1/21
ホオズキ達のプロローグ
スギナが顔を出し始める春のころ、救急隊が事故の被害者を救うために出動した。
頭蓋骨が完璧に割れている。救急隊達は絶対に助ける気持ち半分諦め半分だった。
楽園へ飛び立つ準備を始めているのは、脈が弱くなっていることからわかる。
「ん、」患者の声が聞こえる。今にも消えてしまいそうな声。
搬送先の病院へ引き渡し、救急隊員はすぐに事故現場に戻り先輩に報告した。
信じられないことを加害者は言った。その言葉で腸が煮えくり返りそうだった。
縫ってやる、奴の口を。このは事件後に胸糞悪い事件として語り継がれた。
つい3年前に起きた事件。吐きそうだ。私はスマホでこの事件の犯人の顔を見た。
モラトリアムの期間彼は何を考えて生きてきたのだろう。何を確立したのだろう。
律することができない感情が彼女を襲う。悲しみと憎悪。許せない。
宵月が照らす光を頼りに彼女は机ではなく彼女の黒い膝で何かを書き始めた。




