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Mission-32 『女子と苦手と新たな友人』


「うんっ、美味い。やっぱでかい学校は学食も美味いな~」


「前の学校はそうでもなかったん?」


「あー、学食自体無かったしなぁ。そもそも学校で買える飯自体が購買で売ってるパンくらいだったよ」


「へえ~、やっぱり学校によりけりですねぇ。…というか今さらながらその量食べ切れるんですか、葦山さん」


「ん? こんくらい余裕も余裕。伏見には言ったけど、朝から色々あってお腹減ってるんだよね」


「…なるほど、確かに朝から葦山さんは大変そうでしたしね」


「あー、牡丹から聞いたよ。なんか私と別れた後に学校の中を迷子になって彷徨さまよってたんだって?」


「別に彷徨っては…いないとは言い切れないな…。まあちょい彷徨いのちょい迷子的な? まぁそれでもすぐに救いの手を二つ見つけたからな」


 そんなこんなで適当に世間話に興じながら昼食中。

 渡辺は別に積極的に会話に入ってくるわけではないが、俺たちの話を興味深そうにそしてどこか楽しそうに聞いていることから疎外感は感じていないだろう。

 よかったよかった。


「あっ、そういや三人はここの学食よく使ったりするのか?」


「私は結構使うよ、ほぼ週五で使ってるんじゃないかな」


「同じくです。凄いリーズナブルなんで重宝しています」


「…えーっと、私は結構久しぶりかもです。三か月ぶり…くらいかな」


 俺のその何気ない質問に伏見と委員長は同じような答えだが、渡辺だけはどこか言い淀むようにしながらそう二人とは違う答えを口にした。

 へぇ~、あんま使わない子もいるんだな。


「ふーん、もしかして普段は弁当とか? あっ、でもさっきパン買って食う的なことを言ってたか」


「あー、はい…。だいたいこの三か月のお昼ご飯は購買のものを食べてました。どうしても一人で購買に行く勇気は出なくて」


 ふーむ、一人でってことは言っちゃ悪いがやっぱ渡辺はあんまり友達がいないタイプだと。それか仲のいい友達がだいたい別のクラスとかなんかな?

 どっちにしろ誘ってよかった。

 あと、とりあえずこの話題は切った方がいいな。渡辺にしては面白くないだろうし。

 そう思い、「そっか」と軽く相槌だけ打って別の話題を振ろうとしたところで、


「え?」


 と何故か不思議そうに委員長が声を漏らす。

 しかし意識せずに出た言葉なのか、口にした後にハッとしてすぐに自分で口元に手を当てる。


「どったの、牡丹?」


「…あー、ごめんなさい。別に何も」


 その委員長の様子を疑問に思ってか伏見がそう問いかけるが、委員長の方は何かを気遣うようにそう言葉を濁す。

 俺も何となくそれが誰に対しての気遣いかを察して黙ってスルー。

 が、


「いいよ、椎葉さん。気になってるなら遠慮なく聞いて」


 そこで渡辺がそう口を開いた。

 あー、やっぱ渡辺関係なのね。で、恐らくその内容は…。


 渡辺の言葉に「そう?」ともう一度確認をとるようにそう言うと、意を決っする様に委員長が一度コホンと小さく咳払いをすると、


「あの、私の記憶が確かなら渡辺さんって一年生の頃は日下部さんたちのグループの人たちと一緒にいたよね。そのときはあの子たちと学食も一緒に行ってたし」


「…うん」


「それで二年では私は別クラスになっちゃったからわからないんだけど…もしかしてその時に何かあったの?」


 そう十二分に言葉を選びながら話しているのがこっちにも伝わってくるくらいの口調でそう渡辺に問いかける。

 

「日下部って確か同じクラスのあのキャピキャピしてそうな女子だよな」


「キャピキャピて…。まぁ言いたいことはわかるけど、そして合ってるけど」


 そこで一応確認のためにそう俺が言うと、伏見が苦笑しながら答えてくれる。

 ふーん、まぁ話したことないよく知らない人のことを知った風にごちゃごちゃ言うつもりは無いけど、何となく渡辺と合わなそうなタイプにみえるけどなぁ。


「えーっと、そうですね。まぁ、みんなの想像通り…かな? 実は二年の時にちょっとあってね、そっから無視されてると言いますか、ハブられてると言いますか…」


「あー…」


 そして、続いた質問の答えに渡辺の言うように何となく察しがついていたのか委員長がなんとも言えない様な声を息を吐く。

 

「うーん、もうここまで来たら隠す意味もない気がするから全部言っちゃおっかな…。実はそのとき愛姫ちゃん――日下部さんが好きな人にプレゼントあげたいってなってね。一人じゃ好きってあからさまだからグループのみんなもその好きな人の友達に何かプレゼントして欲しいってなってね」


 少し悲しそうな表情で食べる手も止めて、渡辺が今の状況になった経緯を説明する。


「なるほど、それで渡辺さんがそれを拒否ったらハブられたと」


 そして、その説明が完全に終わる前に伏見がそう締めくくる。

 そこ言葉に同意する様に渡辺も小さく頷いた。

 …って、えっ終わり!? それだけで一年以上付き合ってた友達を仲間外れにしたってこと?


「なんだそりゃ? 同調圧力ってやつ? うわぁー、俺女子のそういうのマジで苦手だわ」


「あんたも女子だけどね」


「そういうの良くなくない、理解できんわぁー。みんな一緒じゃないとだめってやつだろ、あーヤダヤダ。もう一回言うけど、それ女子の一番苦手なところだわー」


「もう一回言うけど、あんたも女子だけどね。――とまぁ二回もツッコミを入れはしたけど、意見自体は私も蒼とほぼほぼ一緒だね。聞く限りじゃ少なくとも渡辺ちゃん、悪くないでしょ」


 それに対する俺と伏見の意見はどうやら一致したようで二人してマジで心底理解できない様な表情を浮かべる。

 そりゃ人間関係だし女子には女子の事情が色々とあるかもしれんけど、それで無視で「はい、友達辞めます」ってのはどうなのって話だろ。

 

 そして、そんな俺たちを渡辺の方は少し驚いた様な表情で見つめてくる。

 俺と伏見のリアクションが予想外だったのだろうか。まぁ、そもそも女子じゃない俺は論外にしても、伏見もそうとう変わってる女子の部類だろうからな。


「えっーと…」


「フフッ」


 そこで口を開こうとした渡辺の声にかぶさるように委員長が小さな笑い声をあげると、


「安心してください、渡辺さん。緋音ちゃんも葦山さんも、もちろん私もそういったタイプではないので。友達にしたくないことを強制なんかしないし、何かあっても無視したり仲間外れにしたりもしませんよ。だから、これから新しいお友達としてお昼は私たちと一緒に食べましょう」


 そう言葉を続け、後光が差しそうな穏やかで優しい笑みを浮かべる。

 そして、


「――はい。え、えっと…こっ、こちらこそよろこんでお願いします!」


 とニッコリ笑いながら渡辺が大きく頷いた。


 ハハッ、これは委員長に良いところを持ってかれてしまったな。

 てなわけで、俺にまた友達が一人増えました。

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