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Mission-53 『監視とスマホとちょろい送り主』


「おはようございます」

「おはよっす~」


 委員長と二人並び教室内へと入る。

 流石は人気者の委員長。入室時にした軽い挨拶にもクラスメイトの何人かが「おはよ~」「おはよっ、委員長」と振り返り挨拶を返してくれている。

 そして、そんな委員長と一緒に入ってきた俺に対しても少々おずおずした感じではあるが流れで「おはよう、葦山さん」「おはよ」と声がかかる。


 そんな転校初日の昨日よりかは距離が縮まったクラスメイトにちょっと嬉しくなりながら、俺は自分の席へと向かった。

 ちなみに入ったのは教室の後ろ側のドアだったため、途中で「じゃあまた後でね」「おう」と委員長と別れて右前の自分の席へと歩いていく。見ればすでに俺の席の前の友人と横の友人は登校済みの様だ。


「あ――」


 そんな二人に話しかけようとしたところで、彰のことを思い出してふと振り返り確認の意味を込めてそっちの席を見てみる。するとちょうど彰と目が合い、二カッと笑いながら親指を立ててきた。

 うん、やる気十分なのはありがたいけど堂々とし過ぎだろ…。お前に頼んだのはこっそりの監視・・だぞ。

 と、まぁ心の声でそう言っても当然伝わらないので俺も開き直って彰に習うように親指を立て返した。


 そして、それが彰に伝わったことを確認すると今度こそ席につき、


「おっす。隼平、達也」


「あっ。おはよう、葦山さん」

「ん」


 二人に挨拶をする。

 隼平はノートに何か書き込んでおり、達也は文庫本に目を落としていたが俺の挨拶に二人とも反応してくれた。

 達也に関しては二つ返事どころか「ん」の一言だけだが、まぁ昨日に比べたらこれでもマシな反応になったのだろう。一緒にとんかつ定食食った成果だな。


「ふー」


 とりあえず、無事席につけて一安心。そのまま鞄から教科書ノートを取り出して机の中に仕舞っていく。

 同時に頭の中では今のクラスの状況と時間を把握する様に思考を回転させていた。

 

 さってと、現段階の教室内の登校割合は8割くらい。これならあくまでうちのクラスに手紙の送り主がいる場合は、単純計算で8割方作戦が成功するはずだ。

 それにあの手紙がいつ入れられたのかも気になる。今日の朝か、もしくは俺が昨日靴を履いて外に出た後か。今日の朝なら8割と言わず10割方大丈夫だと思うんだが。


 ――いや。


 が、そう考えていた途中である推察に至った。

 『渚隼平に近づくな』というくらいだ。なら、そんな相手が教室に入ってきた俺と隼平の最初の接触を見逃すだろうか? 

 それはないはずだ。つまり、すでに犯人はこの中にいる!


 バシィッ!!、とメッチャ安易な推理と共に心の中でそう名探偵顔負けに高らかに宣言する。

 ならばすでに、作戦は結構しても大丈夫だ。頼むぜ、彰。


 必要な用具を出し終えて、鞄を机の横のフックにかける。

 そして、俺は取り出した用具の中から唯一勉強に関係のないそれを取り出して、ポンポンと隼平の肩を叩いた。


「? どうしたの?」


「いやな、昨日そういや交換し忘れちまったと思ってな。――連絡先」


 そう言いながら俺の手に握られていたのは一台のスマートフォン。

 実はこれも神様が用意した生活用具の一つだ。やっぱり通信手段は今の時代絶対必要だしな。神様もそれはわかっていたらしい。

 

「あー、そう言えばそうだね。ちょっと待って、えっとスマホは――っと」


 そんな俺の提案に隼平は特に難色を示すわけでもなく、鞄からスマホを取り出した。

 そして、二人でスマホを近づけ連絡先を交換する。

 ふっふっふっ、見てるか手紙の送り主。本来の性別なら特段気にかける事でもないが、今の俺は転校生の女子。そんな相手と恐らくキミの思い人であろう隼平が仲良さ気に連絡先の交換。何らかの反応をせずにはいられないはずだぞ。


「よし、これでおっけいかな」


「おっし、サンキュ」


 そして、朝から爽やかな隼平と対照的に心の中でそこそこゲスいことを考えていた俺の連絡先交換は完了した。

 あっ、そうだ。スマホ出したしこの流れで、


「達也。お前も連絡先教えてくれよ、この先使いそうだし」


 そう再び文庫本に集中している達也に声をかける。

 すると達也は面倒そうに顔をこちらに向けると、


「着拒するけど、それでもいいなら教えるぞ」


 そうメッチャ横暴な交換条件を言ってきやがったのだ。

 …うん、こいつやっぱ変わってねぇな。一緒にとんかつ定食食ったのに。

 が、それで「ならいいや」と引き下がるほどに俺も物わかりはよくはない。


「いや、いいわけねぇだろが! 何で着拒すんだよ!?」


「なんかどうでもいい用件でも連絡がきそうな気がするからだ」

 

「しねぇよ。つーか、グジグジ言ってないでほら、スマホを出しなさい。ハリーアップ、ハリーアップ」


「…ったく、仕方ねぇな。なんで朝っぱらからそんなテンション高いんだよ」


 という訳で余計なワンクッションを挟んだが、結果としては無事に達也とも連絡先交換を終えることができた。これで現時点で俺の神様スマホに登録された連絡先は3件。


「はい、完了。 ――ん?」


 そしてそのタイミングで、


『葦山ちゃんの読み通り。マジで反応あったよ~ん♪ 一人、葦山ちゃんに熱視線送ってる子がいま~すよっと♪』


 俺のスマホに最初に連絡先を交換した相手からやけに陽気な通知が届いたのだった。

 手紙の犯人、尻尾出すのはえ~。


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