Mission-24 『たらしと部活と十分休憩』
「「おー!!」」
俺の自己紹介に拍手と共に黄色い声援が教室を満たす。
…いや、黄色い声援ってちょっと違うか。あれはなんか女子がワーキャー言ってる感じをさした言葉だっけか。この場合ほぼ男子だし、なんて言うんだ? 赤い声援とかか?
「つーわけで、みんな仲良くしてやるように。おーし、葦山とりあえず席につけ。席はそこな」
「ん。あっ、はい」
そこで先生が俺の背中をポンと叩き、空いた席を指差す。
先生が教えてくれた席は窓側の前から二列目。ちょうど隼平の後ろの席だ。
知り合いが近くにいるのはラッキーだな。
その指示に従い黒板の前からその席まで移動する。
さらにその途中で、
「おっ、委員長。朝はホント助かった」
教室のちょうど中央辺りの席に座る椎葉を見つけて軽く手を振る。
すると彼女の方も小さく手を上げ、少し恥ずかしそうに笑いながら微笑んでくれた。うん、改めて見ると何か一つ一つの仕草に品があるな。牡丹って名前通り、何か大和撫子感がある。
脳内で委員長にそんな印象を付け加えつつ、席まで着いたところで椅子を引き着席する。
というか俺が今日あった三年全員同じクラスなんだな。すっげぇ偶然。
そんなことを思いながら、目の前に座るその中の一人の肩を軽くポンと叩き、
「さっきは助かったよ、サンキュ」
と声をかける。
すると、
「どうしまして」
と短い言葉と共に後ろ手をヒラヒラと振る仕草が返ってきた。
カッケェな、おい! やっぱこいつえらくモテるんだろうな~。
「っつーわけで、これにてSHRは終了。この後は午前中の時間で最初に自己紹介でもした後に色んなこの一年の委員や係を決めて、午後はお前らも知っての通り新入生に対する部活動説明会だ」
そこで教壇の先生が先生っぽいことを話し出す。
そして、
「じゃあ、十分間の休みだ。ベタに転校生の机の周りにでも集まって質問攻めにでもするといい」
と最後に余計な言葉を言い残して、「ハハハッ」と愉快そうに笑いながら教室を後にしたかと思ったら次の瞬間に示し合わせたかのようにチャイムが鳴った。
――キーンコーンカーンコーン♪
そして、それが合図になりドドドドドッという音と共に同級生たちが俺の机に向かってきた――などということはなかった。
「――――――」
…あれ? マジで? さっきの先生の言葉もあってか普通に席の周りにクラスメイトが集まるの覚悟してたんだけど…、俺もしかして実は人気ない?
正直この反応は予想外だ。
つーか、さっきまでのこいつらの元気はどこいったんだよ!
その感情を表に出すわけにはいかないので、心の中で気持ちが溢れる。というか、マジなんでだ?
「なぁ、隼平」
「どうしたの?」
というわけで困ったときの隼平くん。
その答えを求めて再び肩を軽く叩くと、隼平は椅子に座ったままにクルリと上半身を回転させてこちらを向く。
「なんか、さっきまでとは違って休み時間入ったのに静かなんだけど。先生の言うように普通転校生が来た最初の休み時間ってなんかわぁーって集まってくるもんじゃないのか?」
「いままではそうだったの?」
「いや、初転校だからわからん」
「うーん、俺も転校経験はないからわからないけど…普通に考えたらあれじゃない?」
「あれ?」
オウム返しに聞き返すと、隼平は軽く頬をかくと少し困った様に笑う。
そして、
「あんまりこういうこと言うのは恥ずかしくて好きじゃないんだけど…葦山さんってさ、美人さんじゃん。だから、みんないざ話しかけるってなったら話しかけ辛いんじゃないの」
そんなことを言ってきた。
「いや、でもさっきまではあんだけ盛り上がってたじゃんか」
「集団心理ってやつじゃないかな。みんなで盛り上がるのと先陣切って直接話しかけるのだとハードルがだいぶ違うんだよ」
「ほぉー、なるほど」
つまりさっきまで盛り上がってた男子たちは、今は美人過ぎる俺を見て話しかけるのを臆していると。
うん、自分で言っててクソ程気持ち悪いな。なんだよ、男なのに美人過ぎる俺って。
…でも、何となく隼平の説は的を得ている気がしないでもない。
と、思っていたのだが
「よし!」
いきなりドンと机を叩く音と共に男子生徒の声が教室に響いた。
その突然の出来事に俺と隼平とその他クラスメイトの視線がそこに集まる。
そこでは一人の男子生徒が机から立ち上がり、こちらを向いていた。
結構女子受けしそうな容姿をしている男子だが、それは軽くパーマが当てられ栗色に染められた髪や細い眉、耳に着いた小さなピアス、少し着崩した制服など外付けのパーツによる影響が大きい。
隼平が天然イケメンだとしたらこっちは人工イケメン的な感じだ。
そして、その人工イケメンは立ち上がった勢いそのままにこちらへと歩いてきた。
おっ、これは高いハードルを乗り越えて俺に話しかけてきてくれるパターンか?
そんなことを思っていると不意に横の隼平の表情が視界に入る。
ん? 何故か隼平は少し呆れた様な表情で苦笑していた。
「はじめまして、転校生さん」
「おー、はじめまして」
そして予想通りその男子生徒は俺と隼平の真ん中辺りまで歩いて来て、爽やかな笑顔でそう挨拶をしてきた。
うーん、人当たりはよさそうだけどやっぱどこかパチモン感があるなこいつ。
「俺は御門彰。彼と同じサッカー部なんだ」
そして続く自己紹介でその正体が判明した。
なるほど、隼平のさっきの顔はこいつのことを知ってたから出たものだと。そんであの表情ってことは何となくこいつの性格というか性質が察しがついたぞ。
「ちなみに凄い女性誑しとして校内でもそこそこ有名だよ」
「あー、やっぱな。そんな感じするわ」
そして、補足した隼平の言葉で秒速で答え合わせが完了した。
うん、イメージピッタリだな。
「ちょっ、隼ちゃん!? いきなりそれはないよ~!」
「事実だろ。まったく…、少しは節度を持ってほしいよ。というわけで葦山さんも気をつけてね」
「俺は全く興味ねぇから大丈夫だ」
「脈無し無し無しじゃん! というか俺まだ何も言ってないよ!?」
「あっ、そだ。それはそうとして隼平も彰もサッカー部だろ、せっかくだし交流深める為に今年のJリーグの順位予想しようぜ」
「…それはまた唐突だね」
「おっ、葦山ちゃんサッカーいける口? いいじゃんいいじゃん、やろっ。…って、ん? 今、名前で呼んだ?」
「確か朝のスポーツ新聞に現時点でのプロ野球とJリーグの優勝予想が載ってたんだよな~」
そう微かな記憶を口にしながら再びバックからスポーツ新聞を取り出す。
思えば今日は朝からこいつに助けてもらってばっかりだな。まったく、何が役に立つかわからないもんだぜ。
そんで更に共通の話題の橋渡しにもなるんだから頭が上がらない。購読しようかな?
――キーンコーンカーンコーン♪
が、まさかの話し始める前にチャイムが鳴る。
その音を聞き「あらら」と隼平が前に向き直り、「おっ、やばっ! サッカー談義はまた今度ね」と瞬時に彰が自分の席にとんぼ返りする。
そして、彰が席についた瞬間に扉がガラッと開くと出席簿で自分の肩をポンポンと叩きながら浅見先生が教室に入ってきた。
「おーしっ、じゃあ一先ずは新クラスなわけだし自己紹介から始めっか」




