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第358話 16歳のイングリス・お見合いの意味10

 突如ユミルの上空に現れた天上領(ハイランド)

 これだけ近くで見ると、凄まじい規模と迫力だ。


「ははは……魔石獣じゃなかったみたいね、クリス……?」

「きっとわたしとお見合いするために来てくれたんだね!」

「いや、そんな筈がないでしょう……! でも、どうして……!?」


 エリスも表情に緊張を漲らせる。

 そこにエイダや母セレーナと伯母イリーナ達も合流して来た。


「ええええぇぇぇっ!? ハ、天上領(ハイランド)……!?」

「ど、どうして天上領(ハイランド)がこんな所に……!」

「と、とにかく迎撃態勢を取ります! ユミル騎士団は守りに付け――っ!」


 集まった騎士達に指示を出すエイダに、エリスが待ったをかける。


「いえ、待って! 無駄よ……! 天上領(ハイランド)が攻めて来て、守り切れるはずがないわ! それよりも街の住民を避難させることに全力を! 守りは出来る限り私達がやります! 街を捨てて出来る限り遠くまで逃げて!」

「しょ、承知しました……! イリーナ様、セレーナ様! それでよろしいですか!?」

「え、ええ……天恵武姫(ハイラル・メナス)のエリス様がそう仰るのなら……!」

「お言葉に従います!」

「では……! 機甲鳥(フライギア)部隊! 街中に出て住民に避難を呼びかけて! 街の外へ! 出来る限り遠くまで逃げろと!」

「「「おおおっ!」」」


 集まった騎士達が声を上げ、それぞれに散って行く。


「ではイリーナ様、セレーナ様! お二人もお早く! 機甲鳥(フライギア)でユミルを出ましょう!」

「「いいえ!」」


 二人とも同時に首を振る。


「私達も残ります! 夫の留守を守るのは妻の務めです!」

「姉さんの言う通りです!」

「イリーナ様、セレーナ様……!」

「ではせめて、城の建物の中へ! ここは私達に任せて下さい!」


 エリスがそう呼びかける。


「イリーナ様、セレーナ様! エリス様の仰る通りです、中に参りましょう!」

「エイダ! お母様と叔母様をお願い!」

「母上と伯母上を頼みます!」

「はい……! さあ――!」


 エイダ達が退避して行く。


「……! 何か出てくるわ!」


 エリスが空を指差す。


「飛空戦艦……!?」

「す、凄い数だわ……な、何機いるのかな、1234567891011……」


 それでもまるで足りない程の数が、天上領(ハイランド)の本島から飛び出して、地上と天上領(ハイランド)との間に隊列を作った。

 実戦的でなく、儀礼的に見栄えのするように並んでいるように見える。


「うわぁ……天上領(ハイランド)って凄いね! 飛空戦艦があんなに一杯! これは倒しがいがありそうだね……! いいお見合いになりそうだなあ……!」


 五歳の姿のイングリスは、まるで美しい花火を見るような澄んだ瞳で空を見上げる。


 大国と言われるカーラリアでも、保有する飛空戦艦はセオドア特使が与えてくれた聖騎士団のものと、騎士アカデミーに新しく配備されたヴェネフィク軍から鹵獲したものの二機だけだ。


 それがざっと見ただけで数十。

 一目見て分かる圧倒的な戦力差だ。

 一体いくつの国をあの艦隊で滅ぼすことが出来るのだろう。

 しかもたった一つの天上領(ハイランド)からそれだけの戦力が出てくるのだ。

 さらに言うと、あれが全部とも限らない。


「あーもー! 自分が大きかろうが小っちゃかろうが、相手が虹の王(プリズマー)だろうが天上領(ハイランド)だろうが、クリスはいっつもクリスよね……!」


 ラフィニアが頭を抱えている。


「自分の調子とか相手によって態度を変えるなんて、潔くないから……! わたしはいつ何時誰の挑戦でも受ける!」

「あくまで挑戦を受けたら、よ!? 絶対にこちらから仕掛けてはダメ! そんな事をしたら天上領(ハイランド)と全面戦争になってしまう! この国の未来は無くなるわ!」

「ええ、ですが――先方が母上や伯母上や、このユミルを滅ぼそうとするならば……全力で潰しますよ? それを止められるのは困ります」

「……うん! それはクリスの言う通り!」

「――そんな事にならないように祈るわ……」


 と、一機の飛空戦艦の内部から、機甲鳥(フライギア)と、機甲親鳥(フライギアポート)が姿を現して降下をはじめた。こちらに近づいてくる様子だ。


機甲鳥(フライギア)と、機甲親鳥(フライギアポート)……!?」


 数は多くない。

 一機の機甲親鳥(フライギアポート)機甲鳥(フライギア)が複数。

 地上に出回っているものよりも少し外観や大きさが違い、やや大型だろうか。


 そしてその少数の編隊は、特に攻撃を仕掛けてくることも無いまま、イングリス達のいる中庭の訓練場まで降下し着陸する。


 そしてそこから降りて来たのは、顔まで覆い隠す揃いの鎧兜に身を包んだ兵士達と、ぴしりと整った執事服に身を包んだ白髪の男性だ。天上人(ハイランダー)である事を示す聖痕もある。

 温和そうな表情で、聖痕を除けば単なる老紳士のようで、物々しい他の兵士達からは完全に浮いていた。


 老紳士の天上人(ハイランダー)はイングリス達の前までやって来ると、深々と丁寧にお辞儀をする。


「失礼。イングリス・ユークス様はこちらにおられますかな?」


 と、エリスに向かって尋ねる。

 イングリスが若い女性だという事は耳に入っているという事だろうか。

 イングリスとラフィニアは子供の姿なので、若い女性の見た目をしているのはエリスしかいない。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば確かに、地上の強者でありながら天恵武姫の致命トラップから免れる人物を天上人は放って置けないでしょうね。クリスさんは身分隠していないし。 万全ではないの上に守るべき人々が近くに居ると…
[一言] 日本の国技も見合ってから全力でぶつかりますし、あれも神聖な儀式的な意味合いもありますから 元ディヴァインナイト的には力比べこそが正しいお見合いで合ってるのかもしれない
[良い点] 侵攻じゃなくて求婚、なのは想定内だが、はてさて。 天上領軍というイングリスにとってこの上ない御馳走が降りてきたわけだが。 国王サイドからお見合いストップの通達は届いてるが、 天上領なら下…
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