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英雄王、武を極めるため転生す ~そして、世界最強の見習い騎士♀~  作者: ハヤケン
第二部

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509/509

第509話 16歳のイングリス・和平交渉16

「あれは……イルミナスにいた魔素流体(マナエキス)の巨人ですわ!」

「マクウェル将軍ね!」

「やっぱりあたし達を騙し討ちするつもりで……!?」


 後方に追いついて来たラフィニア達の声が聞こえる。


「ふっ……!」


 無貌の巨人の胸元に埋もれるマクウェル将軍が鼻を鳴らす。

 そして無貌の巨人は大きく拳を振り上げ――

 ぐるりと身を反転させると、背後の蟷螂型の魔石獣に叩き下ろした。

 身を起こそうとしていた所を追撃され、魔石獣は為す術も無く崩れ落ちる。

 そして無謀の巨人の腕が抱え込むように魔石獣を締め付けると、見る見るその姿が崩れて小さくなっていく。

 そしてその分、巨人の腕や体が膨らんでいくように見える。


「ふはははははははっ!」

「……! 魔石獣を取り込んでいる……!?」

「砦が魔石獣の襲撃を受け陥落したとの知らせがありましたのでねぇ……! 急遽駆けつけて来たと言うわけですよ!」

「何ィ……!?」


 武公ジルドグリーヴァが怪訝な表情をする。

 野性の魔石獣の仕業に見せかけてこちらを襲わせるというのはいい手だと思うが、それにしては割って入るのが早過ぎる。

 こちらと魔石獣を戦わせて少しでも損害を与えればいいのだ。

 まさか本当に偶然砦が陥落していたとでも言うのだろうか?

 いやその線は薄いだろう。だとすればここで一つ前振りをしておき、こちらを信頼させた上で後にもっと大きな罠に嵌めるつもりか。

 いずれにせよ、今目の前の状況は――


「下がっていなさい! ヴェネフィクの国は、私の手で守るッ! ハアアァァッッッ!」


 無貌の巨人の腕が軟体生物のように長く柔らかく伸び、周囲の魔石獣達に巻き付いて行く。


「あ……! ちょっと待って下さい!」

「おいコラ待て! 止めろ!」


 しかしイングリス達の制止も空しく、全ての魔石獣が巨人の体に引き寄せられ、メキメキと異様な音を立てつつ取り込まれていく。


「いい贄だ! 美味しいかぁ!? なぁ巨人よ!? クククククッ……!」

「な、何て事をしてくれているんですか……!?」

「あァん?」

「それはわたしの獲物ですよ、勝手に片付けないで下さいっ!」


 イングリスの抗議を、武公ジルドグリーヴァもうんうんと頷いて聞いている。


「黙りなさい、大切な使者を迎えるにあたり、道中の安全を確保するのは国として当然の務めです。何の批判も受ける理由は無いッ!」

「ま、まあそれはそう……よね?」

「ええ、レオーネ。わたくしもそう思います」

「あたし達を罠に嵌めようとしたわけじゃ無かったんだ?」

「良かった。その方が……」


 ラフィニア達はそう囁き合っているが、イングリスとしてはこれは頂けない。


「いいえ、わたしが戦おうとしていた魔石獣を取り込んだのですから、責任を取って代わりにわたしと戦って下さいっ!」

「黙れと言っているッ! 相変わらずふざけた娘だ、こちらとて今すぐ踏み潰してやりたい所を、お国のためにと我慢している事を忘れるなッ!」


 つまりマクウェル将軍も本音では戦いたいという事だ。

 確かに抑えていても隠しきれない敵意と殺気を感じる。


「いいえ、国のため大義のためと、自分を偽り続けるのはよくありません……! 国は人、人は心、自らの心に素直になるべきです……! さあ我慢なさらず、わたしをぺしゃんこに叩き潰すような渾身の一撃を……! 大丈夫です、誰にも言いませんか――」


 ぎゅうううっ! と、突然横から耳が引っ張られる。


「あいたたたたた……っ!? ラニ――?」

「何を馬鹿言ってるのよ! 見てるし聞いてるんだから! やめなさい!」


 いつのまにかラフィニアが降りてきていて、ぷんぷんと怒っていた。


「で、でもわたし、最近全然戦えてないんだよ? ジル様だって戦ってくれないし、今も獲物を取られたんだから、その代わりにって……!」

「ダ・メ・ですっ! いいから静かにしときなさいっ! 重い下着で十分訓練出来てるでしょ!?」

「ううぅぅ……最近こんなのばっかり」


 イングリスは深く深くため息をつく。

 それを見かねたのか、武公ジルドグリーヴァがイングリスの肩をぽんと叩く。


「まあ、そう気ィ落とすなよ。リュストゥングに戻りゃあ、稽古用の怪物共がいるからよ。魔石獣やなんかも飼ってるし、それと戦わせてやるよ。何なら一体持って帰ってもいい、一応最低限の躾は出来てるからよ」

「えぇ!? 本当ですか、それは助かります!」


 いつでも実戦訓練を行うために、魔石獣を飼うというのは以前から考えていた。

 それが出来るならば、有難い事だ。


「それもダメッ! そんなのアカデミーに置いとけないでしょ! 皆の迷惑になるから!」


 ラフィニアが手で大きく×を作っている。


「えぇ……!?」

「ジルさんも! 変にクリスを甘やかさないで下さい!」

「お、おう……?」


 武公ジルドグリーヴァもラフィニアの剣幕に若干怯んでいるようだった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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