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第286話 二夜連続

 というわけで今日も屋敷に帰ってきました。

 昨夜は夕飯食べ損なっちゃったけど、今日はしっかり食べたい。

 ユーニャも今日は部屋ではなく食堂で待っていてくれた。

 なんとなく恥ずかしくてユーニャの顔を見た瞬間顔がすごく熱くなっちゃったけど。


「ただいま、みんな」

「おかえりなさいませ、セシーリア様」

「ねえね、おかえりー」

「おかえり、セシル」


 アイカとクドーもそれぞれに帰宅の挨拶をすると早速ステラが夕食の用意をしてくれる。

 今日の夕飯は…ボーガーダというアボガドに似た野菜を使ったサラダと砂貝と言われる汽水域で取れる貝を使ったパスタだ。

 ステラには前世のいろんな料理を教えているのでとにかくレパートリーが広い。自分は全然食べないのに味も良く見た目も一流シェフ並みの腕だったりする。

 一応屋敷にはステラとは別にシェフを雇い入れたんだけど、あちらは使用人達の食事を作るのみで、私達の食事を作るのはステラが変わらずに担当している。

 そのシェフは私の食事も作りたいと言ってるらしいけど、まだステラが合格を出すに至らないレベルらしいので、しばらく私とは顔を合わせることもほとんどないだろう。

 ちなみにメイドも追加で雇ったけど、私の身の回りはステラとセドリックで固められているため、彼女達の出番はディックとユーニャ、それにアイカとクドーに割り当てられている。

 なので彼女達は私の私室どころか執務室にすら入室を許可されていない。

 ステラから進められるままにワインも飲んでちょっとだけ気分が良くなってきたところで食事も終わり、私は飲みかけのワインボトルを空にするためもうちょっとだけ頑張って飲んでいる。

 アルコールはいくら摂取しても私が酔うことはないから、本当に水分だけを取ってるようなものだけどね。この世界のワインは前世のものに比べたら薄いしさ。


「ディッカルト様。セシーリア様はまだワインを嗜まれるようですので先に湯浴みなさいますか?」

「んー? 僕も後でいいよ。どうせまだまだ寝な……っ、う、うぅん。やっぱり先に入るね! ステラ、着替え用意してくれる?」

「畏まりました。お持ちしておきますので先に浴場へとお向かい下さい」


 なんだろ?

 なんか今ディックの様子がおかしくなかったかな?

 ステラを見てもいつも通りの無表情だし、魔道具作ってて汚れちゃったのかな?


「そういえばセシーリア様。セドリックさんよりこちらを預かっております」


 ステラは胸元に手を差し込むと一枚の手紙を取り出した。

 っていうかステラの服は服じゃないよね?!

 何さり気なく亜空間から取り出してるのっ?!

 言いたいことはあるけどひとまずそれを飲み込んで、ステラから渡された手紙に目を走らせた。


「セシル、セドリックさんはなんて?」

「あー…、まぁディックのことだね。まだギリギリ間に合うからディックを貴族院に入れたらどうかって話。ご丁寧に申込書まで同封されてるよ」

「ディックを? そっか、もう十一歳だもんね。本当なら去年からだけど、三年までは遅れて入れるんだっけ?」

「うん、養子とかで急に貴族になっちゃった人の為にね。…うわ、入学金とかって実は白金貨十枚もしてたんだ」


 前世で言えば一千万円だ。

 貴族しか入れないとは言え、これは高い。

 お金の無い家でも嫡男なら入学金は無料らしいけど、ディックは嫡男じゃなくて当主である私の弟だから無料にはならない。

 しかし、そうなると従者を一人つけないといけないね。

 …従者の入学金は白金貨五枚だ。私はこれをクアバーデス候に出してもらってたってことだよね。


「従者を誰かつけないといけないんだけど、どうしよう? アイカやクドーに頼むわけにはいかないし、ミオラは卒業したばっかりだよね。うーん…」

「リーアさんにお願いしてはいかがでしょう? 彼女も礼儀作法や貴族のことを知る良い機会になるかと思います」

「リーアかぁ…。それもいいかな? オズマやロジンじゃ貴族相手にも喧嘩売っちゃいそうだし、実力もちょっと不安だもんね」


 確かにそれは良い考えかもしれない。

 彼女には貴族院に入ってる間に特別手当てを支給するようにすればいいだろうし、私の時と違って毎週屋敷に戻ろうと思えば戻れるのだから。但し申請しないと外泊は出来ないから、屋敷に来ても寮には帰らないといけないんだけどね。


「よし。じゃあセドリックにはリーアから了承の返事がもらえたら申込みしておくように伝えてくれる?」

「承知致しました。後程伝えておきます」


 ステラは私の答えを聞くとすぐに姿を消した。

 リーアに返事を貰いに行ったのか、それともディックの着替えを用意しに行ったか、相変わらず動きの早いことで。


(メル、いる?)

(なんなのだ?)


 私は最近無視しっ放しのメルに声を掛けた。

 放っておいても文句は言わないんだけど、折角の強力なオリジンスキルなんだから使わないと損だろう。


(私ってこのままユーニャと…その、そういう関係になっていいものかな?)

(セシルの好きにすれば良いのだ。どのみちあの娘ではセシルの寿命には付き合えないのだ。長い寿命の中でそういう仲になることは悪いことではないのだ)


 なかなかはっきり言ってくれるね。

 確かに英人種の寿命は五百年ほどとかなり長い。対してユーニャはただの人間だからどんなに長く生きても百年が限界。残りの四百年のことを思えばあまり深い仲になるのは考えものかもしれない。


(しかし管理者になれば、それもあまり意味がないのだ。管理者にはサポート役として五人までセシルの寿命と同じだけ生きることが出来るようになるのだ)

(…は? てことは私が管理者になればユーニャとずっと一緒にいられるってこと?)

