は一瞬呆気にとられ、そして心の中でツッコミを爆発させた。

 まさかの展開である。

 ええええっ…、何このメガネくんがヤバいの? ヤバいやつなの?

 

「えーっと、ちょっと待て」


 余りに予想外のその言葉に先程の大代のときと同様に簡単な挨拶交換には進めず、まずは緋音に制止を求める。

 が、ここで更に予想外のことが起こった。


「何をふざけたことを言ってるんですか、会長」


 俺より先にメガネくん――改め高柳くんの方が先に緋音にツッコみをいれたのだ。しかも、「やれやれまたこの人は…」的な呆れ顔でだ。

 なんか普通っぽい!


「いや、私は恐ろしく簡潔に丁寧に説明したつもりだけど」


 そう悪びれもなく言う緋音に高柳くんが「はぁー」とため息を吐く。

 なんか凄く普通っぽい!


「第一印象は大切だとたくさんの本にも書かれています。冗談であってもそんな説明をしては、どう考えても僕はすぐにこの人に距離をとられてしまうでしょう…」


「いや~、冗談のつもりは全くないんですけど」


「まったく…、本当に困った方です」


 これ以上、話しても無駄と悟ったのか高柳くんは緋音から俺へと視線を移す。

 そして、


「一応ご紹介に預かりました、二年生徒会副会長・高柳読です」


「うん、葦山青葦だ。よろしく」


「はい」


 この学校に来て一番普通っぽい挨拶を交わした気がする。

 なんだこの子! なんか凄く凄く普通っぽい! この子全然ヤバくないじゃん!!

 

 緋音めぇ…、完全に俺をたばかりおったな…。

 そんな感情のままに緋音をジト目で見つめると、返ってきたのは「やれやれ」的なニヤケ顔での首を左右に振る動作。

 それはまるで「わかってないな~」と俺に伝えている様だった。

 そして、


「ほれ」


 不意に緋音がポケットに手を入れると、俺に向かって取り出した何かを指で弾いた。

 キィンと軽い金属音と共に、弧を描き向かってきたそれを俺が反射的に出した手でキャッチする。

 

「おっと! …ん? 五百円玉?」


「そそっ。それで蒼とやなくんの二人で人数分の飲み物買ってきてよ。蒼の生徒会初出勤祝いとして会長がおごっちゃるよ♪」


 やなくん、というのは高柳くんのことだろう。

 それと二人で唐突な買い出し依頼。


 つまり、緋音はこう言いたいわけだ。

 

「少し二人で行動を共にしたら私の言いたいことがわかるから」


 と。


 そして、この数分後に俺は知ることになった。

 緋音が何を言いたかったのかを――。

 

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