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Mission-51 『脅しと頼みと男の友情』


「さーってと、どうしたもんかね~」


 下駄箱に入っていた脅迫状?を片手でヒラヒラと持ちながら、俺はとりあえず教室に向かった歩いていた。

 渚隼平に近づくなって言われましてもね~、席は前だし昨日かなり仲良くなったし何よりダチだしな~。

 これでこの手紙に従って距離置いたら不自然感ハンパないだろ。それにこの差出人も目的も不明のメッセージに「はいそうですか」と従うほど物わかり良くないんでね、俺は。


 まぁ、とりあえずは無視の方向でいくとするか――。


「おはよ~、あっしやまちゃん♪」


 と、テキトーにそう結論を出したところでテキトーの塊のような男が俺の肩をポンと叩きながら後ろから話しかけてきた。


「おっす、彰。朝から元気だな」


「そうそう、朝から元気なのよ俺って」


 その謎のテンションの高さに苦笑しつつ、こちらも朝のあいさつで返す。

 相も変わらず髪もキッチリとセットされてるし、制服もキッチリと着崩している。キッチリ着崩すとか日本語的におかしい気もするが実際そうなのだから他に言い様は無い。

 …あと昨日は気付かなかったけど、こいつ結構良い匂いがするのがなんかちょっとムカつくな。


「そう言う葦山ちゃんは元気なさげ? なんかあった?」


 そこで不意に彰がそんな指摘をしていた。

 やはり何かと察しがいいな、こいつ。


「別に元気ないってわけじゃねぇよ。なんでもな―――…いや」


「?」


 その察しの良さに少し驚きつつも、咄嗟とっさに誤魔化そうとしてそう言いかけるが、言葉の途中で考えは変わった。

 一度は無視と決めたがこのまま放置ってのもなんか気持ち悪いしな。こいつ暇そうだしに何となく探る手伝いしてもらうか。

 そう決めて、「ちょっと気になることがあるんだが――」とはてな顔の彰に俺は切り出した。


「ちょっと協力してくねぇか? 朝っぱらから悪いが頼み事だ」


「――ふふっ、美少女の頼みとあっちゃ断れないね。報酬はデート一回、――と言いたいところだけど葦山ちゃんだし無報酬でいいよ」


「ほう、まだ何を頼むかも聞いてないのに太っ腹だな」


「まぁね。葦山ちゃんは特別だしね」


「…特別?」


 その言い方に引っ掛かりそう繰り返した俺の言葉に、彰が「あー…」と言い淀むような声を出す。

 

「明らかに余計なこと言っちまったって顔だな。彰だけに」


「うん、そういうギャグを何の躊躇なく言うところもこう感じる理由かも」


「?」


「あー、うん、もうこの際言っちゃおっかな。でも怒らないでね、葦山ちゃん」


「怒らねぇよ。で、なに?」


「俺さぁ、なんっか葦山ちゃんのことを女の子として見れないんだよねぇ」


「………は?」


 唐突に投げかけられたその言葉に思わずポカンとした声が口から漏れる。

 反射的にバッと自分の身体に触れるが、当然ながらループは起きない。


「いや、昨日二人には言ったんだけどこんなの初めてで自分でも不思議なんだよ。美少女相手にこんな感情を抱いたのは人生で初なんだ」


 そんな俺の動揺には気づかずに彰は話を続ける。

 その数瞬で落ち着きを少し取り戻した俺は「…へぇ」と相槌を打ちながら、並行して今の状況を考えていた。


 簡潔に表現すると『彰は俺のことを女子と思ってはいるが女子と感じてはいない』ってなことか。

 昨日のパッドクイズもあって、彰が俺を男だと日常生活で思うことは無いはずだ。つまり、彰の俺に対する認識は恋愛感情を抱かない程に男子っぽい女子。

 今のところ『女子と感じてはいないが当然ながら男子と思っているわけでもない』、だからループの心配はない。

 …いや、それどころかこれは結構理想的な関係性かもしれない。


「だからさ、俺ん中では葦山ちゃんって女子でありながら隼ちゃんとか聖ちゃんみたいな認識なんだよね。いやホントごめんね、なんかメッチャ失礼なことを言ってる自覚はあるんだけど」


 そして、俺の推論を裏付ける様に彰はそう言った。


「――別に全然怒らねぇよ。むしろ、ありがてぇ話だ。そっちの方がこっちも気兼ねなくていいや」


 そんな彰の言葉に俺はカラリと笑いそう返した。

 すると彰の方も「ハハッ」と笑顔を浮かべると、


「葦山ちゃんならそう言う気がしたよ」


 と俺と同じように笑ってそう言った。


 うん、こいつとは良い男同士の友情を育めそうだ。


「あっ、でも一応生物学上は女だからその辺はちゃんと理解しておくように」


「もっちろん。男友達みたいには認識してるけど、同時に女子としても認識してるから」


「ならば、よろしい」


 そして、念のため男の娘バレ防止用にそう釘を刺すと、


「んで、ずいぶん話がズレちまったけどさっきの頼みのことなんだが――」


 そう廊下を歩きながら、教室までの道すがら俺は友達にある頼みごとをしたのだった。


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