第10話 新年度ですがなにか?
いつも通りスルー推奨です( ̄▽ ̄)
<第10話>
春。
それは、始まりの季節。
春。
それは、出会いの季節。
春。
それは、恋の季節。
というか、恋の季節とはよく表現上では用いられるがいつが相応しいのだろうか?
少なくとも、この二人にとっては年中無休のようだが。
「敬、おはよう!」
「やあ凛ちゃん。おはよう。今日もいい日和だねえ」
いつものように凛が敬を迎えに行き、いつものように朝の挨拶を交わし、いつものように仲睦まじい様子で学校への道をてくてくと歩いて行く。
四月になり、二人は最上級生であるところの六年生へと進級した。
クラスももちろん一緒である。
二人は常に学校での話題を独占していた。
凛はその名の通り凜々しさと美しさを兼ね備えた、才色兼備の女王として。
敬はその天使の如き容姿とは裏腹な知能と空前絶後の強運の持ち主として。
「でも、ホント敬はすごいよね」
「何が?」
「ほら、昨日のジャンケン大会」
「ああ。コツがあるんだよ。出す前の手を観察するんだ。フレーム単位で見切れるようになれば何を出そうとしてるかなんて形で分かるよ」
「マンガみたいな攻略法いらないから!」
「もちろん冗談だけどね」
昨日行われた「ジャンケン王 西都敬に挑め」というイベントにおいて、敬は前人未踏の百連勝を成し遂げたのだ。
単純に勝ち負け2分の1だとすると2の100乗である。
敬にはもちろん当然のことではあるのだが。
「敬は昔から強運だもんねえ。もう強運なんてレベルを超越してるよね」
「自分でもそう思うよ~。特に最近は勝ちたいって思うときは絶対負けないね」
「宝くじとか買ったら?」
「当たっちゃいそうだからいいよ。そういうので人生狂わせたくないし」
「そういうものなの?」
「うん。お店も繁盛してるし、十分裕福な暮らしさせてもらってるよ。あんまり高望みはしないようにしようと思ってるんだよね」
「偉いなあ」
「凛ちゃんも側にいてくれるしね」
「はうあっ!?」
不意打ち気味の敬の攻撃を食らって凛は気絶寸前だ。
顔が真っ赤に染まっている。
「ふふふ。十分幸せでしょ?」
「そ、そうねっ!!!」
そんな幸せ一杯に歩く二人の後方からもの凄い速度で走ってくる一台の自動車。
運転手はどうやら意識が無いようだ。
このままでは激突は必死だというその時、強い春風に吹き飛ばされた洗濯物がタイヤの下に滑り込む。急にスリップした車がくるくると回りながら中央分離帯に乗り上げて横転。横になったまま滑るように進むと街路樹に衝突して止まったのだった。
音に二人が振り向く。
「あれ、何だかすごい事故っぽくない?」
「うーん、敬がいるとこでの事故だから多分大丈夫じゃない?」
「そうかな」
「うん。多分誰も亡くなったりしないと思うんだけど」
「それもそうかな」
歩行者が携帯電話で110番しているのを見ながら凛と敬は歩を進める。
もちろん誰も死んだりはしていないのだが。
幸運の女神様は敬だけではなく周りへのアフターケアも万全のようだった。
「みんな、おはようっ!」
「おはよう~」
「お、おはよう、お二人さん」
「今日も仲睦まじくて羨ましい限りですねえ」
二人の挨拶にクラスメイト達が明るく応える。
「いつだって私たちは仲睦まじくってよ!」
「リア充め!」
「爆発せよ!」
笑って言うクラスメイト達。
「ねえ、学力テストの対策してきた?」
「特には。普段の実力が試されるのよ」
「児童会長様は余裕綽々ですねぇ~!?」
「敬は?」
「え~。特別勉強はしてないよ。いつも通り。平常心平常心」
「さすが学年トップは言うことが違いますねえ!?」
「予習復習が肝心ですよ~だ」
そう、今日はテストの日だ。
小学生でもテストはテスト。
特に自分が「勉強が出来る方だ」と思っているような面々にとっては、大したことのないテストでも重要なポイントなのだ。
「塾の模試よりは緊張しないけどなあ」
「あっちはお受験用だろ?」
「私立にはそれ用の勉強が必要だからな」
そこそこ都会でそこそこ田舎のこの街では、公立私立は8:2程度だ。
公立だって別に荒れてもいないし、私立が特別優秀かと言えばそうでもないのだった。
「敬と凛は私立いかねえの?」
「え~、行く気はないけど」
「敬が行かないなら私も行かない!!」
「お前ら・・・」
「先生が残念がるんじゃないのか?」
「いいんだよ~。ぼくらはマイペースで」
「さすが」
敬も凛も学年では常にトップ5に入る実力の持ち主だ。
特に敬に至っては常にトップ。
運だけに頼らず、努力も怠らない敬。
それに引っ張られるようにして自らの力を高めていく凛。
今年一年も順調な滑り出しのようだった。
ちなみに、テストの結果は敬が学年1位で凛が2位だったことを記しておく。




