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朝食を食べ終わった後、ジェームズは使用人の一人に頼んで新聞屋のジョーン君を呼びに行かせた。正午になってから、ジョーン君が玄関に姿を見せると早速、ジューリア・ロッシがロンドンの宝石店エアリス・ジャーン本店に予告状を出した時間と、宝石店のどこにあって、誰が、その予告状を知ったのかを聞いた。
それから、大急ぎでサーリー駅へ向かい。13時18分の列車でロンドンへ向かった。
ロンドン駅は丁度、ラッシュアワーだったようだ。大量の乗客と共に列車から降りて、改札口まで昇降階段を上がると、向こうから押し寄せる人混みを掻き分けながら、ジェームズは宝石店エアリス・ジャーン本店に向かおうと、通路を急ぎ足で歩いていた。
だが、前方から人混みを掻き分けながら、徐々にこちらへと音もなく寄って来る者がいた。
「……失礼」
「え?!」
突然、ジェームズの鋭敏な感覚が危険信号をけたたましく鳴らした。周囲の忙しない雑踏の中。気付いた時にはすでに遅かった。プラットフォーム内の人混みの中で、それも白昼堂々と、誰にもぶつかってもいないはずだのに、右のズボンのポケットに入っていた笑うトパーズが忽然と盗まれていた。
ジェームズは、盗まれたショックで軽い眩暈を覚える。だが、すぐに立ち直り、素早く気持ちを切り替えると、野生動物の感よろしく直感的なものが少しでも引っ掛かる何かを、手当たり次第に探しに人混みの中を徘徊した。
確かに、まだ盗んだ者はそう遠くへは行っていない。まだここロンドン駅の中にいるはずだ。ジェームズはいつもは穏やかな少年の頃のままの眼差しを、鋭くして、周囲を観察しながら探し回った。
「?!」
そうだ! 笑うトパーズを盗んだ者は、すでに改札口付近、そう、出口にいるはずだ。何故かというと、これだけ素早く一ミリすらも接触をしたという感触すらさせない盗みの達人なのだから、盗み終わったと同時に姿を消すはずだ。
ジェームズの次の行動は、あたかも周囲の人混みの動きがスローモーションで撮影されたかのようだった。改札口まで、猛スピードで、誰にも触れることもなく、俊敏な動きを発揮する。
ものの数秒で、改札口に辿り着くと、行き交う人々の中から直感が告げた男性の左手首を掴んだ。
その男性は呆然とし、目を見開いて膠着している。




