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ナヤミゴトハ、ナンデスカ

タロットカード占い師の里美は、ブランクカードばかり出す客に辟易していた。

お悩み相談なのに、口を割らないからだ。


悩んでいるのだけど、助けて欲しいのだけど上手く言えない、どうしてもらいたいのかを的確に表現できない人もいる。

高学歴とか、学歴はなくても頭は良いのに、それが出来ない人も中にはいる。専門職に就き、仕事はできるのに、書籍や論文とかを発表しているのに、それが出来ないなんて人もいたりする。


どうしてそうなるの?


えっ?!なんでそうなってしまうんですか?


という驚きの行動に出てしまう人も時々いる。


そのように常人には理解できない行動に出る人もいる。


最近ではそのような人達を何らかの発達障害の特性を持つ人と判断されることもある。

全部がそうとは限らないけれど、的外れでもないと個人的には思っている。


発達障害ではなくてもコミュ障気味の人はいる。状態は人それぞれだ。



そしてこのクライアント様も、またしかり。


占い師にすら、何をどうしたいのか、どうなればいいのかを伝えられない······というか、そもそも伝える気があるのかないのかすら不明だ。

多分、この人と会話なり付き合う相手にはそんな風にいつも思われてしまっているのではないのだろうか。


こちらが可能な限り歩み寄ろうとすると、引いて離れてしまう、踏み込めば嫌がる、本心を隠す。

肝心なことはちっとも言わないし、こちらが問いかけても黙りだ。

そして愚痴や文句も多いし、他責傾向が強く、被害者意識も半端ない。

「じゃあ、あなたはどうなの?」

「何がしたいの?」

と聞くと黙ってしまう。

これでは相手や周囲はお手上げだ。


なのに、こちらが神対応しないとぶち切れる。


カウンセラーやセラピストも、これではやりようがない。

患部には手が届かずに、患部の周辺や患部とは違うところを虚しく無意味に癒すだけ。


そこがわからない人は、本人がカウンセラーやセラピストになるのは難しいと思うのだけれど、でもなぜかやりたがる人も多い。


このブランクカードを引くクライアント様も、その口だ。


犬猫などのペットにならば、心を打ち明けられる、もういっそAIにならば何もかも打ち明けることができるんじゃないかな?


里美は、そのクライアントに、占いとは関係ないことでもいいので、何か聞いて欲しいことはあるかとAI調で聞いてみた。


アナタノナヤミハ、ナンデスカ?


これには、驚くほど凄い食いつきだった。


よっしゃあー!


人に言えないことは、人以外のものに話してみたらいいのかも?


人には素直になれない、素直に話せない、それならば人にじゃなくて、人ではないものに聞いてもらったら、少しは満たされることもあるかもしれない。


当分はAIごっこをして聞き出そうと思う里美だった。


素直になれない人、自分の悩みや本音を人に話せない人も、その人なりに試行錯誤しているとは思うけれど、相手や周りの人達も、あなたのために常に試行錯誤しているということを、ほんの少しでもわかって欲しいな。


相当周りや相手には面倒をかけて気を使わせているものなんだよね。


上手くコミュニケーションが取れないことで苦心しているのは自分だけじゃないってことを、もう少し理解できるならば、今よりは上手くいくのではないかな。


自分ばかりが苦しい思いや寂しい思いをしているという勘違いでガチガチになってしまうと、余計にコミュニケーションが成立しなくなるよね。


話を聞いて欲しくて話を盛る、オーバーに言うと演技のように聞こえたり、事実と違って来てしまうと、嘘つきとみなされて信用されなくなってしまう。


そうすると相手や周囲からは更に話を聞いてはもらえなくなる。


わかってくれない相手に八つ当たりしたり、悪意を向けたら、もう話なんて金輪際聞いてもらえなくなってしまうよね。


誰も自分の話を聞いてくれない


それは、自分が相手や周囲に傍若無人な態度で接しているからじゃないの?


相手に対してモンスターな客のように振る舞っているからだと思うけどな。


自分は客なんだから神対応してくれて当然という、自分本位な甘えがコミュニケーションを妨害していることもある。


親や友人や仲間、伴侶や恋人なんだからと相手に甘え過ぎていたら、発達障害とかコミュ障ではなくても、上手くいかないよね。


里美はそれとなくクライアントに気がついてもらえるように、ブログに悩んでいる人へその対策となりそうな内容を書くことにした。


第一弾のタイトルは「ナヤミゴトハ、ナンデスカ」だ。


でも、そういう人って、それが自分のこととは全く気がつかないもの、耳の痛いブログなんて読みはしないのだ。


もしよろしければ、こちらのブログも読んで見てくださいねとメールにURLを書き添えても、スルーなのだ。


······はあ。


トホホな気分でも、それでも負けない占い師里美だった。



(了)

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