(のだ。それが良いか悪いかは別として、なのだ)


 良いも悪いも無い。

 やっぱり私がユーニャとずっと一緒にいるためにも、私は管理者にならないといけないよね。

 …って、別に私とユーニャは恋人同士とかそういうのじゃないよ?!

 親友としてだから!

 勿論ユーニャの気持ちが最優先だけど!

 あれ? ていうか私は極ノーマルなはずだよ? 恋愛対象は男性……じゃなくて宝石のはずなのに?!

 うん。私も少し冷静になる必要があるね。


「セシーリア様、ユーニャ様。ディッカルト様の入浴が済みましたのでどうぞ」

「はーい。セシル、行こ」

「あ、うん。ステラ、着替え用意しておいて」


 …って、普段なら私にしか声掛けないのになんでユーニャも一緒に呼んだのっ?!

 ステラ、恐ろしい子…。


「あ、そうだ」


 私はステラのすぐ側まで行くと彼女に近付いて耳打ちをする。


「一応万が一があるといけないから言っておくけど、覗き見しちゃ駄目だからね」

「承知しました。監視のみに留めます」

「監視も駄目!」

「でしたら音声のみ盗聴しておきます」

「盗聴って言ったよね?! それ駄目なやつだから!」

「…はぁ」


 なんで私が溜め息つかれなきゃいけないの。溜め息つきたいのはこっちだよ!


「わかりました。監視も覗きも盗聴もしませんのでご安心下さい」

「わかればいいんだよ。じゃ行ってくるね」


 ようやく聞き分けてくれたステラから離れると私はユーニャより先に浴場へと向かった。

 ユーニャの分の着替えを用意してから来るそうだ。




 お風呂は普通だった。

 そりゃ昨日やっちゃったばかりの若い二人だし?

 妙にくっついたりするけどさ。唇同士とか身体同士とか?

 身体と髪を洗う時くらいしか手を離さなかった気がするよ。離さなかったね。

 まさか自分がこんなことになるとは全く思わなかった…。そんなことするのなんて一部のリア充だけだと思ってたのに、自分もいざそういう状況になれば、同じことをしちゃうなんて思ってもみなかった。


「あの…ユーニャ、さすがに手を離さないと身体拭けないんだけど…」

「大丈夫! 私が拭いてあげるから!」

「い、いや、その…ちょっと、子どもみたいで恥ずかしいしいいって」

「セシルは…私にそういうことされるの嫌なの…?」


 えっと…ユーニャがちょっと病んできてるような…。

 ん? この気配は…。


「でしたら私がお二人とも拭いて差し上げます」

「きゃぁぁぁっ! って…ステラ?」


 やっぱり近くに空間の揺らぎがあったからもしかしてと思ったらやっぱりステラだった。


「使用人として当主とその奥方の身の回りのことをするのは当然でございますので。決して疚しい気持ちなどこれっぽっちもありません」

「疚しい気持ちがない人はそもそもそんなこと言わないからっ! っていうか覗き見しちゃ駄目って言っておいたよね?!」

「はい。ですからこの脱衣室で仕事をしておりました。何やら聞こえた気がしますが、当主様方の秘め事など聞き流しております」

「…それって聞いてたってことじゃんか…」


 私の文句を聞きながらもステラはテキパキと私とユーニャの身体を拭いていく。

 自分の手で私を拭けなかったユーニャは少し不満そうだけど、おかげでずっと手を繋いだままでいられたからかステラには何も言わなかった。

 但し、流石にそのままでは寝間着を着ることが出来なかったのでようやくそこで手を離してくれた。

 それにしても、何故か用意された寝間着が昨日までの物と違って少し艶っぽい感じがする。加えて、私が黄緑色でユーニャは水色のお揃いだ。

 付き合いたてのカップルみたいなペアルックはどうかと思うんだけど、ユーニャはかなり嬉しそうに微笑んでいるので私も苦笑いで誤魔化しておいた。

 その後、私の私室へと二人で入ると早速ユーニャに押し倒されてしまったのは言わずもがな。

 一日経って少しだけ痛みもマシになったとは言え、ユーニャの執拗な攻めに私が抗うことは出来なかった。


 翌朝。

 カーテンが閉められて薄暗い室内。私の横には今朝も水色の髪の美少女が寝ている。

 あれ? なんで私腕枕されてるの?

 当主って私だよね? つまり私が主人じゃないの?

 昨夜の曖昧な記憶を思い出そうとすると顔がどんどん熱くなってきて思わずシーツを被って悶えてしまった。

 ユーニャってばあんなところにあんなことするなんて思わないよ!

 というかどこで覚えたのそんなこと!

 しかもまた極鋭感(エクスセンス)まで使わされて大変なことになってたのにアイカから渡された道具まで使って!

 薬は全然効かなかったけど、薬が効いたユーニャにとんでもないことばっかりされちゃったよ。

 これって一種の魅了なのかな。異常無効ってユニークスキルはあるのに、こういうことには無効?

今日もありがとうございました。

感想、評価、レビューなどいただけましたら作者のやる気が出ます!

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[一言]  極鋭感(実質は対○忍的な感度○○倍)の破壊力。 >わかりました。監視も覗きも盗聴もしませんのでご安心下さい  護衛とか警備とかの名目でゴリ押すかと思ったら、メードの仕事って言うか一番…
[良い点] ご馳走様です......! セシル、そろそろ自覚しようよ...!! [気になる点] やっぱりノクターンが気になりますっ!初夜でも今回のでもどっちかだけで良いから読んでみたいですね.....…
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