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Mission-21 『友とプランと四足歩行』


「そういやお前さり気にもう友達できたとか言ってたよな。見かけによらず手が早いな」


「なんすか、その引っかかる言い方は…。一人は通学途中に会って、二人は職員室への道を教えてもらっただけですよ」


「つーことは、入学初日の朝ですでに友達三人か。ハハッ、一週間で友達100人できそうだな。誰だ、教えてみ」


「生徒会長の伏見と多分サッカー部の隼平と委員長の椎葉さんっすね」


「おーそらすげぇ、三年の人気者大集合だな。………で、それはさておき一個聞いていいか。何で渚だけ名前呼びなんだ」


「…あー、なんつうか俺って昔から女子よか男子の方が話し合うんですよね。だから相手にいやがられなきゃ自然と下の名前で呼んじゃうんですよ」


「そりゃまたパンチの効いた理由だな。ぶっちゃけお前一部の女子からメッチャ嫌われるタイプだろ」


「いやぁー…、そんなことないですけどねぇ」


「? そうか」


 今度こそ教室に向かいながら先生と世間話に興じる。いやっ、興じると言うほどの余裕はないか。

 ぶっちゃけ、最初に決めた俺の元の性格言動そのままでいくという作戦がここに来て段々と不安になってきたのだ。

 やっぱ一人称ぐらいは私、話し方ももう少し女子っぽくした方が良かったかもしれないと今さらながら後悔中。男子だけ名前呼びで女子は苗字呼びの女子とか、目立ちすぎるだろ。

 正直言うと会った全員に軽い違和感は与えているという自覚はある。が、ここに来てそれを改めるのもどうかと思うのも事実。

 

 ――よし、もしそれが男の娘バレの原因になる様なら変えるか。今のところ変な女子生徒と思われることはあっても変な女装男と思われることはない訳だしな。


 そう自分の中でルールを決めると、


「さぁー、葦山。ここをまっすぐ進んだ一番端の教室が私たちの教室だ」


「へぇー、でなんでここで一端止まったんですか」


「最初に言ったろ、サプライズ感が大事だって。つまり段取りとしてはこうだ、まずは私が教室に入りお前の新たなクラスメイトたち相手に期待を煽る様にお前のことを紹介してやる。そんで室内が十分に盛り上がったところでお前を投入するって算段だ」


 そう説明しながらニヤッと先生が笑う。

 そんな謎のやる気に少し呆れつつも、


「わかりました、それでいきましょう」


 と了承を返した。


「そんで紹介のために聞くけど、お前恋人はいるの?」


「…直球ですね。いませんよ残念ながら」


「いたことあるのか?」


「……あいにくと、そういう機会には恵まれませんでした」


「えっ、マジか…!?」


「マジですよ、つーかあんた俺を何て紹介する気だよ…!?」


 普通に聞いてくるから思わず普通に答えちまった…。つーか、その驚きのリアクションは普通に傷つくんだが。

 そんな俺の地味に傷ついた内心を知らずに、答えを聞くと横の不良教師は「ふむふむっ」と満足げに頷いていた。そして、


「よしっ、ホントはもうちょい聞くつもりだったけど今ので十分だ。私がもう凄まじくイカした紹介をしてやる。安心して教室のドアの前に控えてろ」


「ヤバい、えげつないくらい嫌な予感がするんですけど。マジ余計なこと言わないでくださいよ、俺は一年間平穏平和に暮らせればそれでいいんですから!」


 が、そんな俺の心の底からの叫びは当然の様に届かず「任せろ、よし行くか」と先生が廊下を前へと歩き出してしまう。

 そして、すぐに三年一組とドア表札が書かれた教室の手前まで辿り着く。

 ――あっ、隼平いんじゃん。前のドアの一番近くの席。ん? なんで渚なのにあの席なんだ? 普通最初の席って名前順なんじゃないのか?


 と、そこで見つけた新たな友人の後姿とその座っている席に少し疑問を覚えていた俺だったが、


「よしっ、ここからは四足歩行で進め」


 と横から謎の指示が飛んできた。

 なんでだよっ!?


「なぜにですか…?」


「アホか、そのまま歩いて進んだら窓からお前の姿が見えるだろ」


「そんなに徹底すんのかよっ」


「あったりまえだ、ほらいくら小声でもずっと話してたら聞こえちまうかもしれないだろ。声で気づかれるなんてそれこそ興ざめもいいとこだ」


「…もぉ、しょうがねえなぁー」


 その急かしまくりの声にしょうがないから指示通り廊下に四つん這いのような体勢をとる。

 何やってんだ、俺は…。

 いやっ、下手に冷静になるな! マジで今の俺の体勢はアホ感が強すぎる。ここで冷静になっちまったら羞恥心に蝕まれて精神ダメージを受ける気がする。


「これ、前からか後ろから誰か来たら転校生はヤバい奴って噂立ちません? さっそくやらかす匂いがプンプンするんですけど」


「というか、自分で言っておいてなんだがお前普通に廊下に膝つくのに抵抗ないのな。どんな女子高生だ、だいぶ変だぞ」


「ホントにあんたが言っておいてなんだな!? あんたがやれって――」


「しー、静かにしろっつってんだろ。それに安心しろ、噂が立つ立たないない以前にこの時間にはもう生徒も教師も普通に教室でSHRだ。今から廊下になんて誰も来やしねぇ――」


「ふぅ~、朝から疲れた~。あっ、あーちゃん先生おはよー! …って、あれ? えっ……、廊下で何してんの、蒼」


 ピロリン♪

 教室の先の角から生徒会仕事終わりの伏見が現れた!!


「「…………………………」」


 そして、鉢合わせた浅見先生と俺は黙り込んでしまった。


 おいおいおいおいおいおいおい!?!?

 さっそくじゃねぇか、やらかしてんじゃねえか! どうしてくれんだ、このアホ教師!!


新規メモ:伏見緋音について


この物語の主要人物その①。年齢は17歳、身長は162センチ程。

風寺学院高校生徒会長。会長選挙では圧倒的な得票率で当選し、その裏表のない明るく人懐こい性格から先輩後輩男女問わずに人気がある。その上、学業優秀で運動神経も人並以上で尚且つ美人の超ハイスペック女子高生。

しかし、その清廉すぎる人柄ゆえ苦手意識を持つ生徒も一部存在する。

好物は肉と魚。生活必需品は飲むヨーグルト。

現状、葦山蒼葦ループさせ回数1位(1回)

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